行き先の分からないドライブは結構スリリングだ。
快適に車を走らせつつ、たまにコースをわざと外したりすると、
「逆走しています」
と、カーナビのウグイス嬢が冷静な声でオレを批判する。
それとは対照的に
「か、かずにぃ逆走してるって。ど、どうしよう!!」
パニックに陥るハルナの狼狽振りが可笑しくて、(後もう1~2回位遊んでやろう)と密かに思うのも楽しい。
ご機嫌な天気に、隣りには(天然ボケが入っているが)可愛い彼女。
道路が空いてりゃ言うことなし。
「具合悪くないか?」
「うん」
「つわりは?」
「大分良くなってきた」
「そか」
低い位置から差し込む強過ぎる位眩しい陽射しに、いい加減辟易してハルナに声を掛けた。
「ハルナ、お前の膝辺りン所にさ、手前に引けばパカパカ開くのがあるんだ。
そっから、グラサンとってくれる?」
ハルナはダッシュボードを手前に引くと、奥からサングラスを掘り出し、暫く眺めていたかと思うと、・・・・・・自分に掛けやがった!
「あ!こら!てめっ!よこせよ!!」
「・・・・・・色が良く見えないね」
「ったりめーだ。色ついてんだから。っつーか、よこせ!!」
「ふ~ん・・・・・・」
それからオレの片翼の顔からは笑顔が消え、遠い目で心を浮遊させる。
車は牧歌的な街の風景を抜け、次第に摩天楼が四角い空を形作り始めた都会へとやって来た。
それでも、ハルナの心はここには戻っていなかった。
ハルナ、今、何を考えてる・・・・・・?
誰を、想って・・・・・・。
オレは何も聞かず、機械的なウグイス嬢の言うがままにハンドルを切る。
「かずにぃ・・・・・・」
「ん?!どうしたよ?」
オレは努めて平常心で長閑な日常会話を口から転がす。
「お腹すいた」
「はぃぃぃぃぃ??さっき、食ったばっかだろ?」
「はい!あれは、赤ちゃんが食べちゃいました!」
元気に手を上げてハルナは殊更にハシャイで見せる。
「・・・・・・今度は?」
「私の分♪」
一気にオレの手からは力が抜ける。
「で、何が食いたいだって?」
「ケーキ!!」
・・・・・・ざっけんな!!!!!
恋に夢中なあなたに♪アルファポリス
楽しい小説を読みたい貴方へ