フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

かずにぃの謝罪

2006年01月08日 23時29分55秒 | 第11章 飛翔編
トオル君からメールが来た。

「ハルナ、ごめん。今、アメリカです。
週末には間に合わないけど、クリスマスまでには帰ります」

それから1週間後再びメールが来た。
「必ず帰るから、待ってて」

・・・2週間・・・・・・。
「今は何も言えない。だけど、信じて待ってて」

そして、彼から来るメールの最後には必ずこの言葉が添えてあった。
「ハルナに会いたいよ。今すぐにでも」

だけど彼は帰って来なかった・・・・・・。


不安がひたひたと足を忍ばせ、心の隙間に忍び寄ってくる。
私はただベッドに突っ伏して、孤独な中、独りで決断をしなくてはならない状況に追い込まれていた。


不意に玄関のチャイムが鳴り、パタパタとママが廊下を走る音がした。


それからママはすぐさま2階に上がって来ると、私の部屋の戸をノックした。

「ハルナ!かず君よ!!」
「・・・・・・具合が悪いから出れないって言って!」
私は体を布団の中で体を丸めながら「会いたくない」と呟いた。

「具合が悪いんだって?」
かずにぃはツカツカと私の部屋へ入ってきた。
「この子ったら、殆どご飯も食べないの。
ここのところずっと部屋に篭りっきりなのよ・・・・・」
「おばさん、すまないけど、二人きりにしてくれないかな」

かずにぃのこの言葉を聞いて私は慌ててベッドから飛び起きた。
「だ、大丈夫!大丈夫だから、二人とも心配しないで!」

今、私にはかずにぃと二人きりになる勇気が無かった。
私はあの日から、何かと理由をつけてはかずにぃを避けてきた・・・・・・。

それが、突然二人きりになんてなれない。

ふらつく体を無理に起こすと、「直ぐに下に下りるから」と二人を部屋から出し、普段着に着替えた。

階段を下りる途中で、ママとかずにぃの話し声がリビングから聞こえてきた。

ママは私が下りてきたことに気付くと、
「ハルナが来たいって去年言ってたから、大奮発して買っちゃった!」
と、リビングの白い壁に打った杭にぶら下げてある水色の晴れ着の前に私を立たせた。

「かず君が初詣に連れてって下さるそうよ」
その言葉に私はかずにぃの方を向き、はっとした。
2階では意識して、かずにぃの方を見ようとしなかったから気付かなかったけど・・・・・・。

痩せた。凄く・・・・・・痩せた。


かずにぃは、深々と頭を下げると、そのまま片膝を折り、それから両膝をついたかと思うと土下座をするような姿勢を取った。
「ハルナ。新年明けましておめでとう。
それと・・・・・・、ごめん!」

思いも掛けなかった突然のかずにぃの言葉に、今まで頑張って堰き止めてきた涙が止め処も無く溢れてきた。



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彼女の正体

2006年01月08日 11時03分57秒 | 第10章 恋愛分岐編
「トール!こっち!!」

声のする方を振り向いた。

「グレイス!!」
「乗って!早く!!」

猛ダッシュで彼女の運転するバイクに飛び乗ると、彼女はフルスピードでバイクを飛ばした。



「閃光弾、役立ったみたいねー!!」
彼女はさっきキスした時に僕のコートに忍ばせた閃光弾について言及した。
「あんなもの持っているなんて、君は一体・・・・・・」

僕の疑問に答えず、彼女は、「かばん、開けるわよ!!」と叫んだ。
なだらかな丘陵に辿り着くと、軽く弧を描きながらバイクを止め、「あそこにケッチャムとキンケイドがいるわ」
と、木々の隙間から辛うじて見えるリムジンを指差した。

「君は、一体、誰だ?」
僕はかばんに詰められた手榴弾や銃を見てその正体に疑問を持った。

「ハザウェイの妹というのは、ウソなんだろう?」

彼女はくすくすと笑うと、そっと僕の耳に唇を寄せながら「エフ、ビー、アイ」と囁いた。


「さ。彼らを助けるわよ。ここで待っててね」

彼女は僕を車の至近距離にいるように指示し、プランを話すと、再び1人でバイクに跨り車の前に踊り出た。

そして、バイクごと横滑りに横転し、「キャー!」と叫んだ。
バイクはそのまま火花を散らしながら路上を滑り、木にぶつかって止ると大破した。
車に乗っていた男二人が車外へ飛び出し、「大丈夫か」と彼女に駆け寄った。

「イヤだわ・・・・・・。怪我しちゃったみたい・・・・・・」
彼女は魅惑的な微笑をたたえながら、ゆっくりとライダースーツのジッパーを下ろし始めた。
豊かな胸の谷間に男達が唾を飲み込んだ頃、「あ、あれは!」と彼女は叫んで後方を指差した。

僕は先程の閃光弾を男達に向かって投げつけるとリムジンに飛び乗った。



グレイスもリムジンに乗り込んだ頃、リンカーン記念公園の方から銃声が幾つも鳴り響き始めた。
「応援が間に合ったようね」
彼女は金髪を掻き揚げながら微笑むと、親指を立て「Good job! トール」と笑った。


「・・・・・・胸、早くしまったら?」
僕は彼女の肌蹴た胸が気になり、目のやり場に困ってしまっていた。
一瞬、きょとんとしたグレイスは、やがてからかうように、更にジッパーを下ろし始めた。

「もっと、見てもいいわよ~♪」
「運転を誤って昇天しますよ。あの世の道連れになりたくなかったら、仕舞って下さい」


彼女は横目で僕の顔を見つめると、くすくすと笑いながらジッパーを上げた。


この女性を乗せてAMH社まで行かなくてはならないのかと思うと、

やれやれ・・・・・・

僕は自分の身に起きた不運を嘆いていた。




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