フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

暗号文

2006年02月19日 20時50分24秒 | 第13章 思愛編
僕の体は、ミセス・マクダウェルの予言をしっかり受け入れ、クリスマスの晩には病院のベッドで肺炎患者ライフをスタートさせていた。

入院をしたからと言って僕の多忙な日々に変わりは無かった。

病室に専用のホットラインを引き、ランを組んだ。

点滴を打ちながら、増えることはあっても減ることは無い書類の山に埋もれて窒息しそうになった頃、キンケイドがグレイスを伴ってお見舞いにやって来た。

驚いた事に二人はあれから意気投合し20歳の年の差を物ともせず、付き合い始めていた。

「よぉ!トール!お見舞いに来てやったぜ。しっかし、肺炎になるまで仕事をやるなんてなぁ~自己管理がなってないぞ」

グレイスは持ってきた花束を彼から取り上げると、ズボッと花瓶に突っ込んだ。

「ハニー。会うなりお説教なんて、トールが可愛そうよ」
「けどさ、こう言う時でないとこいつは聞かね~から」
キンケイドはグレイスの腰に手を回すと、僕の存在を忘れたかのように、熱烈なキスをし始めた。

グレイスも、「もう、困ったヒトね」とかなんとか言ってキンケイドの肩に手を回すと、
ずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと抱き合ってキスをし始めた。


コホン!コホン!!

僕がこれ見よがしに空咳をすると、二人は邪魔するなと言わんばかりの顔をした。

「で、オレに用があるって言ってたけど、何だよ?」
「この記事をワシントン・ポストに載せて欲しいんだけど」

キンケイドはぱっと見ると、絶叫した。
「な、なんだよ!!これ!!」
「暗号」
「これじゃ、何て書いてあるか分かんねーだろぉ!!」
「全米を探して1人でも分かる人間がいればいいよ。この暗号に隠された求人を解読できた人を採用したいんだ」
「けど、お前と作った張本人のフーバー以外は読めねぇんだろ?あの暗号文は」
「時間が無いんだ。だから、この求人を打つんだ。万に一つの可能性に賭けるよ。頼めないか?」

キンケイドはしぶしぶと「一応、載せてみるけど期待するなよ」と言い残して病室を去った。

外はすっかり日が暮れ、夜の帳が下りてきていた。
粉雪がちらつく病院の窓の外を見つめながら、僕は「ハッピーニューイヤー、ハルナ」と呟いていた。



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クリスマスの不運

2006年02月18日 23時05分17秒 | 第13章 思愛編
2005年12月――――――――

ワシントンに帰ってからの僕は多忙を極めていた。

アリス・バーニー
メグ・グルーバー
エリザベス・オーウェン

かつてC&H社の買収した病院で婦長をしていた彼女達が、C&H社を告発したと言う事件を契機に、全米で「ANYTHING BUT C&H(C&H社なんかくそっくらえ!)」運動が沸き上がった。
そうした中、C&H社CEO(最高経営責任者)グレアム・マッカーシーはその消息を絶ち、社内は混乱を極めていた。

そのため、かつて不本意ながら、財政難のためC&H社の傘下に入った病院の多くが反旗を翻し、業界2位のAMH社(つまりは僕の会社へなのだが)への資本参加を打診し始めていた。

プロパーの経営
M&A
婦長たちの裁判のバックアップ
ジェイク・フーバーの遺した暗号の解読
講演会
有力者との会食
エトセトラ……エトセトラ……

分刻みのスケジュールの中、移動中の車の中で、やはり分刻みの仮眠を取った。

「Mr.フジエダ。働き過ぎです。もう少し、お休みを取らなくては参ってしまいますよ」
秘書のミセス・マクダウェルは僕に栄養ドリンクを手渡しながら、ヒンヤリとした氷嚢を頭に乗せた。
僕の熱はこの時点で、華氏102度(日本の摂氏39度)を優に超えていた。

「やはり、無理では……。次のご会食はキャンセルを致しましょうか?」
ミセス・マクダウェルは携帯に手を伸ばした。

「いや、いい。それよりもこの間スピンオフしたTHC社のコンプライアンスオフィサーにミーティングのリスケの連絡を……」
「Mr.フジエダに忠告します!キャンセルをなさらないのでしたら、会食までの30分は仮眠に徹して下さい!」
ミセス・マクダウェルはきっと僕を睨むと、ファイルを取り上げた。

「いいですか!Mr.フジエダ!世間では今日は、クリスマスです。
どうか、せめてこのご会食が終ったら、1日でもお休み下さい!
肺炎で入院することになっても知りませんよ」

僕は涙ぐみながら体を心配してくれる彼女に感謝し、そして、
「わざわざ、クリスマスに出勤して貰って申し訳なかったね。
貴女もこれが終わったら3人の子供達と温かいクリスマスを」と、後部座席に隠していた3枚のクリスマスカードと3個のクリスマスプレゼントを手渡し、労いの言葉をかけた。

彼女は、「まぁ!まぁ!」と、感激の声を上げると、
「Mr.フジエダ。あなたにも神の祝福がありますように……」と頬にキスをしてくれた。

会食は滞りなく終わり、僕は3つの会社の買収を成功させた。


車に乗り込むと、直ぐに、熱で震える手でハルナにメールを打った。
「ハルナ、ごめん。クリスマスまでには帰りたかったけど、帰れそうにない。
ハルナに会いたいよ。今すぐにでも」

クリスマスまでには何とか帰りたかった。
そして、君と一緒に、付き合ってから初めてのクリスマスを過ごしたかった。
そのために、寝食も惜しんで無理にスケジュールを詰め込んできたのに……。
君はどういう気持ちで僕の帰りを待っているのか。
そればかりが気に掛かり心が急いてくる。

「P.S. 年明けには帰れるよう頑張ります。」
と、最後に打って君に送信した。

しかし、この夜、不運にも僕はミセス・マクダウェルの予言どおり肺炎で入院することになるとは夢にも思わなかったんだ。



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愛してても・・・・・・

2006年02月17日 14時53分01秒 | 第12章 逡巡編
オレ達は無言でお互いの瞳を・・・・・・、心の中を探り合った。

これはトオルから貰ったもんなんだろう?
本当は、まだあいつのことを今も愛してるんだろう?
なのに、お前はこれからも何もかも胸に秘めて、オレの妻を演じていく気なのか?

愛しているからこそ、ハルナの口から聞きたい。
なぜ、お前はこれを隠してオレに抱かれたのか・・・・・・。
・・・・・・本当にオレを愛しているのか?

ハルナはベッドから体を起こすと、オレから目を逸らさず、ゆっくりとブラウスのボタンを外し始めた。

「ハルナ・・・・・・」
ブラウスを脱ぎ捨て、ブラジャーを外すと黙って俺の手を引きその白い胸に押し当てた。
「いいよ。・・・・・・抱いても」
ハルナはそう言うと黙って目を瞑り、一筋の涙を流した。

手の中にあるハルナの肌は数時間前にあれほど熱く抱き合ったとは信じられないほど冴え冴えとして、小刻みに震えていた。

何も言わないのか・・・・・・。

オレは急に何とも言えない無力感に苛まれた。
愛してても、哀しい・・・・・・。
愛してても、虚しい・・・・・・。

抱き合ってもオレ達の間にあるもどかしい距離感は埋められないのか?

オレはハルナの手を取ると、ペンダントをその手の中に返し、彼女に服を着せ、胸のボタンを閉じた。
「カズト・・・・・・?」

窓辺に立ち、「ごめん」とだけいうと、血の気のすっかり引いた指先で椅子に掛けたジャケットを手に取り、内ポケットを探った。
そういや、禁煙してたっけと苦笑し、ジャケットを椅子に放った。

ふと外を見ると、雨は雪に変わっていた。
「ハルナ、雪だ・・・・・・」と言い掛けて、電信柱に立つある人影にぎくりとなった。


・・・・・・トオル?!

金髪に黒いコートを着た長身の男・・・・・・。
男はゆっくりと窓を見上げ、そしてオレと目が合った。
・・・・・・間違いない!!

「直ぐ戻る!」
そうハルナに言い残し、オレは慌てて部屋を飛び出すと、転がるように階段を駆け下りていた。

「あいつ、日本に戻って来ていたのか?!」

靴を履くのももどかしく、オレは裸足のまま玄関を飛び出していた。
・・・・・・既に外に人影は無かった。

だが、ちらつく雪の中に立ち尽くしながらオレは確信していた。
ヤツが日本に帰って来ているという事を。


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冷たいキス

2006年02月17日 10時32分44秒 | 第12章 逡巡編
園田夫妻、ハルナ、ハルナの高校の担任が、ハルナの今後の進路を話し合う席に、オレも将来の夫として同席した。

ハルナは真っ直ぐな目で彼らを前に自分の将来について語った。

高校は退学すること。
出産後は大検を受けて、大学への進路を拓きたいということ。
何になるかは育児が一段落着くまで考える時間を欲しいとのこと。

オレは初めて聞く彼女の決意にいちいち驚き、そして夫となるのに何の相談もされなかったという虚しさに唇を噛み締めた。

話し合いが終わると、オレとハルナは2階にある彼女の部屋へと向かった。
一つの山場を越え、ほっとしながら笑みを浮かべるハルナの顔を見て、「良く頑張ったな」と賛辞を呈する一方で、「なぜ、オレに相談しなかったんだ」と言うやるせなさが胸の中に燻った。

ベッドに腰掛け大きく伸びをしている彼女の手を捕らえ、そのままベッドに押し倒し、キスをした。

「カズト?」
オレの表情から何かを読み取ったのか、ハルナの顔からは見る見る笑顔が消えていった。
「どうしたの?」

オレはGパンのポケットに仕舞っていた星の形をしたペンダントを取り出し、彼女の目の前で揺らした。

「あ!」
ハルナは短い言葉を発すると、両手で口を覆った。

「昨日の夜、探してたのはこれなんだろ?
それに今朝もフロントでこそこそ探してくれとかナントカ話してたよな?」

ハルナは背けていた目線を恐る恐るオレの目に合わせた。
「・・・・・・誰から貰った?」
ハルナは「自分で買ったの」とだけ言うとまた目を逸らせた。

「へぇ~・・・・・・。じゃ、なんで、身に付けないで大事そうに持ち歩いてるんだよ」
「金属アレルギーで・・・・・・だから・・・・・・」

オレはシルバーのペンダントをジャラジャラと掌の中で弄んだ。
「ふ~ん。すっげぇ、高そうなペンダントだよなぁ」
ハルナは体を起こすと、「返して!」と手を差し出した。
オレはその手を引き、彼女の唇を乱暴に吸った。

「い・・・・・・や!」
ハルナは両手を突っ張り、オレの腕から逃げ出そうとした。
「知ってるか?ハルナ。こういう純度の高い高価な銀は毒性がないから、アレルギーを起こすことは稀だってこと・・・・・・」
ハルナの顔色がさっと蒼ざめた。

オレは再びハルナに覆い被さると、彼女を罰するだけの冷たいキスをした。

「誰から貰ったか言えよ、ハルナ・・・・・・。でないと、ここで抱くぞ」




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恋の遺伝子

2006年02月16日 23時36分38秒 | 第12章 逡巡編
2階の突き当たりにある書斎には、建築家になるのが夢だったと言うおじさんの思いそのままに沢山の家の模型が置かれていた。

おじさんはオレに椅子を勧めると、「吸うか?」と煙草を差し出した。
「いえ、オレ、止めたんで」と断ると、「そうか。吸っても?」と煙草を目の高さに掲げた。
オレがどうぞと勧めると、ライターを点け、煙草を燻らせた。

「あいつは・・・・・・、ハルナは妻に似て美人だろう?」
「え?!あ、はい・・・・・・」
オレは突然の質問の意図を図りかねていた。

「大学時代、僕と片岡・・・・・・、君のお父さんはハルナの母を巡って争ったんだ。
・・・・・・聞いていたかな?」
オレは初めて聞く彼の告白に面食らった。
「いえ。初耳です」
「そうか。丁度、今の君くらいの年齢だったよ。僕達3人が出会ったのは・・・・・・。
結果、僕と彼女が付き合い、結婚し、長年子宝に恵まれなかったがなんとかハルナが産まれた・・・・・・」

「そうだったんですか・・・・・・」
オレはオヤジの過去を知って不思議な感じがしていた。

「しかし、遺伝子の執念恐るべしと言うか・・・・・・。
結局、こうやって我が家の大切な姫君を片岡にそっくりの息子がかっさらって行くんだものなぁ」

彼は苦笑しながらオレの顔をしみじみと見つめた。

「君達はまだまだ未熟だ。だからせめて君が一人前になるまでは出来る限りのことはさせて貰いたい」
彼は持っていた煙草を灰皿でねじ消した。
オレは「すみません」と項垂れるしかなかった。

「娘を幸せにしてやってくれ」と、オレの肩を叩く彼の手は心なしか必要以上に力が入っていたような気がしたが、その笑顔に気のせいかと思い直した。


「さて、下に行こうか。女達が心配するからね」
「はい」
と、立ち上がった瞬間、ミゾオチに鈍い痛みが走り、オレは腹を抱えて座り込んだ。

おじさんは右手を擦りながら、「父親として当然の権利を行使させてもらったよ」とにっこりと微笑んだ。

そう言えば、おじさんが高校時代ボクシング部だったと、以前おばさんから聞いたことを、ゴホゴホと咳き込みながら思い出していた。

ハルナの凶暴な遺伝子は間違いなくおじさんから受け継いだものだと、オレは身をもって実感した瞬間だった。



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魔の23階段

2006年02月16日 15時15分41秒 | 第12章 逡巡編
ハルナの家の前に車を横付けしたが、彼女は車から下りるのを渋った。

「カズト、やっぱり違う日にした方が・・・・・・」

心配するハルナに軽くキスをして「大丈夫だよ」と笑った。

ハルナの家の隣りにあるオレの家の車庫に車を入れると、雨の中、ハルナの肩を抱いて小走りで彼女の家へと向かった。

チャイムを押すと中からいきなりおじさんが出てきた。
大丈夫とは言ったものの、さすがにこれには固まった。

「お久し振りです・・・・・・」
「やぁ、カズト君。随分大きくなったね」
おじさんの思いも掛けない笑顔のお蔭で、安堵に胸を撫で下ろした。

「ここで立ち話もなんだから、入りなさい」
「・・・・・・失礼します」
ハルナはやはり不安そうにオレの方をちらちらと見ていた。

「大丈夫だって」と小声でウィンクすると、「もう!」と呟きながら笑った。

靴を脱いでリビングに行こうとしたところでおじさんが、
「カズト君、ちょっと、2階の私の書斎に来て貰えるかな」と階段を指差した。
「はい・・・・・・」

また、不安そうな目をしているハルナと目が合った。

おじさんの後について彼女が一緒に2階へ上がろうとしたところでおじさんが振り返った。
「男同士の話しだから、お前は席を外しなさい」
「でも・・・・・・」
ハルナは後に続くオレの方を、振り返り顔を曇らせた。
オレは黙って微笑んだ。

ハルナはしぶしぶオレの横を摺り抜けると、「ごめんね」と呟いて階下へと向かった。

再び、オレが手摺に手を掛け上を見上げると、おじさんの顔からは笑顔が消えていた。

オレは息を呑み、永遠に着かないだろうと思われる位、長い長い魔の23階段を一歩ずつ踏みしめて上って行った。



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苦渋の瞳

2006年02月16日 10時04分37秒 | 第12章 逡巡編
昨日の晴天とはうって変わって町は雨に煙っていた。
オレ達は車に乗り込むと帰路へと着いた。

オレは昨日ハルナから取り返したサングラスをかけ、忙しなく動くワイパーの先に目を凝らした。

「ハルナ、体大丈夫か?」
ハルナは一瞬躊躇しながら小さく頷いた。

「じゃぁ・・・・・・、これからマンションに来ないか?」
「え?!」
「だめ?」
「・・・・・・だめ」
「あんなんじゃ、全然足んないんですけど・・・・・・」
「そんな・・・・・・」

オレは咳払いをひとつすると、横目でハルナの反応を注意深く追った。
「今日はずっと抱き合っていたい」
ハルナは、「・・・・・・だめよ」と小さく呟くと、「今日、パパが帰ってくるの」と話題を変えた。

「え?!おじさん、出張先から戻って来るのか?」
「・・・・・・うん」
「じゃぁ、オレ、挨拶っつーか、謝りに行った方が良いな・・・・・・」

オレの言葉にハルナは慌てて、「あ!それは別の日がいいかも」と打ち消した。
「なんで?」
「実は、今日は高校の担任の先生が午後から来ることになってるの」
オレはオフクロの昨日の言葉を思い出した。
「学校、退学するって本当か?」
ハルナは無言で頷いた。
「じゃ、尚更、行かないとな」
「え?!」
「原因君のオレとしては結果ちゃんの人生に責任を取りたいしね」
「ぷっ!何、それ?!」
ハルナの顔に漸くいつもの笑顔が戻ってきた。

「オレ達、何でも言い合って、何でも相談し合える夫婦になろう。
だから、今回みたいな大事なことは独りで抱え込まないで真っ先にオレを頼って欲しい」

オレを見つめるハルナの目からはみるみる涙が零れてきた。
オレは左手でハルナの頬をなぞると、「ばぁ~か。泣いてんなよ」と笑った。

何でも言い合える夫婦・・・・・・か。
そう望みながら出来ない自分を心の中で嘲笑い、苦渋に満ちた目をサングラスの下に隠した。
そして、オレは、今にも口を突いて出そうになる言葉をギリギリと奥歯で噛み砕いた。

・・・・・・ハルナ、お前、昨日の夜は誰を想いながら抱かれていたんだ?と。




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ペンダントの秘密

2006年02月15日 23時29分33秒 | 第12章 逡巡編
「服なんてまだ着させねーから」
「い、いや・・・・・・」
ハルナはオレの両腕を掴むと抵抗し始めた。

「カズト。私、もう・・・・・・それに、その・・・・・・さっき、したばかりだし・・・・・・」
「あんなのヤッタうちに入んねーって!」
ハルナがオレの両腕を抑えている間に、足で彼女の膝を割ると、彼女が動揺し始めた。
その隙に腕を掏り抜け、下へと体ごと移動した。

慌ててぴっちりと閉じられた甘い場所を探り当て、優しく指でなぞると、ハルナの口から吐息が漏れた。

一度開かれたハルナの体は、今度はやすやすとオレの侵入を許した。
一瞬、ハルナの手からは力が抜けたが、オレが動き出すと、歯を食いしばり全身に力を入れ始めた。

おいおい、また足が攣るぞ・・・・・・
「もっと足を開いて力を抜けよ」
ハルナは震えながらこくんと頷くが、体は力みっぱなしだった。

「最後までもたねーぞ・・・・・・」
そう囁きながら徐々に動きを早めていった。
ハルナの口から小さな喘ぎ声が漏れてくる。
その声に譬え様もない悦びが湧き上がり、気付けば激しく突き上げていた。

ハルナは大きなうねりの中で登りつめ様としていた。
「いいよ。イケよ、ハルナ!」
言葉で弄るが「イク」と言う感覚が分からないのか、何度も感情を押し殺し、下りてくる。

イカせてやる・・・・・・
オレは夢中になって、ハルナの肌を貪り、そして突いた。

やがてハルナの胸が小さく打ち震えると、また大きな波の前にその身を反らせ始めた。
すげっ!気持ちイイ・・・・・・
堪え切れずオレの方が先にイキそうになったが、ハルナが達するのを見届けてから一緒に登りつめ、そして彼女の中で果てた。

オレは仰向けになると、生まれて初めて心から愛する女と抱き合えた悦びに震えた。
ほの暗いホテルの一室は、オレとハルナの乱れた呼吸だけが響いていた。

「サンキュ、良かったよ・・・・・・」
そう言うと、オレはだらりと脱力したハルナの体を抱きしめた。
ハルナは恥かしそうに薄っすら微笑むと、そのまま深い眠りに落ちていった。

「ごちそーさまでした・・・・・・」
オレはハルナのおでこにキスをしながら、枕元に隠してあったガウンを引き摺り出した。

その時、彼女のガウンのポケットから細い鎖のようなものが床に滑り落ちた。

「何だ?これ??」

オレはそのチェーンを手に取ると、サイドテーブルのライトを点け、その光に翳した。

「ペンダント?!」

ぼーっとしながら、そのペンダントとハルナの寝顔を交互に見つめていた。
そして、さっきのハルナの必死になって探し回っていた行動を頭の中で思い返し、一気に夢の中から現実の世界へと引き戻された。

「・・・・・・ハルナ、まさかお前が本当に探していたのは・・・・・・これなのか?」

ギリギリとペンダントヘッドを強く握り締めるオレの手からは薄っすらと血が滲み出し、1滴の血が滴り、シーツの上に広がっていった。


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ナマ殺しの反撃

2006年02月15日 11時13分13秒 | 第12章 逡巡編
オレはナマ殺しになった憤りを抑えつつ反撃のチャンスを窺っていたが、徐々に睡魔に襲われ始めていた。
ふと、ハルナの幻影がホテルの天井画の天使と重なった。
「天使様、罰当たりかもしんねーけど・・・・・・、どうかヤラセテ・・・・・・」

ウトウトし掛けたオレだったが、真夜中にぞもぞと布団の中を這う気配に目が覚めた。
「あれ?・・・・・・ない?」
布団の中からはハルナの困惑した声が聞こえてきた。


オレは薄目を開けて、ハルナの行動を追っていた。
大方の見当はついていた。
ヤツはオレの枕の下に隠してある下着とブラジャーとガウンを探しているに違いない。

ナマ殺しにされていたオレの欲望が、薄明かりの中チラチラと浮かぶハルナの裸体に刺激されていた。

ハルナが安心しきって完全に布団から這い出してきた瞬間を捕らえて、オレは彼女の手を引き、胸に抱きしめた。

「カズ・・・・・・!お、お、起きてたの?」
「ったりめーだ。・・・・・・ところでハルナ君はさっきから一体何をしてるのかな?ん??」
ハルナはオレの体から離れようと格闘していた。

「言わなきゃ、後悔するぞ」
オレはハルナの体に手を這わせて、くすぐり始めた。

彼女はくすぐったさから体を丸めながらも、攻撃を交わそうと身を捩らせた。
「ふ、服!着るものが・・・・・・見当たらないの!」

やっぱりな。
オレは枕の下着を更に奥に押し込めた。

「オレ、知ってるよ」
「ホント?!」
ハルナは嬉しそうに「どこ?」と尋ねると、オレの近くを探り始めた。

「手、貸してみ」
ハルナは喜んで手を差し出した。
オレはその手を取ると強引に引いて、すっかり元気になったオレ自身にあてがった。

「きゃっ!」
ハルナは慌てて手を引こうとしたが、オレはそれを許さなかった。
体を起こすと、ハルナと体勢を入れ替え、彼女の上に馬乗りになった。

「天使様♪アリガトウ・・・・・・」
そう呟くと、再びハルナを弄り始めた。



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報われない努力

2006年02月14日 20時30分29秒 | 第12章 逡巡編
このオレに必死でしがみつくハルナを心から愛しいと思った。

イカせてやる・・・・・・
ハルナの耳を軽く噛むと、彼女の足を持ち上げた。
その瞬間、ハルナの息が荒くなり、辛そうな顔で、
「いっ、・・・・・・ん。い・・・・・・」
と、乱れ始めた。

「何?いい?いっちゃいそう?」
オレが言葉で弄ると、大きく首を振り、
「いっ、・・・・・・た!!!」と叫んだ。

え?まさか、もうイッタのか??と、オレはハルナのあまりの感度の良さに驚いていた。
って、オレまだこれからイカせるとこなんだけど・・・・・・。

次の瞬間、ハルナは「痛い!!足、攣った-----!!!」と言って急に上体を起こしたものだから、想定外の出来事に避け切れず、彼女の頭がオレの顎をモロ直撃した。

オレは仰け反り痛む顎を擦りながら、急いでハルナから体を離し、「足、攣ったって?どっちだ?」と尋ねた。
彼女が痙攣している右足を指したので足の指を反らせた。

「大丈夫か?」と足を擦っていると、彼女の顔が硬直し、その目線はオレの体のある一点を凝視していた。

「きゃーーーーー!!!!」

ハルナは毛布を掻き集めるとその中に隠れてしまった。
「きゃーーーって、おまえなぁ・・・・・・、どーゆー反応だよ、それ。
さっきまで、『あん♪あ~ん♪』って堪能してたくせに」

ハルナは毛布を被ったまま「ゆ、ゆってないもん!そんなこと!!」
ムキになって反論した。

「可愛かったな~。もっと泣かせてあげるから出ておい・・・・・・」
言いかけた所で、ハルナの振り上げた枕が顔面を直撃した。

「もう!カズトなんて知らない!!」
ハルナはプンプンに怒り、更に布団深く潜り込んでしまった。

・・・・・・せっかくあんなにご奉仕したのに・・・・・・
まだ、お前イカせてないし・・・・・・それにオレまだイッテないんですけど・・・・・・。

「なっ!怒んないで、続きしよう!!」

ハルナを揺すったが、こいつ!まただんご虫になりやがった!!


・・・・・・こうして報われない夜はオレをナマ殺しにしたまま更けていった。



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