かずにぃは机を塞ぐようにその前に立ちはだかると、後ろ手にすぅっと写真を抜き取ったようだった。
「宇宙の写真?」
でも何となく違うような気がする・・・・・・。
かずにぃは手を後ろにしまったまま、小さな声で答えた。
「・・・・・・写真」
「え?」
良く聞こえなくて、彼の後ろを見ようと私は首を傾け、「見ちゃだめなもの?」と質問した。
「・・・・・・エコー写真」
「エコー写真って?」
私は初めて聞く言葉に首を傾げた。
暫くの間があった後、かずにぃはしぶしぶと写真を差し出した。
「お前とオレのアカンボの写真」
「・・・・・・この写真が?赤ちゃんの??」
「お前、この間、産まないとか言ってたし、動揺するといけないから・・・・・・」
そのテレビのざらざらとしたノイズの入ったような扇状の形をした白黒写真の中に、大きな丸い黒の輪郭が見えて、その中に2つの白い豆のようなものがあった。
「医師にはお前には見せないで欲しいって頼んでて・・・・・・」
これが・・・・・・赤ちゃん・・・・・・?
私は震える手で写真を手に取ると、もう片方の手でそっと自分のお腹に手を当てた。
「医師も見せない方がいいならって、お前に内緒でオレだけに写真を・・・・・・」
かずにぃは、目を伏せながら言い難そうに言葉を繋いだ。
「ね。この写真、どう見ればいいの?」
「え?!」
「頭とか、体とか、手とか??あるの?」
かずにぃは慌てて屈みこむと、私の方をちらちら見ながら白い二つの豆のようなものを指差して説明を始めた。
「え!?ああ・・・・・・。えぇーっと、こっちが頭とか言ってたよ。
で、こっちが胴体で・・・・・・」
私はぶわーっと涙が溢れてきた。
かずにぃは「ごめん。しまい忘れて・・・・・・」と謝りながら、慌てて私から写真を取り上げようとした。
「あっ!待って、違うの。まだ、見たい!」
「・・・・・・ホントに、大丈夫なのか?」
かずにぃは、再び私の手の中に赤ちゃんの写真を返してくれた。
写真をじっと見つめていると、涙と共に笑顔がこぼれた。
「私ね、赤ちゃんが死んじゃうって思った時、夢中で助けることしか考えられなかったの。
妊娠したって聞いた最初の時、凄く恐くて・・・・・・恐くて・・・・・・。
絶対に、産めないって思ってて。
でも、あの時、初めて気が付いたの」
かずにぃは不安そうな顔をしながら少し頭を傾けると、私の頬を伝う涙をそっと拭いて、「何を気付いたんだよ」と尋ねた。
「お腹の中に、本当に赤ちゃんがいて、必死で生きていたんだって・・・・・・。
私が死にたくないって思うのと同じ位・・・・・・、ううん、それ以上に、この子も必死で『生きたい』って叫んでるんだって思えて・・・・・・。
どんどん、体から赤ちゃんが消えていく気がして・・・・・・。
気付いたら夢中で叫んでたの。『赤ちゃんを助けて』って。
今でも、正直、産むって思うとプルプル震えちゃうのにね。不思議・・・・・・」
かずにぃは何も言わずそっと壊れ物を包み込むようにその広い胸に私を包み込んだ。
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「宇宙の写真?」
でも何となく違うような気がする・・・・・・。
かずにぃは手を後ろにしまったまま、小さな声で答えた。
「・・・・・・写真」
「え?」
良く聞こえなくて、彼の後ろを見ようと私は首を傾け、「見ちゃだめなもの?」と質問した。
「・・・・・・エコー写真」
「エコー写真って?」
私は初めて聞く言葉に首を傾げた。
暫くの間があった後、かずにぃはしぶしぶと写真を差し出した。
「お前とオレのアカンボの写真」
「・・・・・・この写真が?赤ちゃんの??」
「お前、この間、産まないとか言ってたし、動揺するといけないから・・・・・・」
そのテレビのざらざらとしたノイズの入ったような扇状の形をした白黒写真の中に、大きな丸い黒の輪郭が見えて、その中に2つの白い豆のようなものがあった。
「医師にはお前には見せないで欲しいって頼んでて・・・・・・」
これが・・・・・・赤ちゃん・・・・・・?
私は震える手で写真を手に取ると、もう片方の手でそっと自分のお腹に手を当てた。
「医師も見せない方がいいならって、お前に内緒でオレだけに写真を・・・・・・」
かずにぃは、目を伏せながら言い難そうに言葉を繋いだ。
「ね。この写真、どう見ればいいの?」
「え?!」
「頭とか、体とか、手とか??あるの?」
かずにぃは慌てて屈みこむと、私の方をちらちら見ながら白い二つの豆のようなものを指差して説明を始めた。
「え!?ああ・・・・・・。えぇーっと、こっちが頭とか言ってたよ。
で、こっちが胴体で・・・・・・」
私はぶわーっと涙が溢れてきた。
かずにぃは「ごめん。しまい忘れて・・・・・・」と謝りながら、慌てて私から写真を取り上げようとした。
「あっ!待って、違うの。まだ、見たい!」
「・・・・・・ホントに、大丈夫なのか?」
かずにぃは、再び私の手の中に赤ちゃんの写真を返してくれた。
写真をじっと見つめていると、涙と共に笑顔がこぼれた。
「私ね、赤ちゃんが死んじゃうって思った時、夢中で助けることしか考えられなかったの。
妊娠したって聞いた最初の時、凄く恐くて・・・・・・恐くて・・・・・・。
絶対に、産めないって思ってて。
でも、あの時、初めて気が付いたの」
かずにぃは不安そうな顔をしながら少し頭を傾けると、私の頬を伝う涙をそっと拭いて、「何を気付いたんだよ」と尋ねた。
「お腹の中に、本当に赤ちゃんがいて、必死で生きていたんだって・・・・・・。
私が死にたくないって思うのと同じ位・・・・・・、ううん、それ以上に、この子も必死で『生きたい』って叫んでるんだって思えて・・・・・・。
どんどん、体から赤ちゃんが消えていく気がして・・・・・・。
気付いたら夢中で叫んでたの。『赤ちゃんを助けて』って。
今でも、正直、産むって思うとプルプル震えちゃうのにね。不思議・・・・・・」
かずにぃは何も言わずそっと壊れ物を包み込むようにその広い胸に私を包み込んだ。
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