フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

アリシア

2005年11月22日 22時06分28秒 | 第8章 恋愛鼓動編
「アリシアは俺たちの天使だった・・・」
キンケイドはまるで昨日のことのようだと穏やかな目で語り始めた。


オレとアリシアは幼なじみだった。
美しく優しいアリシア・・・
彼女と幼なじみと言うだけで話し掛けて貰えるオレは世界一幸せだった。

ジョージはオレと同級生でアリシアの兄だった。
取り分け仲のいい美しい兄妹――――
二人が並んで歩くと皆が良く振り返ったものだった。
無口なジョージも天使のようなアリシアが話し掛けるとそれは嬉しそうに笑ったんだ。



あれはアリシアが15歳の誕生日の前日だったと思う。
あの日、オレ達3人はいつものように川へジョージお得意のフライフィッシングを見に行った。
ジョージの釣りを見て、アリシアが手を叩いて喜び、オレはそんな彼女に見惚れていた。
だけど、途中、雨が降ってオレ達は急いで川を離れ、山を降りた。
近くに民家があったので、そこで雨宿りをさせて欲しいとオレ達は頼んだ。

オレは彼女に温かいスープを飲ませてあげたいと思い、おばさんに頼んで作ってもらったスープを台所から運んでくるところだった。
部屋の戸を開け、オレはその光景に思わず叫びスープ皿を落としてしまっていた。

ジョージがアリシアにキスをしているのを見てしまったからだ・・・。
彼らは兄妹ではなかったのか?
いや、兄妹のはずだ・・・。
なぜなら、彼らはとても良く似ていたのだから・・・。

オレはアリシアを愛し始めていた・・・。
女神や天使を敬うようにではなく、1人の女性として・・・。
だから、オレは彼女がジョージに汚されているようで我慢が出来なかった。

彼女の胸の膨らみを弄るジョージの喜びに満ちた顔を見た時、オレはもう耐え切れず、ヤツに掴み掛かっていたんだ。

アリシアは、泣きながらオレ達の中に割って入り喧嘩を止めようとした。
オレが不用意に放った拳がアリシアの顔に当たった時、オレは初めて自分がしたことに気付いた。

アリシアはそんなオレを責めるでもなく、ただ、黙って抱きしめてオレの気持ちを鎮めようとしていた。
そんなアリシアの天使のような優しさに触れながらでも男としての欲求を押さえることが難しかったんだ。
そして、だからこそジョージが許せなかった。

アリシアは彼女の望むと望まざるとに拘わらず男を惑わせる。
彼女は天使でもあり、妖婦でもあった・・・。
彼女を見れば男は誰でも彼女を欲しいと欲望を掻き立てられる。
そして、その純粋無垢さゆえに無理矢理にでも手折ってみたいと・・・

男達の心を惑わせる、そう言う女性だった・・・。


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接点

2005年11月22日 19時58分16秒 | 第8章 恋愛鼓動編
さわさわと優しい風が川面を滑り、森の中へと駆けて行った。
「・・・思い出すなぁ」
そう言うと、キンケイドは遥か遠くの空を仰ぎ見た。
「オレは昔、フライ・フィッシングが得意な友人に良く川へと連れ出されたんだよ」
と、彼は笑った。
「オレは下手くそでな。良くヤツに笑われたよ・・・」

フライ・フィッシング・・・
まさか!?
僕は咄嗟にその人の名前を叫んでいた。
「ジョージ!?もしかして、ジョージ・ヘイワーズのこと?」
するとキンケイドはひどく驚いたようで、天を仰いだ目をかっと見開き僕を凝視した。
「なんで、ヤツを知っているんだ」

キンケイドはもしかしたら何かを知っているのかもしれない・・・。
そうだ!
僕は急いで喪服のブレザーの内ポケットに入れてあった写真を取り出し、彼に見せた。

「アリシア!」
キンケイドは写真を引っ手繰るようにして僕から奪うと、「アリシア・・・」と呟き、そのまま凍りついたように動かなくなってしまった。

この人がアリシア・・・
金髪に翠色の穏やかな目をたたえたこの美しい女性が、アリシア・・・

「この女性の写真は僕の父の書斎にもあったんです」
キンケイドは写真から再び僕に目を移すと、「はっ・・・・!はは・・・」と、頭に手を当てながら首を振った。

「ジョージは・・・、アリシアって誰なんですか?」
僕は今度こそこの二人の接点となるはずのキンケイドから何かを聞き出そうとしていた。


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