フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

心に触れて

2006年01月10日 21時04分37秒 | 第11章 飛翔編
目の前が真っ暗になりながら、壁を伝い、戸を開けた。

「ハルナ!ハルナ!!」
かずにぃが抱き抱えるように私をベッドまで運んだ。
かずにぃは何も聞かない・・・・・・。
ただ、ずっと黙って手を握ってくれていた。
真っ暗闇の中からぼんやりとかずにぃの心配そうな顔が現われて、私は少しだけ救われたような気がした。

「赤ちゃん、・・・・・・いた。・・・多分」
「・・・・・・ハルナは、どうしたい?」
「分かんない」
「産む、のか?」
「・・・怖い。分かんない」
「オレの気持ち言っていいか?」
私は何も言わずただ焦点の合わない目線を漂わせていた。

「もし本当にいるんなら、産んで欲しいんだ。・・・・・・堕ろさないで欲しい」
私は頭を垂れながら話すかずにぃに、少し残酷な質問をした。
「・・・トオル君の子かもしれないよ?」
「それはあり得ないだろ?」
「どうして、そう断言できるの!?」

ベッドから体を起こすとかずにぃを睨みながら私は詰問した。

「もし、ヤツの子供だったら、少なくともお前はそんな絶望的な顔、しないだろ?
戸惑いこそすれ、そんな顔、しないはずだ・・・・・・」


不意にトオル君の顔が浮かんで切なくなった。

彼のはにかんだような笑顔が好きだった。
「ハルナ」って躊躇いがちに初めて名前を呼んでくれた時、嬉しくて嫌がる彼の手を引いてスキップした。
春も、夏も、秋も、冬も、彼と一緒に手を繋いでスキップしていく明日を夢見てた。



トオル君の顔の輪郭が涙で壊れると、心配そうな顔したかずにぃの顔に重なった。

「ね。あの時、どうして、・・・・・・その、着けなかったか聞いていい?
かずにぃ知ってて、どうして・・・・・・」
「言えない」
「ど・・・して・・・・・・。私、嫌だって、何度も何度も止めてってお願いしたのに・・・・・・。
それでも、どうして抱けちゃうの?」
「お前だから」
「答えになってないよ」
私は枕を掴むと何度も、何度もかずにぃを叩いた。

かずにぃは、ただ黙ってそれを受け入れた。
「なんで、何も話してくれないのぉ!!」

わたしはかずにぃの胸に拳を振り上げた。

「責めてもいい・・・・・・。憎んでもいいから・・・・・・。
それでもどんな卑怯な手段を使ってもオレの側にいて欲しかったんだ・・・・・・」

私は、ずっとかずにぃは強いヒトだと思っていた。
自信満々で、迷いの無い余裕のある大人の男のヒトだと・・・・・・。

肩を震わせ、片手で顔を覆い隠すかずにぃの指の間を一筋の涙が伝った。
私は生まれて初めて見るかずにぃにひどく動揺していた。



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