トムはパソコンの画面を見つめながら鼻を啜ると、僕が知らなかった事実を語り始めた。
「父さんがこの山奥に引っ越したのは、母さんのあの性癖を治す為だったんだ。
それに、父さんは少なくともここにいた時は、精神を病んじゃいなかった……。
ところがある日、数人の男達が父さんは心の病だと言って、ラボへ連れ去っていったんだ」
彼は椅子にもたれ掛かり、キィキィと鳴らしながら、当時のケッチャムの様子を思い出そうとしているようだった。
「父さんはラボでの生活を少しだけ僕に話してくれた……」
トムから聞いたその内容はこうだった。
「終日のカウンセリングが終わり、全ての思考が掻き乱され、意識も朦朧とし始めた真夜中の1時なると、カツーンカツーンて冷たい足音を響かせながら、カウンセラーが俺の部屋にやってくるんだ。
そして、聞くんだ。
『お前の人生は何%だったのか?』って。
そこで最初の頃、俺はこう答えた。
『俺は十分、満足しているさ。100%だ!』ってね。
『そんな尊大な生き方をしてきた自分を恥じろ。もっと反省し、真面目に良く考えてみなさい』と奴らは叱責し、徹底的に馬鹿にした。
そして、翌日、不安になった俺は、
『50%だった』と答える。
そうすると奴らは言うんだ。
『そんな中途半端な生き方をしてきたのか?惨めな人生だな。もう少し考えろ』
彼らはそう言うと俺の曖昧な生き方を完全に否定するんだ。
よくよく考え直した俺は翌々日には、
『やはり、20%だった』と答えてしまうんだ。
今度は奴らは冷笑しながら、
『like a dog』と俺を芯から蔑みやがる……」
「そんなことを延々と1年以上も彼らはケッチャムにしていたのか?」
僕は改めて彼の置かれた苛酷な状況を聞き、心を痛めた。
毎夜繰り返される徹底した自己否定によるアイデンティティーの崩壊……。
精神のバランスを失った患者が、助けて欲しいと叫び始めたところで、彼らは漸くその思想を滑り込ませる。
つまりは洗脳だ……
ケッチャムはその地獄の日々を耐えていたというのか。
僕は、今まで気付かなかった自分の楽観さを改めて恥じた。
「父さんは洗脳まで行かなかった……。
完全な自己破壊をした後、救いを求めて自傷行為を繰り返し始めたんだ」
トムはその涙を腕で拭うと、「僕は救えなかった」とパソコンのモニターをきっと見つめていた。
旧型のパソコンはキュルキュルと音を立てながら、徐々に『スネーク・ケッチャム』と呼ばれた男の記事を現し始めていた。
僕は、その記事が開かれていくのをただ黙って見つめていた。
やがては、その記事が自分の出生の秘密の鍵をも握っているとは、この時思いも寄らなかったんだ。
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それに、父さんは少なくともここにいた時は、精神を病んじゃいなかった……。
ところがある日、数人の男達が父さんは心の病だと言って、ラボへ連れ去っていったんだ」
彼は椅子にもたれ掛かり、キィキィと鳴らしながら、当時のケッチャムの様子を思い出そうとしているようだった。
「父さんはラボでの生活を少しだけ僕に話してくれた……」
トムから聞いたその内容はこうだった。
「終日のカウンセリングが終わり、全ての思考が掻き乱され、意識も朦朧とし始めた真夜中の1時なると、カツーンカツーンて冷たい足音を響かせながら、カウンセラーが俺の部屋にやってくるんだ。
そして、聞くんだ。
『お前の人生は何%だったのか?』って。
そこで最初の頃、俺はこう答えた。
『俺は十分、満足しているさ。100%だ!』ってね。
『そんな尊大な生き方をしてきた自分を恥じろ。もっと反省し、真面目に良く考えてみなさい』と奴らは叱責し、徹底的に馬鹿にした。
そして、翌日、不安になった俺は、
『50%だった』と答える。
そうすると奴らは言うんだ。
『そんな中途半端な生き方をしてきたのか?惨めな人生だな。もう少し考えろ』
彼らはそう言うと俺の曖昧な生き方を完全に否定するんだ。
よくよく考え直した俺は翌々日には、
『やはり、20%だった』と答えてしまうんだ。
今度は奴らは冷笑しながら、
『like a dog』と俺を芯から蔑みやがる……」
「そんなことを延々と1年以上も彼らはケッチャムにしていたのか?」
僕は改めて彼の置かれた苛酷な状況を聞き、心を痛めた。
毎夜繰り返される徹底した自己否定によるアイデンティティーの崩壊……。
精神のバランスを失った患者が、助けて欲しいと叫び始めたところで、彼らは漸くその思想を滑り込ませる。
つまりは洗脳だ……
ケッチャムはその地獄の日々を耐えていたというのか。
僕は、今まで気付かなかった自分の楽観さを改めて恥じた。
「父さんは洗脳まで行かなかった……。
完全な自己破壊をした後、救いを求めて自傷行為を繰り返し始めたんだ」
トムはその涙を腕で拭うと、「僕は救えなかった」とパソコンのモニターをきっと見つめていた。
旧型のパソコンはキュルキュルと音を立てながら、徐々に『スネーク・ケッチャム』と呼ばれた男の記事を現し始めていた。
僕は、その記事が開かれていくのをただ黙って見つめていた。
やがては、その記事が自分の出生の秘密の鍵をも握っているとは、この時思いも寄らなかったんだ。
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