フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

かずにぃの部屋

2006年01月22日 22時19分03秒 | 第11章 飛翔編
車のドアを開けると、かずにぃは私を部屋まで抱き抱えた。

「大丈夫か?」
「へ・・・っき」
「うそつけ!」

かずにぃは乱暴に部屋の戸を蹴り開けると、ふわりと私をベッドの上に横たえた。

そして、部屋の電気を点けるとタンスの中を探り始めた。
「服、服、服は、・・・・・・っと。ジャージでいいか?」
「ううん。これで、いい」
「そんなヒラヒラした服じゃ寛げねーだろ?!」

かずにぃはベッドの上に、ジャージと半袖のシャツをポンっと投げると、
「んじゃ、オレ、おばさんに電話入れるから、着替えとけよ」
と、服を指差しながら部屋を出た。

呼吸はさっきより大分良くなっていたけど、退院したばかりで無理をしたせいか疲れがどっと押し寄せてきた。

このジャージ、ダブダブだぁ・・・・・・。
それに煙草臭いよね

私はクンクン匂いを嗅ぎながら枕に顔を埋めると、ベッドからもほのかにかずにぃの煙草の匂いがした。


私が着替えてベッドで目を瞑っていると、かずにぃは再びドアを蹴り開けた。
「おーい、ミルク飲むか?あったまるぞ」
かずにぃの持っているトレイにはほかほかのホットミルクが乗っていた。


かずにぃはベッドに腰掛け、私を抱き起こすと、「熱はねぇ・・・か」と私のおでこに手を当てた。

「お前、そーいやケータイどうした?おばさんが繋がらねぇって怒ってたぞ」

私は手術に行こうとした日の朝、わざとケータイを家に置いていった。
かずにぃにメールを打ったその後、私はトオル君にもメールを打ち、そして電源を切った。

あれから2週間経つ。
トオル君からメールが入っているかもしれない・・・・・・。
だけど・・・・・・。


「その過換気、オレのせいだろ?」
かずにぃは私に背を向けると、手を組んで項垂れた。
私が首を横に振ると、「うそつけ」と優しい顔で弱々しく笑った。

「お前さ、何でアカンボ、産む気になったわけ?
つらそうなのに、なんで産む決心をしたんだよ」

それは・・・・・・

私が答えようとふと目を上げた時、ベッドの脇にあるかずにぃの机のデスクマットに、以前来た時には無かった奇妙な写真が挟んであることに気が付いた。

「かずにぃ、これは?」
「えっ?何がだよ?」
「あの写真みたいなの・・・・・・」

かずにぃは一瞬、「しまった!」と小さな声で呟くと顔を歪めた。





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すれ違う想い

2006年01月22日 12時43分49秒 | 第11章 飛翔編
私はかずにぃの運転する車に乗り込んでからもちょっぴり口を尖らせていた。
「人前でキスするなんて・・・・・・」
「だから、ごめんって」
笑いながら謝罪するかずにぃに、やっぱりムッとしてしまった。
さすがのかずにぃもやり過ぎたと反省したらしく、声のトーンを落として、私の顔を覗き込んだ。
「篤史がお前を狙ってたからさ、ちょっと、焦って。ごめんな?」
「もうっ!男の人達って、どうして平気で人前でキスなんて出来るの?かずにぃと言い、ト・・・・」
トオル君と、言い掛けて慌てて口を塞いだ。

急にかずにぃの顔からすっと無邪気な笑みが消えていた。

「この間は悪かったよ。お前が泣きながらオレにしがみつくから、つい・・・・・・」

私はどきっとして息を呑んだ。
「オレを求めるはず、ないのにな。・・・・・・そんなにあいつ、良かった?」
「え?!」

私はかずにぃの質問を理解しかねていた。
「あいつが相手だったら、お前あんなに嬉しそうに抱かれるんだよな?」

私は、思わずかずにぃの頬を打っていた。
「してない!・・・・・・かずにぃとのことが恐くて、私・・・・・・」

まずいと言う予感が脳裏をかすめた。
喉がヒューヒューと鳴り始め、体の中に嵐が宿り始めた。

「へぇ・・・・・・。紳士的なトオル君は、嫌がるお前を無理矢理やっちまった俺のような鬼畜とは違うってか?」
「ち、が・・・う。かずにぃ、ごめっ。車、止めて」

かずにぃは私の異変に気付くと、「おい!?どうした」と声を掛け、息が苦しそうな私と前方を代わる代わる見ながら車を路肩に寄せた。

「何だよ、どうしたんだよ」
「だい、じょぶ。ただのカコキュー」
「大丈夫じゃないだろ!」

かずにぃの問いには答えず、この間の要領で呼吸を整えようと頑張った。
「紙袋・・・・・・」
それだけ聞くと、かずにぃは急いでバッグや車の中を探り始めた。
「くっそ!車出すぞ。頑張れるか?」
私は頷きながらも、かずにぃの肩に手を置いた。
「びょーいん、・・・い・・・かない」
「何言ってんだよ!苦しそうじゃねーか」
「ガンバル」
「病院に戻るぞ」
私は強く頭を振った。

「ガンバル。だから・・・・・・」
「分かったよ。・・・・・・とりあえずマンションに戻るぞ。いいな?」
かずにぃは急いでハンドルを切ると来た道を戻り始めた。




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カ、ノ、ジョ

2006年01月22日 07時32分01秒 | 第11章 飛翔編
「今日、退院のお前が何でこんなとこに・・・・・・」
かずにぃはぼさぼさ頭を撫で付けながら慌てて立ち上がった。
「う・・・・・・ん」
私は彼のそんな言葉なんかお構いなしに、可愛い絵柄の動物の折り紙や、子供達が書いたと思しき画用紙の絵が飾られた小さな教室の中をキョロキョロと見回した。

「この絵とか、もしかしてかずにぃが描いたの?」
かずにぃは真っ赤な顔して、恥ずかしそうに目をそよがせた。
「え?!・・・ああ」
「やっぱり」
「何が、やっぱり、だよ!」
「だって、下手だもん。相変わらず、絵が」
私がクスクス笑うと、「うせっ!」と真っ赤になりながら私を小突いた。

「センセー!だぁれー?この人ぉ??」
子供達がわらわらと私達を囲み始めた。
「えっとぉ、私は、『そのだはるな』と言いまして・・・」

そう言えば、かずにぃにとって私ってなんだっけ・・・・・・
困ってかずにぃの方をチラッと見た。

幼なじみ?
トモダチ?
イモウト?
コイビト?
婚約者??

何って言ったら良いのか答えあぐねていると、いきなり中学生くらいの男の子が私の手を握り締めた。
「あの。僕、『とくやまあつし』って言います。
おねーさん、キレーですね~」


すると、すかさずかずにぃが私達の間に割って入り、彼の頭をぺんっと叩いた。
「篤史!何、人のカノジョ、ナンパしてんだよ!!」
「かずにぃ、そんな、子供相手にむきにならなくても・・・・・・」
「子供じゃねぇ!男だよ!!」
かずにぃと篤史君はむきになって私に反論した。


「かっ、のっ、じょっ♪」
「かっ、のっ、じょっ♪」

子供達は一斉にカノジョコールを始めたものだから、かずにぃはますます真っ赤になり、私の手を引いて戸口まで連れて行った。

「後、30分もしたら終わるから、ここを出て右側の待合室で待ってて」
「・・・・・・ごめんなさい。突然来ちゃって」
「そんなのはいいからさ。具合が悪くなったら、そこにもナースコールが付いてるから」
「うん」

私が出て行こうとすると、「無理すんなよ」と腕をぐいっと引き寄せいきなりキスをした。

子供達は、「ぎゃー!!」「おおっ!!」「すっげぇ!!」と目をまん丸とさせながら床の上をのたうち始めた。

「いーだろぉー。悔しかったらお前達も、早く元気におおっっきくなってカノジョゲットしろよ~」
と、かずにぃはあっかんべーをした。



まるっきし、子供達と同レベル・・・・・・。

私は赤くなる頬を抑えながら、初めて見る無邪気なかずにぃの姿にドキドキしながら待合室まで小走りで逃げた。




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