ハインツはケッチャムがピストル自殺をしたと言っていたが、検死官の司法解剖において作成された鑑定書は、俄かにはそう断定出来ない結果が示されていた。
トリガーに掛けられた右手の死後硬直の状態
頸部に残る細い索状痕
上肢に認められる数箇所の皮下出血等……
いずれも何らかのトラブルに巻き込まれたのではないかと思われる節もあったが、ケッチャムがラボを脱出後自傷行為を始め、度々入退院を繰り返していたために、「自殺」と推定されていた。
また、ラボを出てからの外の世界は決して安楽の地ではなかったようで、奥さんとの間に溝が出来、離婚を回避しようとカウンセリングを受けていたらしい。
「だから、自殺か……」
僕は友人から入手した鑑定書をベッドの上に放り投げると、暫く天井を見つめていた。
あまり長い時間、鑑定書を読むのに根を詰めすぎたからだろうか、僕は軽い目眩を覚えたのでベッドに横たわり体を休めていたが、いつの間にか眠ってしまったようだった。
気付くと辺りは眩いばかりの光に包まれていて、僕はどこかの病院のベッドの側に立っていた。
ふとベッドを見るとそこにはハルナが眠っていた。
僕は驚いて彼女を揺り起こした。
やがて、彼女はゆっくりとその目を開けると、驚いた顔で僕を見つめ、次の瞬間、泣きながらしがみ付いて来た。
ハルナ?!
どうして、ここに……
それになぜベッドに横たわっているんだ?
そう話したいのに声が出ない。
夢なのか?
だけど、この柔らかい温もりは間違いなくハルナだ。
夢なんかじゃない……
僕はハルナの頬に手を添えると彼女にキスをした。
そして、彼女をこの腕の中に抱き、「もう、離さない」と呟いた。
もっと、彼女を感じたい。
もっと、この温もりを辿りたい。
僕は、少しずつ唇を彼女の首筋に這わせながら、やがて、柔らかな胸を弄り、愛撫していた。
「あ・・・・・・」
ハルナの甘く切ない声が病室に響く。
彼女は泣きながら僕を抱きしめ、
「トオル君・・・・・・トオル君・・・・・・愛してる。私、・・・待ってたんだよ」
そう咽び泣いた。
僕は彼女をきつくこの腕に抱きしめた。
その時、僕の背後から声がした。
「トオルさん。すみませんでしたね。折角、ご足労頂いたのに……」
その声の主はケッチャムその人だった。
真っ白い髪に、うち窪んだ目をした彼がピストルをこめかみに突き付けながら窓の外に浮遊していた。
「ケッチャム!!」
僕はベッドから飛び起きた。
しーんと静まり返った病室に折から降り始めた雨音が忍び込んできていた。
僕はすっかり暗くなった辺りを見回し、ふーっと溜息を吐いた。
「……夢か」
しかし、なんて夢だ……。
シトシトと雨の降る窓の外に目をやりながら、僕はじっとりとかいた額の汗を拭った。
↑「いま、会いにゆきます」で有名な♪アルファポリスです
↑私のお薦めのブログ、探してみてね♪
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いずれも何らかのトラブルに巻き込まれたのではないかと思われる節もあったが、ケッチャムがラボを脱出後自傷行為を始め、度々入退院を繰り返していたために、「自殺」と推定されていた。
また、ラボを出てからの外の世界は決して安楽の地ではなかったようで、奥さんとの間に溝が出来、離婚を回避しようとカウンセリングを受けていたらしい。
「だから、自殺か……」
僕は友人から入手した鑑定書をベッドの上に放り投げると、暫く天井を見つめていた。
あまり長い時間、鑑定書を読むのに根を詰めすぎたからだろうか、僕は軽い目眩を覚えたのでベッドに横たわり体を休めていたが、いつの間にか眠ってしまったようだった。
気付くと辺りは眩いばかりの光に包まれていて、僕はどこかの病院のベッドの側に立っていた。
ふとベッドを見るとそこにはハルナが眠っていた。
僕は驚いて彼女を揺り起こした。
やがて、彼女はゆっくりとその目を開けると、驚いた顔で僕を見つめ、次の瞬間、泣きながらしがみ付いて来た。
ハルナ?!
どうして、ここに……
それになぜベッドに横たわっているんだ?
そう話したいのに声が出ない。
夢なのか?
だけど、この柔らかい温もりは間違いなくハルナだ。
夢なんかじゃない……
僕はハルナの頬に手を添えると彼女にキスをした。
そして、彼女をこの腕の中に抱き、「もう、離さない」と呟いた。
もっと、彼女を感じたい。
もっと、この温もりを辿りたい。
僕は、少しずつ唇を彼女の首筋に這わせながら、やがて、柔らかな胸を弄り、愛撫していた。
「あ・・・・・・」
ハルナの甘く切ない声が病室に響く。
彼女は泣きながら僕を抱きしめ、
「トオル君・・・・・・トオル君・・・・・・愛してる。私、・・・待ってたんだよ」
そう咽び泣いた。
僕は彼女をきつくこの腕に抱きしめた。
その時、僕の背後から声がした。
「トオルさん。すみませんでしたね。折角、ご足労頂いたのに……」
その声の主はケッチャムその人だった。
真っ白い髪に、うち窪んだ目をした彼がピストルをこめかみに突き付けながら窓の外に浮遊していた。
「ケッチャム!!」
僕はベッドから飛び起きた。
しーんと静まり返った病室に折から降り始めた雨音が忍び込んできていた。
僕はすっかり暗くなった辺りを見回し、ふーっと溜息を吐いた。
「……夢か」
しかし、なんて夢だ……。
シトシトと雨の降る窓の外に目をやりながら、僕はじっとりとかいた額の汗を拭った。
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いつも楽しみに読ませていただいています。先がどうなるんやろうってドキドキしてます。
あたしとしてはトオルくんとハルナちゃんが幸せになってくれたら嬉しいなぁって思うんですけど
でもそうするとカズ兄が…と複雑な心境です(笑)
今回トオルくんもハルナちゃんを想ってるんやなぁって強く感じて切なくなってしまいました。
なんだかまとまらないコメントでごめんなさい!
これからも応援しています♪
そうですか。
えりさんもトオル君が好きなんですね♪
……トオル君、大人気。
皆で幸せになって欲しいけど、ハルナちゃんは一人しかいないので、私も書きながらちょっと複雑。
1人こっちによこせって感じです♪
私はハッピーエンドが好きなので、勿論ハッピーエンドを考えていますが、カズト君となのかトオル君となのかは次章までお待ち下さいね。
第1部完結に向けて頑張りますね~
っていうか、ハルナちゃんの病室に現れたのはやっぱりトオル君だったのですね!!
和兄…には悪いですがやっぱりトオル君と一緒になってほしいです>□<
ハルナちゃんの病室に現われたのは実は2人です。
あの時、3人の想いがシンクロしたんですねぇ。
ハルナちゃんにキスしたのも、不埒なことをしたのも2人です。
いけません、いけません。
そうですかぁ。
はぜイチさんは、本当にすんごくトオル君が好きなんですね~。
じゃぁ、うんとトオル君にも頑張って貰わないといけませんね。
私も、ガンバリマス!d( ̄◇ ̄)b