フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

のち反省・・・・・・

2006年02月01日 21時49分31秒 | 第12章 逡巡編
ハルナは不思議そうな顔をしながら俺を見ると、
「ホントにどうしたの?今日のかずにぃ、ちょっと変・・・・・・」
と、言った後、「ごめんなさい。北尾さん・・・・・・」と、すまなそうに頭を下げた。

「ああ、いいの、いいの。オ、僕は慣れてますから・・・・・・」
そう言いながらも、北尾の視線は丁度目線の高さにあるハルナの鎖骨から胸の流線をなぞっていた。

オレはついかっとなってハルナの腕を掴むと、
「お前は黙ってろって言ったろ?!出来ないんなら帰れ!」と声を荒げて立ち上がった。
だけど、そう言った瞬間オレは後悔した。

ハルナの目からは大粒の涙がポロポロと零れていたからだ。

「あ、ごめ・・・ん。ちょっと言い過ぎ・・・・・・」
「何よ・・・・・・何よ!かずにぃのばかぁぁぁ!!!」
ハルナはそう言いながら、手元にあった銀のトレーを両手で鷲掴むと、渾身の力を込めてスイングし、オレの左頬に強烈な右ストレートを


ドゴォーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!


と炸裂させた。



そして、呆気にとられたオレをキッ!と睨むと、立ち上がり、そのまま玄関へと駆け出した。

「わっ!わっ!バカ!待て!走るな!!アカンボが流れるぞ!!」

オレはソファに腰掛けている北尾の前をピョーンと飛び超えると、玄関へ猛ダッシュした。


俺たちの顛末を見ていた北尾は正に鳩が豆鉄砲食らったような顔をしてソファから立ち上がった。
「・・・・・・あ、アカンボ??」

オレは玄関で抵抗するハルナの腕を掴むと、引き寄せ、抱きしめた。
「分かった。ごめん!オレが悪かった。興奮すると腹の子に良くないって。とにかく落ち着け!」


オレがリビングに目をくれると、口も目も真ん丸になった北尾と目が合った。
「・・・・・・と、言う訳だから今日は帰ってくれ」
放心状態の北尾は「なんだよ・・・・・・それ・・・・・・」と、ぼそりと呟くとカバンを肩から掛け、フラフラと玄関まで歩き、靴を履いた。

オレはリビングのソファーにハルナを腰掛け宥めると、北尾を見送りに玄関までやってきた。

そして、扉を開けながら、北尾を睨みつけた。
「オレの女を視姦してんじゃねぇーぞ、たぁぁこ」と中指を立て、軽くヤツの頬に左ストレートをお見舞いした。




・・・・・・しっかし、ハルナはキレルとオレよりこぇーかもしれないと、疼く左頬を擦りながら一瞬身震いした。



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怒り

2006年02月01日 19時01分51秒 | 第12章 逡巡編
北尾はリビングのソファにもたれ掛かると煙草を1本取り出し、テーブルの上でトントンと叩いた。

「ここ、禁煙だから」
オレは北尾の指に挟まれた煙草を取り上げた。
「え?!そーなの?でも、お前も吸ってんだろ?」
「いや、俺はもう止めたから」
「へぇ~、オドロキ。ヘビースモーカーのお前がよく止められたよな」

北尾はオレの顔をまじまじと見ながら煙草をポケットにしまった。

「しかし、あれだな。ハルナちゃんさ・・・・・・」

オレは北尾の口から漏れる『ハルナ』と言う言葉に過剰に神経を尖らせていた。

「昔っから、すんげぇ可愛かったけどさ。なんちゅーの、そうそう、侵さざる神聖な美少女ってぇの?
それが、2年と会わないうちに少し艶かしさが加わって来てて『女』って感じになってきてさ・・・・・・。オレ、ドキドキしちゃったよ」
北尾は胸を抑えながら声を昂揚させていた。

ハルナは台所に入ると髪を束ねて、楕円形の大きな髪留めで髪を上げているところだった。
細く白いうなじにハラリとその柔らかな後れ毛が落ちているのを北尾は見逃さず、
「おいしそ~・・・・・・」
と溜息を洩らし、獲物を狙うオスの目でハルナを追った。

北尾はハルナをじっと見つめた後、前屈みになると、オレの肩に手を回し、ぐぃっと引き寄せると小声で囁いた。
「2年前にはお前にシカトされたけど・・・・・・。
彼女ももう高校生なんだしさ、かず兄ちゃんとしてはソロソロ妹君を手放してはどうかな?」

オレは不愉快な気分で北尾の腕を振り解いた。
そして、ハルナに会話が聞こえないよう小声で北尾に噛み付いた。

「妹じゃない!!」
「え?!以前、お前言ってたじゃんよ。
『あいつは妹だ』『女じゃない』『まだまだ子供だ』ってさ」
「それは・・・・・・!」

その時、ハルナがコーヒーを持ってやってきた。
カチャカチャと食器が鳴る音を聞きながら、オレは消化できない不愉快な想いを募らせていた。
ハルナが北尾に砂糖を差し出した時、オレは後に思い返せば恥かしいほど大人気ないことをした。

「北尾、帰るってさ」
「はぁ?!俺、そんなこと言ってないよ」
「かずにぃ、どうしたの?急に・・・・・・」
ハルナはオロオロしながらオレと北尾を代わる代わる見ていた。

「お前は黙ってろ!」
オレはムカムカする気持ちをぶつけるのに精一杯だった。
「何、突然キレてんだよ・・・・・・」
北尾は肩を竦めるとおどけたように笑った。

それが余計にオレの癇に障った。



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旧友

2006年02月01日 12時41分51秒 | 第12章 逡巡編
オレと北尾は久し振りに昔話をしながら大いに盛り上がり、大学近くのオレのマンションへと向かった。

エレベーターを降り、オレの前方をバカ笑いしながら歩いていた北尾の足が急に止った。

「どうした?北尾」

北尾は何も喋らず口を開けたまま目を見開いていた。

「何、アホ面してんだよ」

笑いながら北尾をどけて、ヤツの目線の先を見ると、白いコートを着たハルナがドアの前で、手に白い息を吹きかけながら立っていた。

「ハルナ!!」
オレは慌てて彼女の元に駆け寄った。
「お前、いつからここにいたんだよ!・・・手、冷えてるじゃないか!!
来週末会うはずだったろ?」
「来週末は、バイトが入るから今日試験が終った後に会おうって・・・・・・」

・・・・・・そうだった。
オレは北尾と会ったことで変更したことをすっかり忘れてしまっていた。

「ハルナ、ちゃん??」
「・・・・・・はい」
「僕、北尾ですが、覚えていますか?」

(はぁ??「僕」だぁ??しかもなんで「ますか」だぁ???)

見ると北尾はすっかり、目をハートに輝かせながら直立していた。
ヤツが、ハルナに見惚れていることは一目瞭然だった。

・・・・・・しまった。こいつはチューボーん時のハルナを見た時から紹介しろってうるさかったっけ。

オレは乱暴に玄関の鍵を開けながら、「入るぞ」とハルナに合図した。
「いや~、寒かったよね」
北尾は揉み手をしながら当たり前のように部屋に上がりこんだ。

「なに勝手に上がりこんでんだよ!」
オレはコートをハンガーに掛けると、肩を怒らせながらヤツを睨みつけた。

「あ、僕はコーヒーでいいですから・・・・・・」
と、微笑みながらハルナに手を振ると、ちゃっかりとソファの上で足を組んで寛いでいた。



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