黄昏の空を

2009年06月20日 18時58分00秒 | B地点 おかか

 

 

おむさんが、うとうとしていると、
水音が聞こえてきた。楽しげな声も。
「あっ」
「カモさん親子だ」
「いいなあ……」
おむさんは、幼い頃の記憶を辿った。
母親と共に過ごした日々を、追想した。
「ああ……」
「淋しいな」
「お母さん」
「もう一度、お母さんに会えたらな……」
「……おい、大丈夫かい?」
「えっ?」
「だ、大丈夫ですよ」

ぐすん
「そうかい?」
「ええ。子供の頃のことを、ちょっと考えていただけです。それに、僕には先生がついててくれますから!」
「ふふ。おだてるな。ま、とにかく元気を出せよ」
「……」
おむさんにつられてか、おかか先生も、なんだかセンチメンタルな気分になってしまった。

もちろん先生にも、幼かった頃があり、母親の思い出もあるのだから。
先生も時には、誰かに甘えたくなるのだ。
だが、いつもおむさんに頼られている先生は、そんなところを見せたくなかった。
それに、先生だって、決して孤独ではないのだ。

先生は、感傷をそっと胸の奥にしまって、黄昏の空を見上げるのだった……。