フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

カズト先生

2006年01月21日 00時13分30秒 | 第11章 飛翔編
タクシーから降りる時にお金を払おうとしたら、リョーコさんは指を立てて、「いらないよ」と私の支払いを固辞した。
「かずぼんの出世払いに付けとくから気にしないで」とウィンクすると、彼女は「時間が無い!」と研究所へと走って行った。

「関係者と子供達の両親以外は立ち入り禁止だから、密かに入ってね」
と言う彼女のアドバイスのもと、私はこそこそと小児病棟に忍び込んだ。

病棟の突き当たりから、オルガンの音が聞こえたので、私がその音のする方へ忍び足で近寄って行くと、子供達の元気な声が聞こえてきた。

「あ~~~!!だめジャン!カズト先生、また音外れたよぉ~!」
(カズト先生??)
私は窓からそろ~りと顔を出し、中を覗いた。
教室というよりは小さな小部屋でかずにぃは7人くらいの子どもたちに囲まれてオルガンを弾いていた。
・・・・・・かずにぃ、ピアノとかオルガンとか弾けないはずだけど・・・。


「うっせぇ!これぐらい、お前達の歌唱力でカバーしろよ!」
「サイアク!逆切れかよ」
子供達のブーイングに更に焦ったかずにぃはまた音を外した。

「やっぱさ。新曲は難しいよな・・・・・・」
と、かずにぃは照れながら必死で鍵盤を叩いていた。
「『どんぐりころころ』のどこが新曲だよ!」
子供達の絶妙な突っ込みに私は吹き出してしまった。


「下手っぴカズト先生をやっちまえ~!」
かずにぃの下手なオルガンはたちまち子供達にその蓋を閉じられてしまい、急遽、体育の時間に変更になっていた。
子供達がかずにぃの腕にぶら下ったり、背中によじ登ったりして、たちまちだんご状態になって、かずにぃは埋もれてしまった。

ところが、そのだんごの中から小さな男の子がトコトコ出てきて、オルガンにちょこんと座って、蓋を開けようとした。
でも、力が足りないのか、鍵盤と蓋の隙間に片方の手を滑り込ませてしまったまま、もう片方の震える手で蓋を持ち上げようとしていた。


あっ!!危ない!このままじゃ・・・・・・指挟んじゃう!!

叫びそうになるのと同時に私は駆け出し、部屋の中に飛び込むと、オルガンの蓋を支えていた。
「ふー。危なかった」

子供達のだんごはほつれて、その視線は一気に私に注がれた。

「ハルナ!どうして、お前、ここに・・・・・・」
だんごの下からクシャクシャ髪のかずにぃがどんぐりのような目をして這い出してきた。




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