フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

突然のプロポーズ

2006年01月15日 21時51分35秒 | 第11章 飛翔編
目覚めるとかずにぃが私の手を握っていた。
「かずにぃ・・・、どしてここに・・・・・・?」

かずにぃは肩を怒らせながら、深く息を吸い込むと、病院全体に響きそうな大声で私を叱り飛ばした。

「ばっかやろぉー!!一緒に行くっつっただろーが!!何、勝手に1人で行ってんだよ!!」
「だって・・・・・・」
「だって、じゃねー!!」
「悪いと思ったんだもん」
「お前1人の問題じゃない!アカンボはオレの子でもあるんだぞ!!!」

かずにぃは、「はぁーーーっ!!」と息を吐き出すと、「以上、言いたいこと終了」とパイプ椅子にどっかりと腰を下ろした。

「まぁ、オレが怒れた義理じゃないけどさ。99.9%オレが悪いんだし・・・・・・」

99.9%・・・・・・???

「残りの0.1%って?私??」
「そ!思わず抱きたくなっちまうくらい可愛いのがいけない!」

かずにぃは真っ赤になって横を向いた。

「どーゆー理屈なの?それって・・・」私はぷっと吹き出した後に、はっとなりお腹を押さえた。
「あ!赤ちゃん!!赤ちゃんは?」
「・・・・・・大丈夫だよ。ちゃんとまだお前のお腹ン中でぐっすり眠ってるよ」

私は溢れる涙を押さえきれず、「良かった。赤ちゃん、生きてるんだね」とお腹を擦りながら安堵した。
「お前、救急車の中でも、赤ちゃんを助けてくれって言ったんだってな」
「・・・・・・うん」
「産むのか?」
「・・・・・・ごめんね」
「謝んなよ。オレはぶちゃけ、うれしーし。産んでよ」

私はこくんと頷いた。
「やた!ホント!?うっわー」
かずにぃは私が今まで見てきた中で、最高に幸せそうな笑顔で飛び上がった。

「オレ、アカンボのオムツとか交換するし!」
「え?無理だよ。かずにぃ短気だもん」
「何言ってんだよ!オレは(オフクロの命令で)お前のオムツだって替えたことがあるんだぜ!」
私は真っ赤になりながら、
「いや!かずにぃ、それ時効だから・・・」
と、顔を手で覆った。



「あ、いけね!その前に・・・・・・」
かずにぃは私の手を取ると、急に真顔になって、コホンとひとつ咳をした。

「ハルナ、オレはまだ学生の身でさ、半人前だけど、オレの全てを賭けてお前達を守るから、だから、その、・・・・・・結婚して下さい!」

私は突然のプロポーズに、心臓が止りそうなくらい驚いた。

「返事は?ハルナ??」
「結婚・・・?」
「うん」
「今?すぐ?」
「そう、だよ?いやか??」
私はちょっと首を横に振った。
「じゃぁ、OK?」
私は強く首を横に振った。
「どっちなんだよ・・・・・・」
かずにぃはちょっとむくれ気味だった。

「今すぐ、結婚なんて、無理」
かずにぃは落胆の色を浮かべ、肩をがっくりと落とした。
「どうしても・・・・・・、ダメなのか?」

私は、項垂れたかずにぃの手をそっと握り締めると、しょうがないなぁと溜息を吐いて、
「・・・・・・だって、私、まだ15歳だもん・・・・・・」
と、返事をした。




人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS


薄れゆく意識の中で・・・

2006年01月15日 15時57分25秒 | 第11章 飛翔編
翌朝、私はある決意をして家を出た。

「かずにぃ、ごめんなさい。病院へは1人で行ってきます」
それだけ打つとメールを送信した。

産んで欲しいというかずにぃにこんなつらい手術に立ち会わせるわけには行かないと思った。

昨日の夜、少し前に中絶の手術をしたトモに電話をした。

「トモ、私もね、妊娠してたんだ」
トモは絶句した。
「ハルナ、大丈夫?このこと、トオル君は知ってるの?」
「ううん。知らない」
「何で!父親として当然知っておくべきじゃ・・・」
「違うの。トオル君じゃないの」
「え!?」

トモに今までの経緯を初めて話した。
彼女は泣きながら、電話口で「そんな・・・・・・」と言うと言葉を詰まらせた。

「明日、1人で行って手術してくる」
「は?!カズトさんは?」
「・・・教えないで行く」
「それって、カズトさん傷付くんじゃない?」
「かもしれない。けど・・・・・・かずにぃのつらい顔、見るの私もつらいし」
「・・・そっか。・・・一緒に行こうか?」
「ううん。1人で行くから・・・・・・。だから、いいよ」

私は、初めてお腹の赤ちゃんに話し掛けた。
「ごめんね。産んであげられなくて、ホントにごめんね」
ポロポロ溢れる涙を押さえながら、マフラーを首に巻いた。


駅の近くの歩道橋を上ろうとした時、反対側の道路に金髪の男の人が歩いているのが見えた。
その背格好にハッとなり、私は無我夢中で、歩道橋を駆け上がっていた。


「トオル君!!待って!トオル君!!!」

強い向かい風に煽られて、マフラーがするりと首から落ちて歩道橋の下を走る車の上に落ちていく。

「トオル君!!行かないで!!待って!!!トオル君!!!」

私の声にその男の人は振り向いた。
・・・違う。
トオル君じゃない・・・・・・
トオル君じゃない・・・・・・

私は掴んでいた歩道橋の手すりから手を離しバランスを失うと、そのまま歩道橋の下へと転がるように滑り落ちていた。

歩道を歩く人が、「大丈夫か?」「まぁ、あなた大丈夫?」
と、口々に言いながら辺りに人垣の層を作っていった。

立ち上がろうとして、下腹部に激痛が走った。
足を伝って温かな鮮血がポタポタと落ちてきた。

「キャーーーー!!!」

私は、その場に崩れ落ちると、夢中で叫んでいた。
「誰か!誰か!!お願い!救急車を呼んで下さい!!」

心配そうに近寄ってきたおばさんの腕を掴むと、私は薄れゆく意識の中で泣き叫んでいた。
「赤ちゃんがいるんです!お腹に赤ちゃんが!!
私の赤ちゃん、死んじゃう!誰か・・・誰か助けて下さい!!」




人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS


二人の決断

2006年01月15日 11時48分42秒 | 第11章 飛翔編
病院に着くと私は診察台に上がり、内診を受けていた。

あれほど嫌がっていた診察台にもすんなりと乗ることが出来たのは、かずにぃのお蔭かもしれない。
診察が終ってから私が行くまでの間、先生と向かい合って真剣に話していてくれた・・・・・・。

「お父さんですか?」
「はい」
「お子さんですが、今、11週と2日目。つまり妊娠3ヶ月に入っていますね」

服を着てカーテンを開けると私はかずにぃと並んで医師の前に座った。
「・・・・・・そして、残念ながら、もし、中絶を望まれるのでした母体への影響を考えて、12週前までをお奨めします。
中絶は22週までは出来ますが、母体への負担も徐々に大きくなりますし、中絶の方法も変わります。
13週目以降は人工的に流産と言う手段を・・・・・・」

私は呆然と医師の言葉をまるで他人事のように聞いていた。
かずにぃは「はい・・・」「そうですか・・・」と真剣な目で医師の話を聞いていた。

「妻と良く話し合ってみます」
「そうして下さい」

かずにぃに肩を抱かれて診察室を後にした。
かずにぃは何も言わない。
ただ黙って、受付前に整列する椅子のひとつに私を座らせた。

休日診療だったから、全ての電気は消され、唯一非常灯と自動販売機の灯りがぼんやりと辺りを照らしていた。
「何か飲むか?」
私は頷き、「コーヒー・・・」と言い掛けて、赤ちゃんに悪いかもと思い直し、「ミネラルウォーター」をお願いした。

かずにぃは私の隣りに腰を下ろすと、暫く黙って前を見つめてから聞きにくそうに尋ねた。

「ハルナはどうしたい」
「・・・産みたくない」
「そうか」
「・・・・・・かずにぃは?」
「産んで欲しいよ」
「・・・・・・」
「・・・・・・手術ン時は、オレも立ち会うよ。いいか?」
私は黙って頷いた。

医師は11週と2日目だと言っていた。
負担の少ない中絶を望むなら、後5日も猶予が無いことになる・・・・・・。

かずにぃはおもむろに立ち上がると、「行こうか」と微笑みながら、私の手を取り抱き上げた。

「え?!いいよ。ちゃんともう歩けるし」
「例え、後4、5日だとしてもさ、父親らしいことさせてくれよ。
ほんじゃ、奥さんアーンドベビー、行っても宜しいでしょうか?」

私は泣き笑いしながら、「・・・・・・うん」と答えた。



人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。
押して頂けると励みになります。
忍者TOOLS