フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

逃走

2005年11月17日 21時51分18秒 | 第8章 恋愛鼓動編
僕達は急いで食堂を抜け、厨房へと向かった。
銃声と悲鳴があちこちから聞こえてきた。
数回の轟音と共に、異臭が辺りを漂い始めた。

「あいつら、爆弾を満載した車ごと突っ込みやがった」
銃を構えながらMr.アンダーソンは僕を厨房へと誘導した。

彼は、太腿から大量に出血をしていた。
動脈の損傷を疑った僕は直ぐに止血をした。
出来るだけ早く手当てが必要だった。
僕は足を引き摺る彼と共に厨房を抜けようとした。


その時、背後からパンパンパンと乾いた銃独特の破裂音がした。

彼は僕をテーブルの下に突き飛ばすと、同時に彼自身も飛び込んできた。
「追いつかれちまったか・・・」
「彼らは一体・・・」
「この実験のモルモットになるはずだった奴らだよ」
と、だけ答えると、「しっ!」と指を立てた。

Mr.アンダーソンは、扉から忍び寄る足音を聞きながら、「1・・・2・・・3・・・3人か」と相手の人数を数え始めた。
そして、シンクの側にあるワゴンを引き寄せると、「よし、とオレが合図したら、このワゴンに積んである皿をあの蛍光灯目掛けて出来るだけ沢山投げるんだ」と、僕に指示した。

じりじりと敵はこちらに向かって距離を詰めてきた。
「よし!」と言う合図を聞いて僕は一斉に蛍光灯目掛けて皿を投げた。

皿の破片がシャワーのように彼らの上に降り掛かり、動揺した彼らは大声を上げながら頭や目を覆い始めた。
その隙にMr.アンダーソンは銃で彼らの頭を射抜いた。

「何も殺さなくても・・・」と言い掛けて、Mr.アンダーソンの形相に言葉を呑んだ。
彼は太腿だけでなく肩にも銃弾を受けていた。
彼の顔に血の気がなかった。

「大丈夫?!Mr.アンダーソン!!」
僕は肩の血を止血しようとした。
彼は、僕の手を制すと、「ここまでだ。トール」と、視線の定まらない目を漂わせながら頭を横に振った。
「もう・・・、守れない」そう言うと銃口を僕の方へ向けた。



にほんブログ村 ポータルブログへ

にほんブログ村 小説ポエムブログへ
人気blogランキングへ

忍者TOOLS

変容

2005年11月17日 19時05分13秒 | 第8章 恋愛鼓動編
僕は最新の設備と優秀なスタッフに囲まれて研究に勤しんだ。
何のへんてつもない自然界にありふれたバクテリアの培養と生態の研究―――。

彼らは一体何をしようとしているのか・・・。
当時の僕には検討もつかなかったんだ。
だけど、研究の過程でそのバクテリアは、ある条件が整うと、人類を恐怖へと陥れる禍禍しいものにその姿を変容させるモノであることが分かった。

僕はこの事実に脅威した。

日常に潜む何でもないありふれたバクテリアが人間を襲う・・・。

この研究は続けてはいけない。
それを提携先の社長に告げるために僕は走った。




だけど、それは既に遅すぎたんだ。
大きな破裂音と共に研究所の全てのガラスが吹き飛んだ。
動揺し、出口を求めて走り回る研究医達の間を縫って僕は音のする方へ走った。

研究所内は、怪我をした者、恐らく死んだと思われる者で溢れかえっていた。
阿鼻叫喚の地獄絵図がリアルなものとなって眼前に現れ、僕の足を捕らえ、動けなくしてしまった。

「トール!無事か」
「Mr.アンダーソン、これは一体・・・」

Mr.アンダーソンは風向きを読むと、
「階下の食堂へ!」と叫んだ。

「Mr.アンダーソン、あの人も連れて行って!」
僕は床でまだ息のある研修医を指さした。

だけど、彼は、「お前を守るだけで精一杯だ」とその願いを一蹴し、僕の襟ぐりをむんずと掴むとそのまま廊下の端まで、床を転がるボーリングのボールのように僕を放り投げた。



にほんブログ村 ポータルブログへ

にほんブログ村 小説ポエムブログへ
人気blogランキングへ

忍者TOOLS