フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

終われない想い

2006年02月23日 03時58分45秒 | 第13章 思愛編
僕はあらゆることに楽観していた。

全てが気道に乗り何もかもが上手く行く、そうした希望の兆しに気を取られてしまい、逆に小さなシグナルを見落としてきたのかもしれない。

僕はベッドの上にテーブルを渡すと、ノートパソコンを起き、ハルナにメールを打とうとしていた。
丁度その時、彼女からのメールが飛び込んできた。

遠い日本で、この瞬間に同じように君が僕のことを想ってくれている……。
我知らず笑みが零れ、君の無題のメールをクリックした。


……しかし、彼女からのメールは僕が思っていた内容とは全く異なっていた。
僕はメールの意味が理解出来ず、何度も何度も読み返していた。


―――ごめんなさい。私、待てなかった。もう、会えない―――

何かの間違いではないか、冗談ではないかと、このメールに目を凝らした。
今まで彼女から来たメールを全てクリックし、何らかのシグナルがなかったかを探った。

「……トオル君に会えなくて淋しいけど、待ってるね」
「……いつもトオル君のこと想ってる」
「……早く会いたいです」

彼女のメールは僕を元気付けてくれるほど愛に溢れていた。
では、彼女に何があったのか?

待たせ過ぎてしまったのか。
今までのメールは本心ではなかったのか。
なぜ、責めるのではなく、謝るのか。

無情な電子文字は、君の温もりを掻き消し、その本心をも見えなくしてしまっているように思えた。

僕は慌てて、冷たい機械の箱を引き寄せ、想いを乗せたメールを打った。

―――ハルナ、待たせてばかりで本当にごめん。だけど―――

それから先が続かず、打つ手が止った。
こうしてメールを打ってどうすると言うんだ?
彼女がどういう思いで書いたにせよ、ここまで思い詰めてしまった彼女を、更にメールで追い詰めようと言うのか?

僕はノートパソコンの蓋を閉じると、目を瞑り唇を噛んだ。

こんなメールなんかで終われない!

今でも、初めて彼女とキスをした時に聞いた潮騒の音が耳の奥でこだまし、僕の胸を切なく締め付ける。
そして、波間に漂う天使のような彼女の瞳が僕を捕え、「トオル君、愛してる……」と囁いている。


僕は急いでパジャマを脱ぎ捨てると、クロゼットにしまってある服へ手を伸ばした。



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