フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

比翼の鳥

2006年01月25日 21時36分25秒 | 第11章 飛翔編
かずにぃは「ははっ」と子供っぽく笑った後で、急に優しい顔になり、
「もう苦しくないか?」と言って、私の顎に手を添えちょっと持ち上げると顔色を窺った。

私は小さく何度も頷くとかずにぃは安堵の溜息を吐いた。


「オレ、今は何の力も無いけど、せめて父親として今出来ることをしようと思うんだ」
私が、「何を?」と首を傾げると、彼は指を一本ずつ立てながらその出来ることを教えてくれた。
「まずは、勉強を頑張って一日も早く医者になる。まぁ、これは当然か・・・・・・」
人差し指を立てながら、かずにぃはニヒルな笑いを浮かべた。

「次に、さっきの禁煙・・・・・・」
私がへぇーって驚いた顔をすると、「大丈夫!止められるよ」と笑いながら私のほっぺをブニュって引っ張った。

・・・・・・痛いよ。ニンプは労わって下さい!
私はほっぺをさすりながら、上目遣いにかずにぃを睨んだ。

「それと・・・・・・、オレ、これには自信があるぞ!」
と、腕を組み、肩をそびやかせた。

「ハルナを愛すること!」
私はあまりにもかずにぃが恥かしげもなく嬉しそうに言うので、こっちの方が凄く照れてしまった。
「・・・・・・かずにぃ、恥かしいよ。分かったから、そんな、はっきり言わないで・・・・・・」
私はお布団を顔半分まで引っ張り上げて、真っ赤な顔を隠した。

「大事なことだよ・・・・・・。ハルナ。
オレさ、大学の受験勉強の時、白楽天の『長恨歌』を読んだんだ」

私は、かずにぃが何を言おうとしているのか聞きたくなり、そろそろと布団から顔を出した。
「その中にさ、『比翼の鳥』って言うのが出てくるんだけど、オレ、これにすんげー感動してさ・・・・・・」
「ヒヨクノトリ??」
「 雌鳥と雄鳥がそれぞれ目と翼を一つだけ持っていて、その二羽はいつもぴったりとくっついて飛ぶらしいんだ」
「え?!本当にそんな鳥がいるの?」
「いや、空想上の鳥らしいんだけどさ。つまり、それだけ、『夫婦仲が良い』ってことの譬えらしいんだ」
「へぇ~」
私の反応にかずにぃは苦い顔をして「ばぁ~か」と私の頭をまた小突きながら笑った。

「つまりはさ、オレはお前と、そんな夫婦になりたいって言ってるんだよ。
オレ達・・・、アカンボも含めて、全然半人前だけど、お前と一緒だったら、頑張って飛べるような気がするんだ」




私は、かずにぃの言葉に胸が熱くなった。
こんなに心に響く言葉を今まで誰からも貰ったことがなかったような気がする。


かずにぃは暖かい手で冷え切った私の手をすっぽりと包むと、優しくキスをした。

「・・・・・・もし、オレを許してくれるなら、そしてもし、愛してくれるなら、お前が16歳の誕生日を迎える3月にオレと結婚して欲しい・・・・・・」




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