フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

涙、あふれて

2005年07月27日 00時32分41秒 | 第2章 恋愛ラビリンス編~ハルナの章~
多摩川の河川敷を一緒に歩きながら、やっぱりトオル君は柔らかく笑った。

「ごめんね。ハルナちゃん。あいつら今度シメトクから」

彼のこおゆうところって何だかほっとする。

あ。そだ。聞いてみよ。
さっきのこと。

「あの、トオル君。さっきの子達、トオル君のこと先生って……」
そういい掛けた時、前方から小さくて可愛らしいスピッツを連れた白髪の紳士が声を掛けてきた。


「Toru! Bonsoir!」

トオル君とその紳士は英語ではない言葉で2、3言葉を交わすと、手を振って別れた。
トオル君は私と目が合うと、にこっと笑った。

「あの人はフランスの人で、この河川敷をスナフキンと散歩をしていたら友達になったんだ。○○大学のフランス語文学の教授をされているとかで、とても気さくないい人なんだ。」
「そうなんだ。じゃぁ、今、トオル君が喋っていたのは、フランス語?」
「え?ああ。そうだよ」
「じゃぁ、じゃぁ!もしかして、トオル君はフランスの人なの?」

そう彼に尋ねて、私ははっとした。
トオル君の顔からふぅっと笑顔が消えたからだ。

「いや、違うよ。僕は……日本人だ」

厳しい口調で彼は答えた。
私は、聞いちゃいけないことを聞いてしまったような気がして気まずい思いになった。
トオル君はさっきまでの笑顔がウソみたいに消え、険しい表情になってずんずんと私の前を歩いて行く。
彼が燃え盛る夕陽に今にも消えちゃいそうで不安になる……。

どうしよう。
なんだか鼓動が早くなってきた。
あれれ。涙が……。
私が目を擦っていると、トオル君が振り向いた。

「えっ!?ど、どうしたの?ハルナちゃん?大丈夫?」

トオル君は心配そうに私の目を覗き込んだ。
トオル君の手が優しく私の頬に触れた。

ど、どうしよう。
私きっとまた顔、真っ赤になってるかも……。
しかも、涙が止まらない。
困ったことに、増量中。

だって、あまりにもトオル君が優しいから……。だから……。

「大丈夫?」

そういうトオル君はいつもの優しいトオル君に戻っていた。
私は、もうそれだけで胸がいっぱいになった。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS



夕焼け染めて

2005年07月26日 11時55分51秒 | 第2章 恋愛ラビリンス編~ハルナの章~
雲が晴れ、夕日に照らされる多摩川の土手をトオル君と歩いた。
水面に反射した光が、トオル君の髪をキラキラと金色に輝かせていた。

「キレイ……」
思わずそう言ってはっとした。
「でしょう?この辺はこの時間が一番神秘的でキレイなんだ」
トオル君は無邪気に笑った。

「センセー!その人、カノジョ~!?ヒューヒュー♪」
はやし立てる声が下の方から聞こえてきた。

「この子は、友達だよ!」
トオル君は下に向かって叫ぶと、「あの子達は、僕の友達なんだ」と私に説明した。

「え?!友達?」
「そう。一緒にたまに野球をする」
「でも、あの子達……」

どう見ても、小学生だ。それに、先生って……。

「ちょっと待っててくれるかな」
そう言うと、トオル君は滑るように彼らのところまで降りて行き、子供達の輪の中に入って行った。

「今日は誰も怪我しなかった?」
「誰も怪我しなかったよぉ~!ねぇ、ねぇ!それよかさぁ、センセ~。ホントはカノジョなんでしょぉ~?あのヒト」

彼らははしゃぎながら私を指差した。

「でさ、キスとかするのぉ?」
「エッチとかするんだよね~」

キ、キス・・・エ、エッチ・・・。

過激な小学生の言葉に私は瞬時に顔が赤くなるのが分かった。

「あ!センセ~!!カノジョの顔、真っ赤だよ~」

子供達が私を指さし、からかい始めた。
顔が更に真っ赤になって行くのが自分でも分かり、両頬を急いで両手で隠した。

その時、こちらを振り向くトオル君と目が合った。

「夕焼けのせいで赤くなっているんだよ。ほら、みんな、野球、野球!」
そう答えるトオル君も耳まで赤くなっていた。




人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS



柔らかく笑うヒト

2005年07月25日 22時31分41秒 | 第2章 恋愛ラビリンス編~ハルナの章~
「はい?」

私が返事をすると同時にノックの主は部屋に入ってきた。

「ト、トオル君!!」

叫んでからあまりの痛みに頭を抱えた。

トオル君は持ってきたウーロン茶のペットボトルを台の上に置くと、「大丈夫?」と心配そうに声を掛けてきた。

ズキズキ痛む頭に手を当てながら、彼に尋ねた。

「ここはどこ?私、どうしてベッドの上にいるの?」

トオル君はすまなさそうな顔をしながら、ぺこりと頭を下げた。

「ここは病院です。僕が飼っている犬のスナフキンが君に飛び掛って、それで、君は頭から倒れてしまったんです。……すみません」

すると、突然、開け放たれた窓から突然ぬぅっと大きな白い顔が出てきた。

「こら!スナフキン!彼女に謝るんだ!」
トオル君が真っ白な犬の頭をコツンと叩くと、スナフキンは「キャウン」とひと泣きし、しょんぼりと項垂れた。


私はふかふかのベッドに体を沈め、スナフキンにおいでおいでをした。
スナフキンは病室に入ってくると私の手に体を擦り寄せ、「くぅ~ん」と鳴いた。

「……凄く大きな犬なのね」
「え?!ああ。スナフキンはグレート・ピレニーズって種類で体高が1m近くあるんだ。犬の中でも超大型犬の部類に入るかな」
「1m!大きい」

私はビックリしながら、スナフキンをまじまじと見つめた。
スナフキンは、私のベッドの横にある椅子に腰を下したトオル君の顔をぺろぺろと舐めまわしていた。

「脳波に異常は無いようだから、落ち着いたら送るよ。ええっと……。君、名前は?」
「ハルナ。園田春名」
「そっか。僕は藤枝徹。宜しく、ハルナちゃん」

トオル君は柔らかく微笑むと両手を差し出して、私の手をそっと包み込んでくれたんだ。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS


晴れない雲

2005年07月25日 10時00分05秒 | 第2章 恋愛ラビリンス編~ハルナの章~
学校からの帰り道。

多摩川の土手を歩きながら、厚く空を覆うどんよりとした雲を見つめていた。
かずにぃは返事を待ってくれると言った。

でも、いつまで??

「ハツコイの人なんでしょ。即オッケーじゃん。何迷ってんの?」

学校で相談をしているとスズが意外そうに言った。

「でも、おにぃちゃんだし」
「え?だって、他人じゃん」
「でも……」
「でもでも言ってるといつまで経ってもコイビトなんて出来ないよ。それにカズトさんって、K大の医学部でチョ~イケメンじゃん。迷うなんて信じらんないよ。私だったら、ソッコーオッケ~だよぉ」

スズの言葉を思い出しながら、多摩川の水面に目を落とした。

そう……。
きっと、ちょっと前までだったら私も喜んでいたと思う。
でも、どうして今はこんなに気持ちが揺れるんだろう。

土手の草むらに腰を下ろそうとして、屈む姿勢をとった瞬間、不意に背後から大きな声がした。

「スナフキン!やめろ!!」

え?スナフキン??って??

声のする方を振り向くと、とっても大きくて真っ白な犬が私に向かってジャンプしてきたところだった。



気付くと私は真っ白な部屋で、真っ白なパイプベッドの上に横たわっていた。
嗅いだ事のある匂いが部屋の中に充満していた。
……どこで嗅いだんだっけ?

起き上がろうとしたら、頭に激痛が走った。

「痛っ!」

頭を支えてみて初めて気付いた。
頭に包帯がしてある……。
あれ?えーと、私、どうしたんだっけ。
多摩川の土手を歩いてて、それから、考えてて、ええーっと、ええーーーっと、なんだっけ?

その時、扉を2回叩く音がした。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS


揺れるココロ

2005年07月23日 00時34分07秒 | 第2章 恋愛ラビリンス編~ハルナの章~
帰りは二人とも無言だった。
車窓から見える景色が華やかなネオンから見慣れた街の明かりへと変わる頃には、私の体の震えも止まっていた。

家まで後数メートル手前の角でかずにぃは車を止めた。
そして、ハンドルを握ったままじっと前を見つめていた。
数台の車が私達の車の横を通り過ぎた後、おもむろに、かずにぃが重い口を開いた。

「返事……」
「えっ?」
「返事は、もっと後でいいから」
「…………」
「オレのこと、ちゃんと見て、考えて欲しい」
「…………うん」
「『おにぃちゃん』じゃなくて『オトコ』として」
「…………」
「今日のことは悪かった」
「…………」
「でも、なかったことにするつもりはないから」
かずにぃの振り絞るような声にはっとして私が瞳を上げると、そこには今まで見たことのないかずにぃの顔があった。

私はとにかく逃げたかった。
そう……。
かずにぃが恐かった。


私は車から降りると、走り去るかずにぃの車のテールランプが見えなくなるまで、私はただ立ちつくしていた。

それからどうやって自分の部屋まで辿り着いたのか、よく覚えていない。
ベッドにしがみ付くようにうずくまり、深く深く深呼吸をした。
身体はまだ車に乗っていた二人の時間を忘れていないかのように揺れていた。

「ホテルにでも泊まる?」
「冗談だよ。ジョ、ウ、ダ、ン。」
「オレのこと、ちゃんと見て、考えて欲しいんだ」
「『おにぃちゃん』じゃなくて『オトコ』として・・・」

かずにぃの顔がゆらゆらと浮かんでは、夜の闇に溶けて行く。
頭がパニクってて、思考がまとまらない。
でも、これだけは分かった。

もう、昔の二人には戻れない。
かずにぃは、「男のヒト」なんだ。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS


歯止めって。

2005年07月21日 23時50分23秒 | 第1章 恋愛ビギナー編~ハルナの章~
涙が止まらなかった。
後から後から涙が溢れて来た。
胸が苦しくなって。
心臓が、息が、苦しい。
かずにぃの顔がまともに見れない。

かずにぃは、ギョッとしたみたいで、私の肩に両手を掛けて、覗き込むように私の瞳を見つめ、何度も謝った。

「わ、わりぃ!順番が逆だった。ほんと、わりっ!!」

私は眼を擦り、赤く火照る頬に伝わる涙を拭った。

「ハルナの気持ちを聞く方が先なのに……。ごめんな?先走っちゃって。本当にごめん」

いつもの優しいかずにぃの声を聞いて、余計、涙が出た。
かずにぃは震える私の体から両手を引くと、片手を宣誓をするみたいに上げながら、くるっと踵を返した。

「もう、しない。約束する。絶対に、しない。歯止めが利かなくなるから……」
「え?」
歯止めって……?
聞こうとしたけど、言葉が出なかった。


「J○F、来てるみたいだな。戻ろう」

かずにぃは耳を真っ赤にしながら頭を掻き、背中を向けたまま後ろ手に手を差し出した。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS




キスって。

2005年07月15日 01時26分46秒 | 第1章 恋愛ビギナー編~ハルナの章~
「好きだ」
気付くと私はすっぽり、かずにぃの腕の中にいた。


私が小学1年生の時、かずにぃと一緒に近くの神社のお祭に行ったことがあった。
その時、私は不覚にも迷子になってしまって、泣きじゃくりながら、かずにぃを探し回ったっけ。
ようやく、お互いを見つけることが出来た時、やっぱりこうやってかずにぃは泣き止まない私を抱きしめてくれたんだ。
凄く嬉しかった。
凄く安心した。

でも、でも、でも……。

高くなった背。

大きくなった手。

逞しくなった腕。

その全てがあの少年の頃のかずにぃとは違う。
私だって子供だったあの頃とは違う。

……そ、それにどうしよう。
今頃、気付いたよぉ(≧△≦)

わ、私の胸、かずにぃのカラダに、あ、当たってる!当たってるよね!!

ど、どうしよう!
どうしよう!
どうしよう!!

恥ずかしくて死んじゃうよ。
胸の膨らみが薄いワンピースを通して、きっとかずにぃに伝わってるよ。
それに、この胸の奥にある早鐘のように打つ心臓の音も伝わってしまう……。

なんとか手を二人の間に滑り込ませたくて身を捩っていると、再び、かずにぃと目が合った。
かずにぃの左手が不意に私の頬に掛かる髪を優しく掻き分けた。


「……好きだ」

かずにぃは微かに呟くと、唇を重ねてきたんだ。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS