「どうした。徹?最近、元気が無いな」
成田空港に向かう電車の中で、ダディが僕のおでこに手を当てながら聞いた。
僕は聞けないでいた。
あの写真の女の人が誰なのかを。
途中、ベビーカーを押しながら家族が乗ってきた。
「まぁ!小さくて可愛らしいわねぇ」
マミィが目を細めながら赤ん坊を見つめていた。
僕はその赤ん坊がやっぱり日本人で、両親も日本人であることを確認してがっくりとした。
僕は、隔世遺伝なのかもしれない。
きっと、ダディかマミィのどちらかの家系に金髪で緑の瞳をした人がいて、僕はその人の遺伝子を受け継いだんだと思おうとした。
だけど、写真の女性の顔がずっと頭から離れないでいた。
落としてしまった写真立ては、ダディが寝ている隙にきちんと直して元の場所に戻しておいた。
その方がいいと思ったからそうしたんだけど、どうしてそうしたのかは自分でも分からなかった。
小雨が降る中、僕達は重い荷物を引き摺りながら成田空港に着いた。
搭乗予定の飛行機が僕達が来るのを待ちわびているように見えた。
「とにかく一刻も早く日本から離れるんだ」
不意にそんな衝動に駆られた。
搭乗を告げるアナウンスを聞きながら、ようやく僕は安堵した。
「日本になんか来ない方が良かった」
飛行機に乗り込みながら、僕はそっと呟いた。
そうすれば、何もかも気付くことはなかったかもしれないのに……。
僕は飛行機のシートに深く腰掛けると、窓の外に顔を向け、頬を伝う涙を両親に見られないよう長袖で拭った。
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僕は聞けないでいた。
あの写真の女の人が誰なのかを。
途中、ベビーカーを押しながら家族が乗ってきた。
「まぁ!小さくて可愛らしいわねぇ」
マミィが目を細めながら赤ん坊を見つめていた。
僕はその赤ん坊がやっぱり日本人で、両親も日本人であることを確認してがっくりとした。
僕は、隔世遺伝なのかもしれない。
きっと、ダディかマミィのどちらかの家系に金髪で緑の瞳をした人がいて、僕はその人の遺伝子を受け継いだんだと思おうとした。
だけど、写真の女性の顔がずっと頭から離れないでいた。
落としてしまった写真立ては、ダディが寝ている隙にきちんと直して元の場所に戻しておいた。
その方がいいと思ったからそうしたんだけど、どうしてそうしたのかは自分でも分からなかった。
小雨が降る中、僕達は重い荷物を引き摺りながら成田空港に着いた。
搭乗予定の飛行機が僕達が来るのを待ちわびているように見えた。
「とにかく一刻も早く日本から離れるんだ」
不意にそんな衝動に駆られた。
搭乗を告げるアナウンスを聞きながら、ようやく僕は安堵した。
「日本になんか来ない方が良かった」
飛行機に乗り込みながら、僕はそっと呟いた。
そうすれば、何もかも気付くことはなかったかもしれないのに……。
僕は飛行機のシートに深く腰掛けると、窓の外に顔を向け、頬を伝う涙を両親に見られないよう長袖で拭った。
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