喫茶店に行こう 8杯目 |
おかか先生とおむさんの、喫茶店である。 おかか先生がマスター、おむさんがウエイター。 |
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今日は、マスターが出掛けているので、おむさんが一人で店番をしている。 | |
そこへ、お客がやってきた。ゆうちゃんである。 「アイスコーヒー下さい」 |
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「いらっしゃいませ。アイスコーヒーですね!」 | |
「お待たせしました」 | |
よく冷えた、とてもおいしいコーヒーだった。 | |
「ごちそうさま~。さて、そろそろ帰ろうかな」 | |
「では、お会計を」 | |
「おいしかったから、お金よりもいいもので払うよ!」 | |
「え? お金よりもいいもの……?」 | |
ゆうちゃんはお金の代わりに、四つ葉のクローバーを置いていった ―― 。 | |
やがて、マスターが戻ってきた。 「どうだ? 客は来たか? 売り上げは?」 |
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「な、何っ!? これが今日の売り上げだと?」 | |
「おいっ、どういうことだ!? 金を受け取らなかったのか?」 | |
「このほうが、お金よりも価値があるでしょ?」 | |
「おいおい! そんなもん、ただの葉っぱじゃないか!」 「ぼ、僕は、先生が喜ぶと思って……」 |
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「ふざけるな! 喫茶店経営は、そんな甘いもんじゃないぞ!」 「ご、ごめんなさい……」 |
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「でも、せっかくの四つ葉ですから、先生に差し上げますよ」 | |
「いらん! そんな葉っぱなんぞ、お前の頭にでも載せとけ!」 「は、はい……」 |
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「あ~あ。叱られちゃった……」 | |
「がっかりだなあ……」 | |
マスターは、いつまでもぷりぷり怒っていた。 | |
おむさんは、すっかり気落ちしてしまった。 | |
ところが ―― たまたま通り掛かった旅人が、おむさんを膝に載せて、慰めてくれた。 |
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おむさんは、すっかり気分が良くなった。 | |
しかも ―― 旅人は、四つ葉のクローバーを、五万円で買ってくれたのである。 | |
「ご、五万円で売れただと!?」 | |
「そうですよ~。全部、僕のものですよ~」 | |
「ちょ、ちょっとでいいから分けてくれよ……」 | |
「は~っはっは~! 今さら遅いですよ~!」 |