フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

最終回:桜の花の咲く頃

2006年03月28日 10時30分26秒 | 最終章 エターナル
私は夢中で走った。
「カズト!待って!!」
カズトは私を拒絶するかのように、毅然と前を向いて歩いていた。
私は、ハイヒールをすっとドレスの前に滑らせると、それを手に持ち、振り被ってカズトの頭目掛けて投げ付けた。

「いってぇー!何すんだよぉ!!」

……ふ、振り向いた……
でも、かなり怒らせちゃった……。
私はゴクンと息を飲んだ。

「呼んでるのに、待ってくれないからでしょ!!」
私は怒りながら戻ってくるカズトの目を睨みつけた。
「私も行く!私は逃げたりしないもん!!」
「いいよ!オレ1人で行く!」
そう言うカズトの腕に私は強引に手を滑り込ませた。
「手ぇ、離せよ!1人で行くつってるだろ?!」

それでも私は頑として、受け入れなかった。
「カズトは信じないかもしれないけど……。私……、ちゃんと……、ちゃんとカズトのことも愛してたんだよ……」

カズトは、私の手を払いのけようとする手を止めた。

「……知ってたよ。でもあいつのことの方がもっと好きなんだろう?」
「……ごめ……」
涙で声が堰き止められて、言葉が奥に引っ掛かってしまった。
カズトは泣いている私を強く抱き締めると、笑った。

「ったく、しゃーねーなー。こういうしんどい想いすんのはオレ1人で十分だってぇのに……。バカだよな、お前は……」
カズトは、体を屈めると私の顔を覗き込み、「ぷっ!ひでぇ、顔!」と笑った。
そして、次の瞬間、自分の腫れた瞼に気付き、「ってゆーか、オレもひでぇな……」と笑った。
「ほいじゃ、夫婦として最初で最後の共同作業をすっか!
…あ、入籍してねぇから夫婦じゃなかった……」
「夫婦だよ」
私はカズトの手を強く握った。
「赤ちゃんのパパとママとして恥かしくないように、きちんと皆に謝ろう。2人で」

私達は式場の扉の前に立ち、背筋を伸ばし2人で深呼吸した。
扉が開く直前に、カズトは強く私の手を握り、呟いた。

「やっぱ、お前はつぇーわ」

それから私達は雛壇に登り、ざわめく招待客に向けて結婚の取りやめを宣言し、深々と頭を下げ、謝罪をした。

帰る招待客の1人1人に頭を下げながら、お祝儀袋を返し、引き出物を手渡した。
「ホテル開業以来の前代未聞の出来事でした」と、苦笑いしていたホテルのスタッフの人にも、謝罪した。

怒る人も、笑う人もいたけど、なんとか無事終わった。
式をメチャクチャにしちゃったんだから……無事でもないけど。
でも、無我夢中で謝っていたんだ。

最後の1人に謝罪してお辞儀をすると、会場から人が1人もいなくなり、私達は2人、ぽつんと空いたテーブル席にぽぉっと腰掛けていた。
暫くすると、ホテルの人が食器やテーブルを片付ける音に私達ははっとなった。

「お疲れ」
「ん。カズトもお疲れ様」
カズトは軽く首を振った。
「幸せに出来なくて、ごめんな」
「……ううん。十分、幸せだったよ」
「そっか……」
カズトは私の手を取ると、掌にペンダントを乗せ、私に背を向けた。
「もう行けよ……。やっぱ、今は、一人になりたい」
私はカズトを抱き締めると、「有り難う……」とその頬にキスをして、式場を去った。

キスをしている時、カズトは言った。
「ハルナ、幸せになるんだ」と。

涙が後から後から溢れてきた。

控え室に戻ると、トオル君は笑顔で「お帰り」と言って私を抱き締めてくれた。
「よく頑張ったね」
「トオル君がいてくれたから、今まで、頑張れた……。アリガト……」
私は彼の腕の中で涙が枯れて無くなるまで大声を上げて泣いた。
泣いて泣いて泣き疲れて、「ひっく、ひぃぃぃっく!」としゃくりあげた頃、私の頭を撫でていたトオル君が、ふと私の頭越しに「ハルナ!外!!」と指差した。

窓の外では、桜がその小さな蕾をほころばせていた。

トオル君は私の肩を抱き寄せると、桜の花を穏やかな目で見つめていた。

「子供には、僕たちのことをちゃんと教えてあげよう。
『君には、僕と片岡和人と言う2人の父親がいる』と言う事を……」

トオル君の私を包み込む腕の中で、私はそっと頷いた。

この花のように儚く散る想いもあったんだと、カズトを想うと今は胸がズキズキ痛むけど、この想いを抱いたままでもトオル君は「それでいいんだよ」と抱き締めてくれる。

昔、私は恋がしたかった……
私はただ恋に憧れていた……

なのに、せっかくした恋は、つらくて、みっともなくて、泣くばかりだったけれど、この桜の花のように、今、ようやく咲いてくれた。

愛しみ合って生きていこう……

私達はそう誓いながら、いつまでも寄り添いながら桜の花を2人で見つめていた。

第1部完

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Special Thanks!
koukoさん
じゅんちさん
okamehimeさん
はぜイチさん
えりさん
海苔屋のおっさんさん
あっちゃんさん
うららさん

明日から、3回ほどエピソード(その後)をお送りしますね。
長い間、第1部をご愛読下さり本当に有り難うございました
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「フラワーガーデン2」連載始めました


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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お疲れさまでした (うらら)
2006-03-28 11:47:34
ずっと読ませて頂いておりました。

何度かコメントを残そうかと悩んだのですが 最後まで読み切ってからと思い今日まできました。



第2部も早速 お気に入り登録をして楽しみにしています。

頑張ってください。
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Unknown (kouko)
2006-03-28 14:58:54
ありがとう。千鶴さん。



素敵な3人に、幸あれ☆



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うららさんへ (作者より)
2006-03-28 16:55:04
温かく見守って下さり、有り難うございました。

うららさんのようにそっと見届けて下さる方々の存在も励みになりました。

今は小説が自分でも書けるんだと分かっただけでも喜んでいます。

しかも、長編なんて……。

稚拙な文章を楽しんで頂けて、本当に嬉しいです。

これからもライフワークとして細々と書いていきます。

期待を裏切らないようガンバリマス\(≧▽≦)/

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koukoさんへ (作者より)
2006-03-28 17:14:09
本当に有り難うございました。

まだまだフラワーガーデン自体は後2年は掛かる長編ですが、この第1部が試金石でした。

koukoさんが一番最初にコメントをしてくださったので、えいやっ!と書けてしまいました。

これからも、やっぱりド下手っぴですが、書きつづけていきますね

\(≧▽≦)/

koukoさんにも沢山の幸せが降り注ぎますように!











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(*>_<*) (あっちゃん)
2006-03-28 21:50:48
ついにおわってしまったぁぁ(*>_<*)なんだかちょっぴり淋しいデス(>_<。)でも、本当にこのフラワーガーデンにであえてよかったです!!ぁりがとうございました☆彡これからも楽しく読ませてもらいます♪o(*>ε<*)oそれと、カズトも幸せになって!!o(>□<o;)
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すみません(T_T) (あっちゃん)
2006-03-28 21:52:24
なんかうまく書き込みできなぃみたいです↓↓
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あっちゃんさんへ (作者より)
2006-03-28 22:16:09
書き込み有り難うございます。

一生懸命書いて下さっている事が伝わってきて嬉しかったです。

私も遂に終わったぁぁ~って感じですが、応援して下さった皆さんに感謝の意味を込めて、只今、「おまけの章」を執筆中です。

ハルナとトオルとカズトが連続3夜限定で帰ってきます(ってほど、大したものじゃないですが)楽しんで頂けると嬉しいです。

まだ、もうちょっと頑張りますね\(≧▽≦)/
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お疲れ様です! (はぜイチ)
2006-03-30 23:09:13
第1部終了おつかれさまでした!

読み終わって、ほーっとしました!

すっごくホッとしました!

よかった!良かったです!!!

トオル君とハルナちゃん頑張って下さい!

良かった良かった、本当に良かった!

 



それからランキング上位、めでとう御座います!



最終話で舞い上がってて、もう何が何やら分からない乱文ですが、第2部も楽しみにしています!

あ、あの、でも無理をされないように…

ではでは、失礼しました。
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はぜイチ様、有り難うございました (作者より)
2006-03-31 20:08:47
喜んで頂けて嬉しいです。

今はこれが精一杯のラストでした。

満足しているかと言うと……、もっとこうすれば良かったとか、歩いている途中に思いついている内容を書き留めて、盛り込めばよかったとか、沢山後悔していますが、でも、これでベターでした。



本当の最終回は2年後に訪れますが、もっと成長していたいな~と思います。

頑張りますね。



いつも応援して下さって、本当に有り難うございました。
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