フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

メッセージ

2006年01月13日 20時28分04秒 | 第11章 飛翔編
ヒトの気配に後ろを振り向くと、かずにぃが今起きてきたようで、ソファに腰を下ろそうとしているところだった。
かずにぃは、ソファで足を組むと、そのまま体を深く沈めた。


私は動揺を隠し、背後を気にしながらも、次第にトオル君の言葉に全てを忘れていった。

「新生C&H社は、患者が本来受けるべきケアを受けられるよう一丸となって努力し、みなさんの信頼を回復して行きたいと思っています。そして・・・・・・」


多くのフラッシュやライトを浴びているトオル君は、私の知っている彼とは程遠いヒトだった。

彼は、ある時は真摯に、ある時は軽口で記者さん達のするどい質問を交わしながら、堂々と会見に臨んでいた。

トオル君は、一通り話し終わると周りの偉そうなおじ様たちに目配せをし、「ではこれで会見を・・・・・・」と、壇上から去ろうとした。


「ちょっとすみません。もうひとつ最後に質問させて下さい!」
日本人の記者が、メモを持ちながら挙手した。


「あなたは今まで、あらゆることを実現されて来られたようですが、今、一番望んでいることは何でしょうか?」


トオル君は、再びマイクの方に体を傾けると、
「そうですね・・・・・・。一刻も早くこの会見を終えたいです」
と答え、記者達をどっと湧かせた。

「そして・・・・・・この一連の問題を解決して・・・・・・」

彼は静かに微笑むと、遠い目を私に向け、日本語で語り掛けた。
「今すぐにでも、君に会いたいよ」

彼の突然の日本語に会場はしーんと静まり返った。


そして、彼が会場を去ると、記者達は一斉に、日本人記者を取り囲み、「彼は何と言っていたんだ?」「あの日本語の意味は?」と逆取材をしているようだった。

私は震える体を両手で抱きしめながら、零れ落ちそうになる涙を必死で堪えていた。



かずにぃはソファから立ち上がると、まるで何も見ていなかったかのように、膝をぽんと打つと、
「腹減った。ハルナ、なんか食いに行こう」
と、私に手を差し伸べた。




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