1日1話・話題の燃料

これを読めば今日の話題は準備OK。
著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

12月15日・エッフェル塔の美意識

2020-12-15 | 建築
12月15日は、エッフェルの誕生日。フランスのパリにある、あのエッフェル塔を作ったエッフェル社のエッフェルである。

アレクサンドル・ギュスターヴ・エッフェルは、1832年、フランス中部のディジョンで生まれた。アルザス地方からやってきたドイツ系の家系で、父親は退役軍人で、母親は石炭関係の会社を経営していた。
小さいころからものを作ることが好きだったアレクサンドルは、工芸学校を出て技師免許をとり、鉄鋼会社や鉄道設備会社で働き、鉄橋建設などにたずさわった後、34歳のとき、エッフェル社を設立。国内外の駅舎ホール、工場、鉄道高架橋、天文台などさまざまな建造物を作った。
そして、55歳のときにエッフェル塔建設に着手。塔の設計は、エッフェル社の社員だったステファン・ソーヴェストルとモーリス・ケクランの二人が担った。約2年をかけて完成した。
エッフェルはそのほかにも、ポルトガルのドウロ川にかかるマリア・ピア橋や、ハンガリーのブダペストの駅舎など、美しく、モダンなデザインの建造物を作った後、1923年12月、パリの自宅で没した。91歳だった。エッフェルはベートーヴェンの交響曲第五番「運命」を聴きながら息を引きとった。

1889年のパリ万国博覧会にあわせて建てられたエッフェル塔は、高さが312メートルあり(アンテナを入れるとさらに高い)、米ニューヨークのクライスラービルにぬかれるまで、約40年間にわたって世界でもっとも高い建造物だった。

エッフェル塔の姿には、フランスらしい、ある美意識が感じられる。
いちばんのポイントは、単純にたてに棒状になっていず、塔の足元が四つに割れている点だろう。エッフェル塔は4本に別れた脚で支えられていて、塔の真下は、だだっぴろい広場になっている。だから、塔にのぼるためには、4本の脚の部分にあるいずれかのエレベーターに乗って、斜めにのぼっていくことになる。
一度のぼったことがあるけれど、あの斜めにのぼるエレベーターのなかは、なんともいえない不思議な気分だった。もちろん、東京タワーのように、真下からまっすぐ上へのぼる恰好のほうが、構造上安定するし、技術的にもかんたんなのだろうけれど、それをあえて、技術により困難なものにし、それに挑んだところがにくい。アーチを作っているあの4本の脚がちょっと短足な感じでユーモラスで、そこがまたよい。
万博に間に合わせるため、尋常でない急ピッチの工事日程を要求されたにもかかわらず、エッフェル塔はひとりの死者もださずに完成された。

鉄の時代の到来を告げる、エッフェルはモダニズムの寵児だった。
(2020年12月15日)



●おすすめの電子書籍!

『心を探検した人々』(天野たかし)
心理学の巨人たちとその方法。心理学者、カウンセラーなど、人の心を探り明らかにした人々の生涯と、その方法、理論を紹介する心理学読本。パブロフ、フロイト、アドラー、森田、ユング、フロム、ロジャーズ、スキナー、吉本、ミラーなどなど。われわれの心はどう癒されるのか。


●電子書籍は明鏡舎。
http://www.meikyosha.jp


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 12月14日・ポール・エリュア... | トップ | 12月16日・アーサー・C・クラ... »

コメントを投稿

建築」カテゴリの最新記事