都立高専交流委員会ブログ

都立高専と城南地域の中小企業(特に製造業)との交流・連係を図り、相互の利益と地域社会・地域経済の発展を目指します。

10月30日 都立高専 コミュニティカレッジ の ご報告 (福島原発事故とこれからの課題)

2011年11月22日 | Weblog
  ☆★☆☆ 都立高専交流委員会 よりのご案内 2011.11.21 ☆☆★☆
 
 
 
 平素よりお世話になります。
 先日の「コミュニティカレッジ」のご報告などをさせていただきます。 
 
 
 
   形成されつつある「コミュニティカレッジ」の実質
 
 
 10月30日(日)、
 産技祭(都立高専文化祭)の「特別企画」として開催された
 
 テクノシティ城南コミュニティカレッジ 第5講
 「福島原発事故の徹底検証 と これからのテクノロジー、技術者、ものづくりの課題」
 
 皆様のご協力により、100名を超える参加者があり、
 大変、充実した議論が進められましたので、
 遅くなりましたが、その一端を、ご報告させていただきます。
 
 
 昨年末に立ち上げ、
 今回で5回目となる テクノシティ城南コミュニティカレッジ
  
 学校長の 荒金善裕 先生には、冒頭のご挨拶をいただいただけではなく
 最後の質疑応答にまでお付き合いをいただいたほか
 
 ものづくり企業の担い手を始めとする、大変、多彩な方にご参加いただきました。
 
 専攻科(大学3~4年相当)を中心とした学生の皆さん
 先生方のなかには、荒川キャンパスからおいでいただいた方もあり
 
 大田区と品川区の区議会議員、大田区の幹部職員の方
 地域の方々や父兄の皆様、
 
 また、日本経済新聞社 滝順一 氏(科学技術部編集委員/論説委員)に
 ご参加いただき、質疑応答の口火を切っていただくなど、
 大変、贅沢な構成をとることもできました。
 
 地域社会 と 産業 と 人材育成 を結ぶ
 「コミュニティカレッジ」の名に恥じないものと言えますが
 学生の皆様の参加が少なかったのが残念です。
 
 これを、今後の課題とし、コミュニティカレッジの実質を獲得するものへと
 育て上げて行きたく考えておりますので、
 今後とも、皆様のご高配を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。
  
 会場の様子は、下記、後段にもございますので、ご覧いただけば幸いです。
  http://blog.goo.ne.jp/ota-doyu-kosen/e/3caeba7ad68172f61dc0d7bbc0324491
 
 
 
    原発事故の深刻な課題にあいまい性を残さず向き合う
 
 
 それにしても、今回の原発事故の深刻さ
 本当に原発が暴走してしまった場合、チェルノブイリをはるかに超える事故となり
 東北と首都圏一帯が、放射性物質による「焼け野原」
 政府は崩壊、わが国は国際管理に入る(戦後日本の敗戦)……
 この可能性がなかったとは言い切れません。
 
 震災と原発事故、
 そして、戦後日本のあり方 の 退路なき見直し が結びつき、
 私達が、議論し、改革を進めていく課題の奥行きの深さを考えさせられます。
 
 今回のコミュニティカレッジが、
 最後まで、緊張感の途切れることのない充実したものとなったのは
 
 原子力プラント設計に関わった2名の講師
 後藤政志 氏、渡辺敦雄 氏の集中的な問題提起、
 ともに 高等専門学校 にゆかりのある2名の講師の思い入れをもった講義と
 会場が結びついたことの他
 
 今回の事故が問いかけるものの深刻さについて、
 あいまい性を残さない問題設定で、議論を進めるとともに
 このことを、「技術立国」とその担い手のあり方に結びつけ、
 これからの課題に取り組もうとする基本姿勢によるものでしょう。
 
 質疑応答の口火を切っていただいた 日経新聞 の 滝順一 氏と
 終了後、話しをさせていただきましたが、
 「今回の事故が 現在の範囲で収まっている 点を、
  むしろ『幸運』と思わなくてはならない」など
 事態の深刻さ、そして、それをやり過ごしてはならない点について、
 共通の認識を持っていらっしゃいました。
 
 
 
    原発事故の検証で問われるのはガバナンスの改革
 
 
 現在、今回の原発事故の検証が、様々な制約の中で進められておりますが
 
 この中で象徴的なのは、
 経済産業省/原子力安全保安院による 通称「ストレステスト」
 「発電用原子炉施設の安全性に関する総合評価」に係る意見聴取 での
 北海道大学 大学院 工学研究院 教授 奈良林直 氏の発言です。
 
 下記、20分~ 1時間44分~ 1時間57分~ 
  http://www.ustream.tv/recorded/18554082
 
 奈良林直氏は、
 東芝で、27年間にわたって、原子炉の安全性について研究されてきた方です。
 
 上述の「意見聴取」では、
 
 スリーマイル島の原発事故後に、
 格納容器の設計のあり方について見直さなければならなかった。
 (スリーマイル島の事故以前は、
  シビアアクシデントにより格納容器が破損することを想定していなかった。)
 にもかかわらず、わが国では、この見直しがされてこなかったことを指摘し、
 
 直近のスイスとフランスの原子力発電所の視察を踏まえて、
 次のように述べています。
 
 
 海外(特にスイス)の原子炉では
 
 わが国の2つのディーゼルエンジンによる非常用発電装置だけではなく、
 特別に機能する高圧スプレーの電源、制御盤の電源など、
 シビアアクシデントの際に機能する7つの非常電源を保有しており
 非常時の格納容器ベントに際しては、
 放射性物質を大気に放出させないフィルターがつけられるなど
 シビアアクシデントの際に働く機構 と その手順 が 周到に準備されている。
 
 スイス、フランスでは、シビアアクシデントの際、直後から、
 事業者、政府、規制当局、軍が一体となって事故収束へ向かう仕組みができている。
 原発の近くには軍の基地があり、
 それぞれの基地が、原発のシビアアクシデントに対応する
 外部電源、コンプレッサー、モーターなどの事故対応機器を保有し、
 事故に際して、
 国全体がバックアップし、原子力発電所を外部支援する体制が明確になっている。
 
 わが国は、この20年、「安全神話」をめぐる不毛な論争だけが続き
 スリーマイル島事故の後に問われた設計の見直しや安全対策が進められなかった。
 
 このことの根本的反省にもとづいた実質的、実力的措置をとるべき ……
 とのことです。 
 
 
 これまでの幾多の原発事故が、正しく検証されるどころか、情報隠蔽され、
 スリーマイルとチェルノブイリで問われた課題が、やり過ごされ
 国家破滅を導きかねない大事故の後に、海外を視察して、
 結果として、自らの誤りについて理解する、
 これまでの見直しについて、議論する環境が生まれる …… ということですが、
 
 こうしたプロセスを生む、ガバナンスの「
制度的あり方」こそが、
 変革の対象とされなければなりません。
 
 一方
 様々な分野の専門的知識を持つ人々による
 制約のない検証の場を設けることができるならば、
 本来の対策やその実施の是非などを導くことができることが明確であれば
  
 意思決定の場から、
 「小役人的人々」や、自らの(集団の)利益を盲目的に追求する人々を
 「排斥」することが必要とされるのは、当然のことでしょう。
 
 
 
    巨大独占と行政管理の末路 …… これからの改革の課題
 
 
 田原総一朗 氏が、
 1980年に書いた『ドキュメント 東京電力 福島原発誕生の内幕』は
 わが国の電力産業が、
 政府=通産省と巨大独占企業の 激しい確執の舞台 であったことを浮かび上がらせています。
  http://www.bk1.jp/product/03423030     再々刊が左記
 
 1980年の電力会社全体の設備投資額は、約3.7兆円。
 これは、当時の通産省所管の企業の設備投資総額の4割に迫る金額です。
 東京電力一社だけで、
 鉄鋼業や自動車産業の全体を、はるかに上回る規模となっています。
  

   
 原発導入にあたっては、木川田一隆ほどの優秀な経営者が、
 GEなどの米国非企業を信頼しきって自主技術を放棄し
 通産省が、国家管理の機会を、虎視眈々と狙っていたのであれば、
 イノベーションの現場は逼塞せざるを得ません。
 
 11月20日(日)の日本経済新聞11面
 「日曜に考える/電電ファミリーの呪縛」は、
 この「電力ファミリー」と相似形にあるのが、
 「NTTとガラパゴス携帯の衰退」であるとしています。
 
 1998年のNTTの設備投資額は3兆円
 この巨大な設備投資に依存する日本メーカーが、
 すべての要素技術を持ちながら、スマートフォンの開発を先送りする中、
 国産比率が95%だったわが国の携帯市場が、
 アップルやサムソンに侵食されています。
 (本年4~9月の輸入比率は30%強)
   
 生活の基盤となる エネルギー や 通信 などの分野の需給を支配し
 資本市場で、巨大な資金調達をする独占企業が、
 行政の関与する構造の中で、イノベーションを逼塞させ
 わが国を衰退に引きずり込み、自滅していく構造がここにあります。
 
 こうした社会構造を明瞭に浮かび上がらせたのが、今回の震災と原発事故でしょう。
 
 高度成長期の改革 が 産業化 の 改革
 より高品質で、高機能の耐久消費財を大量に生産する改革であるとすれば
 
 これからの改革の「本丸」は「生活基盤」そのもの改革です。
 (衣食住、医療、社会保障、エネルギー基盤、通信基盤、コミュニティ等々)
 
 ここに開かれた市場 と 国民参加の次世代システム を持ち込み
 企業のイノベーション能力を結びつけていく改革へと進んでいくこと以外に
 私達の将来は開かれていかないでしょう。
 
 
 
   新しい担い手 による 新しいビジョン のための一歩を
 
 
 今回のコミュニティカレッジの準備のプロセスでご入会いただいたのが
 新現役ネット 技術支援グループ(GSSG)の 白川鈞彦 氏です。
  http://www.gssg-shingeneki.com/
 
 このGSSGの会合で、山田郁夫 氏という方にお会いいたしました。
 三菱電気の技術研修所長/技術管理部長、三菱総研常務取締役、
 日本工学アカデミー専務理事、電気学会副会長 をされていた方です。
 
 ソフトバンクの孫正義氏が「自然エネルギー財団」設立イベントで提案した
 直流高圧送電網 による「スーパーグリッド」構想
  http://jref.or.jp/images/pdf/20110912_presentation_j.pdf  
 (日本を縦断し、東アジアを結ぶ直流高圧送電網構想)を高く評価し、
 
 発送電分離 や 小規模分散型エネルギー供給 などを含む
 包括的な電力自由化 に、技術的障害はない、
 制度設計に知恵を働かせることこそ問われる ……
 とおっしゃっていたのが印象的でした、
 
 企業のイノベーション能力を基盤に
 新しい担い手による、新しいビジョンを描いていくことこそ問われます。
 
 
 
   原子力発電システムの管理規律の再構築とは?
 
 
 さて、原子力発電のあり方の問題ですが、
 
 日本列島が、巨大地震の活動期に入ったと考えられる今日、
 これまでの管理システムの延長に、原発を稼動させ続けることは、
 あまりにリスクが高く、到底、容認できるものではないでしょう。
 
 一方、11月8日に開催された
 日本経済新聞社とCSIS(米戦略国際問題研究所)共催の
 安全保障についてのシンポジウム(本年で8年目)でも
  http://www.nikkei-events.jp/csis/
 今回の原発事故が集中的に議論され、
 
 新興国が次々と原発建設を進める中、
 原発事故についての安全を一国で確保することはできないとともに
 わが国の「脱原発」が、
 世界の核管理を揺るがす結果となる …… としています。
 
 従来の先進国を中心とした これまでの国際秩序の変容 と
 グローバルな核管理の接点に、今回の「原発事故」は、起きました。
 
 今までの延長に原子力発電の管理を進めていくことが
 わが国を破滅に導きかねないことが明確になった今日
 
 これからの原子力発電システムの運用を規律化するために必要なのは、
 以下の点であるように思います。
  
 
1.「安全神話」の廃棄と原子力発電の危険性の明確化
 
  この危険性=(安全性の …… ではなく)リスクの検証と
  このリスクを、どこまで、どう管理するか? についての情報開示と、
  その不断の改善、進化による社会的承認の形成。
  
 
2.これまでとは、まったく異なる規制制度、規制機関の確立
 
  前述の「第8回 日経・CSISシンポ」で、
  CSIS所長のハムレ氏が述べたのは
  第一に、「 これまでとはまったく異なる 規制制度の確立」です。
  このシンポジウムの概要が、11月9日と18日の日経新聞に掲載されましたが
  この点は、より明示的に報道、解説されるべきであるように思います。
 
  産業行政や政治的圧力から独立し、
  強い権限と実行能力をもった規制機関は、是非とも、必要ですし、
  この機関に、サイエンスとテクノロジ-、
  オペレ-ション管理や危機管理に精通した有能な人材が
  集中的に配置されなければなりません。 
 
 
3.原子力発電所、関連施設のオペレーションの社会的管理
 
  あわせて、原発オペレーターの独立した組織などにより
  原発のオペレーションを、社会的に管理していくことが必要です。
 
  「日経・CSISシンポ」の関連会合では、
  米国原子力発電運転協会(INPO)の活動について議論されていますが、
  原発のオペレーションにあたるものが、企業から独立して、
  原発の安全、その技術基準の改善や人材育成に責任を負うこと。 
  
  米国のINPOは、個々の企業から独立した民間の自主組織が情報を共有し、
  様々な技術基準、管理規準、教育訓練を改善、標準化するとともに、
  専門家を、各施設に派遣して、運転状況を検査、
  テロ(航空機衝突)対策にいたるまでの管理の不備を指摘し
  一つ、一つの原子力プラントを格付けしています。
  (この格付けにより、発電会社が支払う保険料が異なる。)
 
  電力会社が、本気で原発を再開しようと思えば、
  独立した自主的な検査機関をつくり、
  その査察に自らを委ねることは、是非、必要です。
 
  各施設に、企業から独立して
  安全に責任を負うスタッフを配置することを義務づけるなど
  この独立性を担保する制度的仕組みづくりが必要でしょう。
 
  原発プラントメーカーの責任が、電力供給事業者から独立して、
  安全設計への責任を問われる仕組みも、当然、必要でしょう。
  (巨大な発注業者からプラントメーカーを「守る」ためにも必要)
 
 
4.包括的で、国と企業の責任の範囲を明確に切り分けた損害賠償制度の確立
 
  もちろん、国の損害賠償責任は、企業の経営責任を免責するものではない。
 
 
5.シビアアクシデントに対する外部支援体制の確立と
  有事において、どう権限を集中するかについての明確化、周到な準備
 
  他に、有事への対処を困難にする原子炉集中立地の規制など
 
 
6.原子力発電の技術スキームの一からの再検証と本来の自前の技術の確立
 
 
7.原子力の平和利用と原子力システム管理についての開かれた国際基準の形成
 
  また、グローバルな原子力管理への戦略的参画
 
 
8.原子力発電所、関連プラントの就労基準、就労規律の再構築
  
  オペレーター、管理者、就労作業者等の
  就労規準、就労環境、安全管理、医療支援の改善と厳格な管理
  多重下請け等の不明朗な就労の根絶 と 就労者の地位、権利の確実な保全
  
 
9.サイエンス、テクノロジー、経営、オペレーション、管理等についての
  人材育成システムの再構築
  
 
10.核廃棄物処理システムの再構築と自前での運用
 
 
11.「とにかく細かいところまでこだわること」
 
  これは、「日経・CSISシンポ」の関連会合で、
  ウィリアム・ペリー元米国国防長官が、海軍の原子力潜水艦、
  原子力空母の安全性の取り組みの教訓として述べたことですが
  (11月9日「日本経済新聞」朝刊による)
 
  「細かいところまでにこだわり」、その管理情報を厳格に開示すること、
  これがなければ、
  どのような美しい改革も、背信を隠すだけのものとなるでしょう。
 
 
12.技術上の採否を行政的に判断せず、
  独立した専門家の組織と国民の判断に委ねること。 
 
 

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