フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

地獄に落ちて

2005年11月08日 22時39分04秒 | 第7章 恋愛後朝編~ハルナの章~
学校まで車で送ると言うかずにぃの申し出を断わって、私は駅に向かった。
いつも通り、トオル君は私の乗る駅の次の駅から乗ってくるはず。
・・・彼に真実を告げよう。
そして、お別れ・・・しよう。
できるよね、ハルナ。
それだけのことをしてしまったんだもの。
かずにぃも愛してる・・・。
だけど、トオル君も同じ位愛してる・・・。
そんなことが許されることじゃないことくらい、もう・・・分かるよね。
私は何度も、そう自分に言い聞かせた。

・・・なのに、次第にトオル君が乗る駅が近づくにつれて、胸が締め付けられそうになってくる・・・・・・。
私の心臓はどんどん早くなっていき、喉がヒューヒューと鳴り、息が苦しくなってきた。
隣りの駅に電車が着くと、見慣れたスポーツバッグを肩に掛けたトオル君が乗ってきた。

「おはよう」
彼はそう私に声を掛けると、いつものように私の腰に手を回し体を支えてくれた。
だけど、そうしている間にも呼吸は更に苦しくなって、次第に喉がかっとなり、肩で呼吸をするようになってしまっていた。
背中が、喉が熱くなっていく。

「どうした!ハルナ!!」
異変に気付いたトオル君がとても心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「まさか・・・過換気症候群か」
そう言うと、次の駅で私を小脇に抱え、電車から降ろした。
そして、私を駅のベンチに横たえ、売店から袋を貰うと、口にあてがった。

「ゆっくり、呼吸するんだ。そう、意識して長く息を吐いて・・・」
トオル君はその間ずっと背中を撫でてくれていた。

・・・・・・私は、この優しいトオル君を裏切ったんだ・・・。
このまま、死んじゃっても当然なんだ・・・。
謝っても謝りきれない。
むしろ、このまま、死んじゃいたい。

そう考え始めると、呼吸がコントロール出来なくなってきた。
「ハルナ!落ち着くんだ!!」

トオル君の叫ぶ声が遠く頭の中で響いてくる。

彼に真実を告げる位なら、・・・死んでこのまま地獄に落ちてもいい・・・・・・。
そう思いながら、私は暗闇の中に意識を失っていった。


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食卓

2005年11月08日 21時04分11秒 | 第7章 恋愛後朝編~ハルナの章~
かずにぃに抱かれている間、私は何度も泣いた。
トオル君への想いを捨てきれない私に、かずにぃはただ何も言わず、肌を絡め、彼自身を刻んでいった。
肌を重ねる度に、トオル君に対する罪がどんどん澱のように重なっていく・・・。

意識が朦朧とし始めた頃、長い夜が明け、光が部屋を満たしていった。

私は、鉛のように重くなった体をベッドから起こし、
「学校に行かなくちゃ・・・」
と、制服に手を伸ばした。

「大丈夫か?ハルナ」
かずにぃは手の先にある制服を手繰り寄せて、私の胸元に置いた。

「つい、嬉しくて、無理をさせた・・・。ごめんな」
かずにぃは私の胸を弄りながら首筋にキスした。


私たちが階下へ降り、リビングへ向かうと、ママが既に朝ご飯を作っているところだった。

「おはよう、ハルナ。・・・・・・かず君もいるんでしょ。呼んでいらっしゃい」
ママは私の方を振り向かず、包丁で野菜を刻みながら言った。

「おはようございます。おばさん」
かずにぃは私の肩に両手を置いて言った。
「昨晩は勝手なことして、すみません。
・・・だけど、オレ、本気ですから・・・。
ハルナのこと・・・」

ママは野菜を刻むのを止め、こちらを振り向くと、
「あなたがいい加減な気持ちではないことは分かっているわ。
だけど、これだけは約束して頂戴。
ちゃんと、ハルナを大切にするって・・・。
高校を卒業出来なくなるようなことはしないでね」

それだけ言うと、「さ!ご飯、出来ているから食べてって」と、かずにぃと私を無理矢理席に着かせた。

「ママ・・・」
私はそれだけ言うと涙がこぼれて止まらなかった。



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満ち足りて

2005年11月08日 02時12分55秒 | 第6章 恋愛聖夜編~ハルナの章~
新聞配達のバイクの音で、私ははっと目を覚ました。
私の横では、静かな寝息を立ててかずにぃが眠っていた。

改めて、何も着ていないことに気付いて慌ててベッドの横に落ちている服を掻き集めた。
下腹部に鈍い痛みが走り、一瞬何が起こったのか理解するまでに時間が掛かった。
私は自分の体に起きた変化に動揺していた。

以前とは明らかに違う痛み・・・。
そして、私の体の中にはかずにぃの生々しいまでの感触が刻まれ、彼自身がまだ私の中にいるような錯覚さえ起こしていた。

「おはよう・・・」
不意にかずにぃは私の腕を背後から引っ張ると、その胸に抱き寄せた。
「お、起きてたの・・・!?」
「今起きた」
かずにぃは、私の髪を撫でながらキスした。
「生まれて初めてだよ」
「え?何が??」
「こんなに幸せなのは・・・」
私は、昨日の夜を思い出して、恥ずかしくて顔が真っ赤になって行くのが分かった。

かずにぃは、そんな私の顔を見て、笑いをかみ殺しながら、とても満ち足りた微笑を浮かべると、
「可愛かったよ」と、もう一度、抱き寄せた。


「・・・ダメだ」
「え?!何が??」
「また、抱きたくなってきた」
かずにぃは上体を起こすと、小学生の頃のようなあどけない笑顔で私の瞳を覗き込んだ。

「・・・ダメ?」
「・・・ダメ!」
「・・・したいな」
「・・・絶対、ダメ!」
「・・・良くなかった?」
「・・・そんなこと、聞かないで・・・」
そう答えると同時に唇は塞がれ、再びかずにぃは体を重ねてきた。



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