フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

退院

2006年02月26日 10時36分24秒 | 第13章 思愛編
「医者の不養生とは良く言いますがねぇ。Mr.フジエダほどムチャクチャをする医者はいませんね」

担当医は僕の胸に聴診器を当てて、今までの恨み事をツラツラと語った。

「お蔭で僕の腕が悪いからあなたの退院が延びていると専らの噂だ」
「すみません。で、今日は退院できそうですか?」
「……いいですよ。今度は『何でMr.フジエダを退院させてしまったんだ』と看護士達に恨み言を言われそうですがね」

僕は笑いながら謝辞を述べると、直ぐに私物をまとめて病室を飛び出した。

外は雨が銀色の細い糸を引きながら不規則に地面を打っていた。
しかし、僕の心は澄み渡る空のように晴れ晴れとしていた。
ただ唯一点、ハルナのことを除けば……

病院の玄関に入って来たタクシーを止め乗り込むと、いきなり声を掛けられた。

「おや?!あんたはあん時のニイサンじゃねーか?退院できたのかい?」

僕は先日醜態を演じてしまったタクシーの運転手を捕まえてしまったようで、この偶然に苦笑いしてしまった。

「あの時はすみません」
「いいってことよ?で、今日はどちらに行きなさるんで?」

僕が、キンケイドから聞いていた場所を告げると、
「ほぉ~。そこまでは結構メーターが上がりますぜ?お支払いは大丈夫ですかい?」
と、言いながらにやりと笑った。
「チップも含めて、大丈夫ですよ」と、僕が笑うと、
「そいつぁ、上客だ」と、彼は豪快に笑った。

目的地に着くまでの1時間半、僕は彼のマシンガントークに適当に相槌を打ちながら、窓の外を穏やかな気持ちで見つめていた。

「トオル君・・・・・・トオル君・・・・・・愛してる。私、・・・待ってたんだよ」
雨の音に紛れて、君のか細い声が僕の耳にこだまする。

僕も愛してる。
もう少しで帰れるんだ。
だから、待ってて欲しい……

一刻も早く日本に帰国したかったが、僕のことを愛していると、そして待っていると言ってくれたハルナの言葉をこの胸に抱きしめて、僕は今、自分がしなくてはならないことをしようと決心していた。



彼女の身に深刻な問題が起こっていたとは夢にも思わずに……


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