フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

忘れられないヒト

2006年01月16日 22時51分30秒 | 第11章 飛翔編
ママは興奮しているおばさんを宥めると、私に「また明日来るから」とだけ言って、おばさんの背中に手を添え、支えるように病室を後にした。


「今日は色々あったな」
かずにぃは赤く腫れた両頬を擦りながら、私を見つめると、お腹に手を這わせ、唇を当てた。
私がびくっと反応すると、「・・・何にもしねーよ」と愚痴った。

「おーい、ちびすけ。明日も来るからな。元気に育てよぉ」
「・・・・・・まだ、聞こえないよ」

私が呆れ顔で笑っていると、かずにぃは私の頬に両手をあてがいちょこんとキスをした。

「明日も来るから、安静にしてるよーに。暫くは寝たっきりだからな」と、釘を差して部屋を後にした。



かずにぃも言った通り、本当に今日は色々なことがあった。

私は、15歳と言う年齢を理由にかずにぃのプロポーズをウヤムヤにしてしまったけど、それだけが理由じゃないこと、かずにぃのことだからきっと気付いてる・・・・・・。

かずにぃの赤ちゃんがお腹の中にいるんだから、産むんだったら、かずにぃと結婚して一緒に育てるのが一番良いんだって、正しいんだって分かってる。


だけど・・・・・・
胸が張り裂けそうな位、私が愛している人は、
側にいて欲しいと喉が枯れるくらい叫び、欲している人は、
遠くアメリカで、私が彼を待っていることを信じてる・・・・・・。


私はトオル君を追ってあの歩道橋を走った。
全てを忘れて、彼を追って必死で走った。
だけど、この想いは彼に届かなかったんだ。


「もう、トオル君の側に行けない・・・・・・。行けなくなっちゃったよぉ・・・・・・」
お布団を被って泣いている私の胸元にトオル君から貰った星のペンダントヘッドが滑り落ちてきた。

ペンダントを見ながら、あの時のトオル君の言葉を思い出していた。



「それは天使の涙なんだって。
もし、君につらいことがあったら、その天使が君の代わりに涙を流して、そのつらい気持ちを浄化してくれるそうだよ」


彼から貰ったペンダントを握り締めながら私は泣きじゃくっていた。
もし、このペンダントにそんな不思議な力があるなら、トオル君を忘れさせて下さい。
トオル君と過ごした幸せで残酷な想い出達は、今の私にはつら過ぎる。

「お願い・・・・・・。私の全ての記憶から彼を消し去って・・・・・・」




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病室の訪問者

2006年01月16日 21時24分15秒 | 第11章 飛翔編
「え?!お前、誕生日ってオレと同じ9月じゃなかったっけ?」

私は首を横に振ると、人差し指、中指、薬指をそろ~りと3本立てた。

「3月だぁ~???なんだよ。それ?オレ、てっきり今までお前は9月だって思ってたぞ!!」
「えっとね。私がママに『かずにぃと一緒のお誕生日にしなきゃ嫌だ!!』って駄々こねたから、毎年、一緒の日に祝ってくれてたの」

かずにぃは後頭部に手を当てると、「・・・なんじゃそりゃ」と呆れた。

「しょーがないでしょ。まだ、3歳かそれ位の話だもん!
それから、毎年律儀にその時にお祝いしてくれるママもどうかと思うけど・・・・・・」

かずにぃは「オレ、15歳のガキに手出したのかよぉ~」とトホホな声を出していた。
「・・・16歳でもあんまり変わんないと思うんだけど・・・・・・」
私の意見にかずにぃは更に打ちのめされた様で「・・・だな」と力無く言った。



「あ。でもね、後日談があってね」
「・・・・・・まだ、なんかあんのかよ」
かずにぃは目を皿のようにしながら、「早く言えよ」と促した。

「私の5歳の誕生日をかずにぃと一緒にした時ね、私が先にロウソクの火を吹き消したのが気に食わないって、かずにぃってば、また火を点けて、唾を『ぶぶぶっ』って吹き飛ばしながら消したんだよ・・・・・・」

かずにぃは思い出したみたいで、「あ~、あれ。げっ。もしかして、根に持ってんのか」と小さな声で聞き返してきた。

「・・・・・・持ってる。周りのチョコレートの部分は、ぜーーーーーんぶかずにぃが食べて、私はスポンジしか食べられなかったんだもん」
私は恨めしそうにかずにぃを睨んだ。

すると、かずにぃはポン!と、かしわ手を打つと、

「おー!そういや、あん時以来、一緒に祝ってないなぁ!」

と、大声で笑った後、私の膨れっ面に恐縮したのか「ごめんなさい」と頭を垂れた。






その時、カツカツカツと廊下を足早に歩く複数の足音が聞こえ、私の病室の前で止ったかと思うと、ガラッと戸が開いた。

「ママ!!」
「オフクロ!?」

おばさんは脱兎の如く、部屋に入ると、「こぉんのぉ~!!バカ息子!!」と、
病院中に響き渡るような大声と共にかずにぃに掴み掛かった(母子だなぁ・・・・・・)。
そして、次の瞬間、かずにぃの胸倉を掴み、往復ビンタを連打した。


「よっちゃん、止めて!ハルナにも非があるんだから・・・・・・」
ママが、慌てておばさんの手にしがみ付き、動きを制した。

おばさんは肩でゼーハー、ゼーハー、息をしながら、私の手を取ると号泣した。

「ごめんなさいね!ハルナちゃん!うちのバカタレ息子がぁ!!」

そう言うと、唇を噛み締めながら私を強く抱きしめた。




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