フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

アイデンティティ

2005年11月23日 11時09分48秒 | 第8章 恋愛鼓動編
「そんな・・・・・・」
僕はぐらぐらと足元が揺らぐ、そんな感じがしてその場に跪いてしまった。
「僕はてっきりこの女性が僕の本当の母親かと・・・」
「・・・そうだな。オレも最初はそう思ったよ。だが、アリシアは死んでたんだ。
君が生まれるずっと以前に」

僕はふともう一つの考えが浮かんだ。
「ジョージは?!ジョージが僕の父親と言うことは?」
すると、キンケイドは頭を振って、否定した。
「ヤツは独身だったし、それにヤツはやはりアリシアを愛していた。
アリシア以外の女性と、とは考えられないな。それはオレも一緒かもな」

では僕は誰なんだ?
少なくとも両親の子供ではないことは確かだ。
生粋の日本人の二人から僕のような容貌の子供が生まれることは有り得ないことだ。
両親が僕の親であることには変わりない。
二人を心から尊敬し、愛している。
だけど、僕は僕自身が何者なのかが知りたかった。

「そう、がっかりしなさんな」
キンケイドはそう言うと僕の肩をぽんと軽く叩き、
「お前が誰であろうとお前はお前だ。しゃんと生きていけよ。って、オレもか」
ははっと力無く笑った。

僕はキンケイドにジョージと出会った経緯を話した。
彼が僕の護衛をしていたこと、そして、僕が拉致されそうになった場合は射殺する命令が出ていたこと・・・。

「ヤツには絶対お前は殺せなかったんだろう。それ位、お前はアリシアに良く似てる。
・・・ヤツのクライアントが誰だったのかはオレが調べるよ」
「すみません。お願いします」
「・・・ホント、良く似てるなぁ。オレはゲイじゃないが、宗旨変えしようかな~♪」
キンケイドは、そう言うと僕にキスをしようとしてきた。

「わっ!止めろ!!変態おやじ!!」
「ちょっと位、いいじゃねーか。けち。
ホント、黙ってりゃ、アリシアそっくりなのになぁ」
キンケイドは至極残念そうだった。
そして、「冗談。冗談」と一笑に付した。

・・・本当に、冗談だろうなぁ?!
・・・僕は危うく男にキスされるところだった。


にほんブログ村 ポータルブログへ

にほんブログ村 小説ポエムブログへ
人気blogランキングへ

忍者TOOLS

疑問

2005年11月23日 02時04分58秒 | 第8章 恋愛鼓動編
「トール。本当にお前は見れば見るほどアリシアに本当に良く似ている・・・」
キンケイドは僕の目を通してその先にいるアリシアに向かって話しているようだった。
「だから、初めてお前を見た時、オレは心臓が止るかと思った。
そして、次の瞬間、思ったんだ。つまり・・・」
キンケイドのこの言葉を聞いて、今まで抱いていた疑問を僕は口に出そうとしていた。

僕は、アリシアの・・・・・。


キンケイドは僕から目を逸らすと、小枝をパキパキと神経質に音を立てて折りながら話を続けた。
「馬鹿だな・・・。そんなはずはないのに」
キンケイドは手の甲を口に当て、くっくっと笑いを噛み殺した。
「そんなはずはない。ありえない」

僕はキンケイドの持って回った話し方に段々苛立ちを覚えていた。

「あの日の喧嘩を最後にオレ達は会うことはなかった。
いや、正確には1度だけ会ったんだ・・・ったな」
「なぜ会わなかったんですか?」
「オレは、NYに家族共々引っ越しちまったし、ジョージはその後、軍隊に入ったと聞いた。
アリシアは・・・・その後どうしたのか、実は詳しくは知らないんだ」
「知らない・・・って、じゃぁ、アリシアが今どうしているか知らないんですね」
僕は、このアリシアと言う女性に関心を抱かずにはいられなかった。

「いや、知ってるよ」
キンケイドは僕の方を向きながら答えた。
「どこにいるんですか?」
「・・・・・・死んだよ」
「え?!」
「15年前にな。お前が生まれる3、4年も前の話さ。
オレとジョージはその時、最後に会ったんだ。アリシアの葬式でな」


にほんブログ村 ポータルブログへ

にほんブログ村 小説ポエムブログへ
人気blogランキングへ

忍者TOOLS