都立高専交流委員会ブログ

都立高専と城南地域の中小企業(特に製造業)との交流・連係を図り、相互の利益と地域社会・地域経済の発展を目指します。

中小企業家経営塾 学生海外派遣 の 今後のあり方 について

2008年05月18日 | Weblog
 
     中小企業家経営塾 学生海外派遣 の あり方 について
 
 
 
                     都立高専交流委員 田中 基茂
                      (有限会社 グロ-バル・コミッション)
 
 
 
 本年の夏より始まる 中小企業家経営塾 の 学生海外派遣
 (対象は、昨年度の「中小企業家経営塾」受講生より)
 
 
 このあり方について
 日本コンピュ-タ開発 高瀬拓士 さんに、下記のご意見をいただきました。
 
 
  海外派遣について、私の意見を次の通り申し上げます。
 
  先に今回は日系中国会社のご好意により、中国訪問と聞いております。
 
  私は日本との比較において、
  中国の技術や製造技術レベルの状況を良く知りませんので、
  中国にある日系企業で何を学ぶのか見当がつきませんが、
 
  訪問先の選定に当って大切なことは、
  先ず何を目的に派遣するのかを明確にすることが大切ではないかと思います。
 
  異文化体験と理解促進、高い技術レベルの見聞、
  急速な変革の現状認識などなど。
 
  よろしくご検討下さい。
 
 
 大変、重要な点であると思いますので、
 私見を述べさせていただくことにしました。
 
 
 学生の優秀者に海外学習の機会を与える今回の試み をめぐり
 学校の先生方を含む関係者との議論の中で感じるのは、
 
 「学生の皆さんに何を学んでいただくか?」の前に
 私たち(大人達)が、世界経済の大きな変化から何を学ぶのか? が、
 大切であるということです。
  
 
 下記が わが国の近年の貿易額の変化です。(日本貿易会『日本貿易の現状』など)
  
(単位 億円)  輸 出     輸 入     計     増 減    経常収支
 2001年   489,792   424,155    913,947         106,523
 2006    752,462   673,443   1,425,905   511,958   198,488
 2007    839,397   731,123   1,570,610   144,705   250,012
H20年度(予)  910,259   748,829   1,659,088   88,478   313,600
 
 
 地域別構成は下記の通り(資料は同じ、2001年は手元に資料がないため1999年に)
 
        アジア出    アジア入   アジア計   増 減  (単位 億円
 1999年    176,942     139,703    316,645      
 (中国)  ( 51,646)  ( 50,786)  (102,432)
 2006年    357,757    293,601    651,358    334,713 
 (中国)  (150,327)  (139,612)  (289,399)  (186,967)
 2007年    403,983     315,155    719,138     67,780 
  (中国)  (174,126)  (151,976)  (326,102) ( 36,703)
 *(中国)は、中国+香港(実質中国)
 
        米国出     米国入    米国計   増 減
 1999年    146,053     76,395    222,448 
 2006年    169,336     79,112    248,448     26,000
 2007年    169,048     83,418    252,466    4,018
 
 
 表の上段が示すのは、
 
 2001年~2006年の5年間に名目GDPの10%が輸出入に置き換わったことです。
 プラザ合意前後(1980年代中期)より、
 このように、貿易額が連続的に増加することを
 わが国は経験したことがございません。
 
 (世界経済とわが国の関係が、「構造的なもの」ではなくなり、
  連続的、一方的に、一体化していくものになったこと …… )
 
 2007年以降もこの増勢に変化はなく
 トヨタの海外生産比率が、一気に50%を超えていったのもこの時期です。
 (世界販売に占める国内の比率は、すでに20%以下
 
  
 表の下段は、
 
 この 世界経済一体化 の重点、
 そして、わが国にとっての大きな変化の重点が
 紛れもなく、東アジア にあったことを示すものです。
 
 (中国の「世界の工場化」などと言われてきました。)
 
 
 この趨勢があと10年続くとすると
 私たちは、どこへ連れて行かれるのでしょう???
 
 それは、私たち、そして世界の人々にとっても
 「未体験ゾ-ン」となるものでしょう。
 
 
 さて
 OECDの学習到達度調査(PISA)では、
 数学的リテラシ-について、次のように定義しています。
 
 「この世界で、数学が果す役割とは何か、認識、理解でき
  建設的で、関心深く、思慮深い市民として、
  生活のニ-ズを満たすために数学を利用でき、
  根拠のしっかりとした判断ができる能力
  (『OECDファクトブック 2007年版』より)
 
 
 私たちは、
 
 国際経済の数値デ-タの変化から、 
 私たちの社会の 現在と将来の変化 を読み取り
 関心深く、思慮深い市民として、
 根拠のしっかりとした判断に基づいた
 建設的な提案をしていくことができるのでしょうか?
 
 
 冷戦が終わって、徐々に 世界経済が一体化 していき
 ここに、世界の中央銀行がかってない流動性を供給した ……
 これが、今日の グロ-バル経済 を成立させた基本条件でしょう。
 
 
 『通商白書 2005年版
  ~~ 我が国と東アジアの新次元の経済的繁栄に向けて』は、
 次のように述べています。 
 
 「日本がどのような針路を取ろうとも、
  世界経済のグローバル化は一層加速していくことであろう。
  このような中、単に日本と東アジアの関係だけでなく、
  世界経済における東アジア経済圏の在るべき姿、
  その中で果たすべき日本の役割を
  一人一人(の国民)が考え、議論することが必要な時機に来ている。
   
http://www.meti.go.jp/discussion/topic_2005_08/kikou_03.htm
 
 
 新任された日銀総裁 白川正明 氏は、次のように述べています。
 
 「内外の通貨の歴史を振り返りますと、
  景気や財政、為替レ-トへの短期的な配慮が優先される結果、
  通貨の発行が過大となり、経済が混乱したことを示す事例には事欠きません。」
 
 「米国では、1930年代の大恐慌以来の深刻な金融市場の動揺が続いています。
 
  (2008.4.28 衆議院運営委員会 意見聴取 …… 当時 副総裁)
   
 
 国際秩序は、
 100年単位を超える 大きな秩序再編成期 に入りつつあるといえますが
 
 
 大きな経済変動の中で
 その影響を最も大きく受けるのが 中国 です。
 
 (言うまでもなく、数年前よりその中国がわが国の最大の貿易相手国です。)
 
 
 東アジア経済の一体化を進めてきたわが国 ……
 
 こうした環境の中で、
 わが国の本当の力や、将来の進路が試されていくことになるでしょう。
 
 
 

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