フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

不安なデート

2006年02月04日 14時10分12秒 | 第12章 逡巡編
翌朝目覚めると、穏やかな寝息を立てているハルナが目の前に転がっていた。

道理で温かかったはずだ。
ハルナはオレのベッドから布団一式を引き摺って来ていて、オレの上にも掛けていた。

「ば~か。これじゃ、オレがここで寝てる意味ねぇ・・・・・・」
オレは苦笑しながらハルナのふわふわの髪を撫でると、そっと手を移動し、そのまま鼻の穴を塞いだ。

数秒もしないうちに、ハルナは息苦しさのあまりのたうち始めた。

「ははっ。直床で寝ると風邪引・・・・・・」
言ってる途中でハルナのビンタが飛んできた。


最近、こいつキョーボー化してねぇか?
これがニンプ特有のマタニティーブルーってやつだろうか??
・・・・・・いや、間違いなくパワーアップしてるからそれは有り得ないだろう・・・・・・。


中途半端なブランチを食ってる最中に、ハルナはアルカイックスマイルを湛えながら(だが微妙に口元が歪んでいるのが気に掛かったが)、下記の通り述べた。

「今日のデートコース、私に任せて貰えるかなぁ?」
「え?いいけど、どこか行きたいとこ、あんの?」
「・・・・・・うん。ちょっと、ね」
「どこだよ」
「それは~、・・・・・・内緒!」
「内緒じゃ、そこに行けねぇだろ?」

ハルナはこくんと頷くと、だからカーナビのマニュアルを貸せという。

「(機械ドオンチのお前が)設定できんのか?」
余計なビンタを受けまいと学習したオレは慎重に言葉を選んで質問した。

オレは車の鍵とマニュアルをハルナに渡した。

「あいつ、一体、何企んでるんだ?」



暫くするとハルナは息をゼーゼー吐きながら部屋に駆け込んできた。

「かずにぃ!大変!!カーナビ壊れてるよ!!」
「うそだろう・・・・・・」

オレ達は慌てて車に乗り込み、キーを回しエンジンを掛けた。

カーナビは普通に作動した。

「あ、あれ?」
ハルナは首をちょこんと傾げ、ごまかし笑いをした。

「・・・・・・お前ぇ、まさかさぁ・・・・・・」
「ドアの鍵を開けたらカーナビが点く訳じゃないんだね」
「ったりめーだ。エンジン掛けろ!エンジン!!」
「そんなの知らないもん!」

確かに15歳には難問だったか・・・・・・。
って、んなわけねーーーー!
っつーかむしろ常識だろう!

こうして、ハルナ主導型の不安なデートは幕を開けた。
(・・・・・・生きて還れるのだろうか)




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食卓の幸福

2006年02月04日 03時18分18秒 | 第12章 逡巡編
それでもどうにかこうにかピノが奏効し、その日の夕食はハルナが腕を揮った。

以前オレが作ったヤツとは違い、人間として食べられる物が食卓に並びオレは大いに感嘆した。

「すげ。トンカツ!おっ!!味噌汁、うめ!!サラダ・・・・・・いけるじゃん」

相変わらず、お粗末なボキャブラリーでハルナの手料理を持て囃しながらひとつひとつを箸に取り、眺めながら口に運んだ。
だが、凄く腹が減っていたために、彼女が1時間掛けて作った料理をオレはたったの5分でタライあげてしまった。

「もっと、味わって食べようよ」
ハルナは箸でウィンナーをブスッと指しながらぶすったれた。

「お~い!ブスがもっとブスになるぞ」
オレは箸の裏で彼女の頬を突付くと、その頬っぺたは更に膨れた。

「冗談だって。お礼をやるから、手ェ出してみ」
「お礼って?」
機嫌を直して嬉しそうに差し出すハルナの手を引き寄せるとキスをした。

ハルナは一瞬で真っ赤になって唇を抑え、俯いた。
やばい。
オレまで真っ赤になってきた。
こいつとはあーんなことや、こーんなことまでして、アカンボだって腹にいるのに・・・・・・。
いまさら、キスごときで?!

これで、料理を啄ばむカポーにありがちな「お前を食べたい」なんてベタなエロトークをカマシたら、こいつはきっとぶっ倒れるかもしれないなぁ・・・・・・。


試してみたい気持ちを押さえつつ、オレは食器をシンクまで運び終えると、こいつ用に買い置きしていたパジャマを手渡した。

そして、オレは今や空き部屋となったリョーコの部屋にアウトドア用の寝袋を持ち込み、自分の寝床を構築した。

「今日も泊まってくだろ?オレはこっちの部屋で寝るから」
「え?!寝袋だけなんて風邪引くよ!?」
「大丈夫。適当に上に掛けるから」

オレは床に新聞紙を引くと、寝袋を延べ、上に厚手のコート数枚を掛けてその夜は眠った。
床が固かろうが、布団が無かろうが、抱けない女の隣りで寝ることに比べたら、その方が遥かに天国だった。



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