「ケガしちゃった……」 | |
「ほら、ここだよ……」
|
|
「血も出てるんだ……」 | |
「おい、大丈夫かい……」 | |
「大丈夫です。でも、痛みが激しくて……」 | |
「ああ、痛い。痛いよう……」 | |
「ううむ。耐えるしかあるまい……」 | |
「おむさん、つらそうだなあ」 | |
「ねえねえ、おかか先生」 | |
「何だい?」 | |
「おむさんに何か、お見舞いをあげたいんだけど」 | |
「そうさな。病気やケガの見舞いと言えば、やっぱり花束かな」 | |
「そうか! じゃあ、このピンクの花を摘んであげよう!」 | |
「ありがとう。でも、いらないよ」 | |
「花だって、摘まれたら痛いだろ……」 | |
「……」 | |
「……」 | |
「……」 | |
おむさんがケガをしていた。 | |
部位は、右前肢、第一指の付け根、甲側。 | |
何か鋭利なものに引っかけたような傷に見える。 | |
だが、耳の後ろにも小さな傷があった。 | |
また、鼻孔にも、小さな傷があった。 やはり、ケンカをしたのかもしれない。 |
|
見たところ、表皮から真皮にかけての傷で、さほど深くはないようだ。 万一、骨や靱帯がやられていると大変なので、痛みを我慢してもらって、触診してみた。 ご覧の通り、普通に爪が出るので、皮下の組織は壊れていないようだ。 |
|
おむさん自身が自力で爪を出せることも、翌日に目視で確認した。 以後、この傷は順調に回復している。 |