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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

7月3日・ジュリアン・アサンジの暴露

2021-07-03 | 歴史と人生
7月3日は、チェコ出身の作家、フランツ・カフカが生まれた日(1883年)だが、内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者、ジュリアン・アサンジの誕生日でもある。

ジュリアン・ポール・アサンジは、1971年、オーストラリアのクイーンズランド州タウンズビルで生まれた。父親は反戦活動家で、母親はヴィジュアル・アーティストだった。
ジュリアンが生まれる前に両親が離婚し、母親はジュリアンが1歳のときに俳優のブレット・アサンジと結婚し、ジュリアンはジュリアン・アサンジとなった。
両親はジュリアンが8歳のころに離婚し、母親は新興宗教の教団員と交際した。その後、ジュリアンは母親に連れられ、引っ越しの多い少年時代を送った。彼と同居生活を送ったことのあるウィキリークスの盟友ダニエル・ドムシャイト-ベルクは言う。
「(ジュリアンは)子ども時代から、一カ所に長く滞在したことがないという。オーストラリアのカルト集団の信者だった父親から逃れるため、母親が引っ越しを繰り返していたのだ。」(赤根洋子、森内薫訳『ウィキリークスの内幕』文芸春秋)
 そしてジュリアンは16歳のころから他者のコンピュータに侵入するハッカーとなった。
天才ハッカーと呼ばれた彼はその後、大学で数学、物理を修め、内部告発サイト「ウィキリークス」を立ち上げた。これは、世界中の情報提供者に内部告発してもらい、国家や企業、団体の秘密をネット上にさらし暴露してしまおうとする革命的な試みだった。
アサンジ率いるウィキリークスは、世界中の金持ちが資産隠しに使っているスイスの個人銀行の内部文書や、ドイツ諜報部の機密文書を公開し、米軍ヘリコプターがイラク民間人やロイター通信のスタッフを銃撃・射殺するビデオを公開した。ほかにも、米国や中国の国家機密をはじめとする世界各国の秘密文書をつぎつぎと公開し、全世界に衝撃を与え、ほとんどすべての先進国を敵にまわした。とくに米国は彼の捕縛にやっきになった。
ウィキリークスは情報提供者の秘匿、安全保護に尽力したが、情報提供者の一部は、真実を暴露された国家によって起訴、拘束された。
アサンジ自身にも各国の追及の手は延び、39歳のとき、彼はスウェーデンで過去に性的暴行があったとして、国際指名手配された。罪状が疑問視されるなか、無罪を主張する彼は英国にあるエクアドル大使館に避難し、そこで7年間を過ごした。
2019年4月、エクアドル政府が方針を変え、48歳のアサンジは逮捕された。2021年7月現在、英国側による身柄拘束、事実聴取がおこなわれている。機密文書をウィキリークスにすっぱ抜かれた米国は執念深くアサンジの身柄引き渡しを英国に要求しているが、それは叶えられていない。一方、アサンジを支援する人々も無論世界中に数多く存在する。

アサンジは、ノートパソコン2台が入ったバックパック一つで、知り合いの家を転々とする居候生活を続けてきた変わり者で、食事の際は、人と分け合わず早い者勝ちで、手づかみで食べ、常に尾行を巻くべく街を歩き、一度パソコンの前に座れば何日でも集中していられる、偏執狂的で自己中心的な人物らしい。いかにも世界の大国を敵にまわして闘うウィキリークスの創設者らしい。

ウィキリークスによる「隠されたタブー」の暴露は、事実検証の困難や、責任所在の秘匿など、多くの難題を含む暴挙である。蛮勇である。しかし英雄的行動である。恐るべき頭脳と強靭な反骨精神をあわせもったアサンジは、「王さまは裸だ」と言った咎で十字架にかけられようとしているネット時代の殉教者である。
(2021年7月3日)



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