君はとてもキレイなその栗色の髪を腰の近くまで伸ばしていたね。
そして、人懐っこい笑顔で僕の瞳を覗き込むと、
「お散歩に行きませんか?お花がキレイですよ」
と言って、車椅子を押して病院の庭を歩いてくれたっけ。
「アスター、ヒャクニチソウ、トレニア、オオキンケイギク・・・・・・」
君はまるで紋白蝶のように花から花へと軽やかに歩くと、僕に花の名前を教えてくれた。
「ニチニチソウ、マリーゴールド・・・・・・」
君の声は穏やかで心地良く、僕の心を包み込んでいくようだった。
だからかな・・・・・・。
僕はただ君の声がもっと聞きたくて、次々と花を指差しては君に質問してしまった。
最後に僕は、天使が羽を伸ばしたような小さな花に目を留め、「これは何?」と君に尋ねた。
「それはサギソウ。だんだん、数が少なくなって絶滅の危機に瀕している花なの。可憐な花・・・・・・」
君はその花にそっと触れ、憐憫の眼差しで愛でていたね。
僕は今まで花を見たことが無かった。
いや、正確には見ようとしていなかった。
君に出会うまで、花なんて存在しなかった・・・・・・。
でも、君に出会ったことで、花はその名前を持ち、芳しい匂いを放ちながら、一斉に華やかな色彩を僕の中で帯び始めた。
僕は君の顔を自分自身の目で見てみたい誘惑に駆られてサングラスを外した。
君は光に向かって手をかざしながら歩いていたね。
僕は、君が光の中に溶けてしまうんじゃないかって錯覚に捕らわれ、慌てて君の手を掴んでしまった。
君は真っ赤な顔をして、僕から手を離すと「・・・・・・もう行かなくちゃ」と、小さな声で呟いた。
「明日も、来る?」
「ううん。もう来ない」
「明日も、来て」
君は真っ赤な顔をして「もう来ない」と頭を振って、走り出した。
「待って!君、名前は?」
君はもう振り返ったりしなかった。
君のお母さんらしき人が「ハルナちゃん!こっちよ」と手を振って君を呼び寄せていた。
ハルナって言うのか・・・・・・
僕は、初めて君の名前を口ずさみ、胸の高鳴りを覚えたんだ。
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そして、人懐っこい笑顔で僕の瞳を覗き込むと、
「お散歩に行きませんか?お花がキレイですよ」
と言って、車椅子を押して病院の庭を歩いてくれたっけ。
「アスター、ヒャクニチソウ、トレニア、オオキンケイギク・・・・・・」
君はまるで紋白蝶のように花から花へと軽やかに歩くと、僕に花の名前を教えてくれた。
「ニチニチソウ、マリーゴールド・・・・・・」
君の声は穏やかで心地良く、僕の心を包み込んでいくようだった。
だからかな・・・・・・。
僕はただ君の声がもっと聞きたくて、次々と花を指差しては君に質問してしまった。
最後に僕は、天使が羽を伸ばしたような小さな花に目を留め、「これは何?」と君に尋ねた。
「それはサギソウ。だんだん、数が少なくなって絶滅の危機に瀕している花なの。可憐な花・・・・・・」
君はその花にそっと触れ、憐憫の眼差しで愛でていたね。
僕は今まで花を見たことが無かった。
いや、正確には見ようとしていなかった。
君に出会うまで、花なんて存在しなかった・・・・・・。
でも、君に出会ったことで、花はその名前を持ち、芳しい匂いを放ちながら、一斉に華やかな色彩を僕の中で帯び始めた。
僕は君の顔を自分自身の目で見てみたい誘惑に駆られてサングラスを外した。
君は光に向かって手をかざしながら歩いていたね。
僕は、君が光の中に溶けてしまうんじゃないかって錯覚に捕らわれ、慌てて君の手を掴んでしまった。
君は真っ赤な顔をして、僕から手を離すと「・・・・・・もう行かなくちゃ」と、小さな声で呟いた。
「明日も、来る?」
「ううん。もう来ない」
「明日も、来て」
君は真っ赤な顔をして「もう来ない」と頭を振って、走り出した。
「待って!君、名前は?」
君はもう振り返ったりしなかった。
君のお母さんらしき人が「ハルナちゃん!こっちよ」と手を振って君を呼び寄せていた。
ハルナって言うのか・・・・・・
僕は、初めて君の名前を口ずさみ、胸の高鳴りを覚えたんだ。
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