釜石の日々

大量通貨発行が続いて行く

新型コロナウイルスの新規感染が米国では、減少傾向になった。今日のブルームバーグによれば「46の州で新規感染者数が減少し、そのうち42州では7日間平均が前週に比べ10%余り低下した」。そして今日のロイターによれば、中国では「中国本土で新たに確認された新型コロナ感染者は103人で、前日の144人からやや減少した。」「中国が確認された症例に分類していない無症状感染者の数は119人で、前日の113人からやや増加した。」とある。黒竜江省の省都ハルビン市のタイの財閥チャロン・ポカパン(CP)グループと現地開発ゾーンの合弁会社が所有する食肉加工工場での47人のクラスターや、吉林省19人、上海6人、北京3人などの発生が見られている。来月迎える中国の春節(旧正月)では、交通機関の予約者が延べ人数で17億人にもなると言う。移動先での2週間の隔離が発表されたため、キャンセルが多く出る可能性はあるが、移動が大きく国内で発生するため、来月は中国で、さらに感染が拡大する可能性はあるだろう。20日に77人の新規感染者が出た香港も今週末から、九竜地区の一部で、初めて数万人単位の住民を対象としたロックダウンに入るようだ。昨日、新しく就任した米国大統領は、新型コロナウイルス対策強化のために、ワクチンの供給加速やウイルス検査の拡大のほか、マスクなどの必需品の生産量を増やすため、戦争中に制定された国防生産法(DPA)発動を含んだ10件の大統領令を発した。新大統領は、財務長官に元FRB議長のジャネット・イエレンJanet Yellen氏を指名した。今日のロイター日本語版は「焦点:イエレン氏の「大きな行動」発言に透ける、政府債務論の変容」なる記事を配した。何が変容したのか。米国だけでなく、世界的にも政府債務の多さ、特に国民総生産GDPとの比率が問題にされて来たが、19日行われた上院財政委員会の指名承認公聴会で、「イエレン氏が上院で訴えたのは、債務の水準をいったん忘れ、利払い額と財政支出がもたらすリターンにこそ目を向けてほしいという点だった。」米国政府にはすでに約26兆9000億ドルもの債務があるが、新大統領はさらに1兆9000億ドルの追加経済対策案を出しており、イエレン氏はそれを「大きな行動こそが賢明」だとして、支持した。しかし、「公聴会で共和党の財政規律重視派のジョン・スーン上院議員は、昨年に新型コロナ対策で3兆5000億ドル強の財政資金が投じられた上に、また支出しようとしていることについて「果たしてわれわれはいつ、財政が崩壊し始める地点に達するのか。私にとってそれが本当に心配なのだが、与野党の誰も、もはやまじめにそれを話そうとしない」と発言した。」とある。ただ、イエレン氏は公聴会で、企業や富裕層対象の増税の可能性にも触れている。新大統領が属する民主党では、現代金融理論MMT(Modern Monetary Theory)が支持されている。政府と中央銀行FRBが統合されたものと見れば、政府発行の国債は中央銀行が保有することで、インフレさえ回避出来れば、問題なく政府は国債を発行し続けることが可能だとする考えである。中央銀行の金融緩和は富裕者が一層富裕になると言う格差を拡大させたが、MMT支持者は、それによりすべての人に、無料の授業料、無料の育児、保証された基本収入(guaranteed basic income)、積極的な気候変動対策やメディケアに資金を提供できると主張している。米国は現在、債務対GDP比率が約130%だが、日本のそれは250%を超えるが、問題は発生していないとも主張している。本当に、日本では今後も問題は発生しないのだろうか。この30年、日本は経済成長も果たせていない。日本は景気対策として、政府が毎年のように財政支出を続けて来たが、景気はほとんど低迷状態を続けて来た。中央銀行が何年もの間、超低金利や大量通貨発行を行い、世の中の経済を刺激しようとして来たが、ほとんどその効果は出ていない。これを経済では、「流動性の罠」と呼ぶ。金利が一定レベル以下になると、中央銀行が金融緩和で世の中に流したマネーは、健全な投資に回されず、リスクのある株式などの投機回ると言うものだ。まさに日本の「失なわれた30年」がその「流動性の罠」に落ち込んでいた30年であった。米国は斜陽化しているとは言え、覇権国家である。大量通貨発行を今後さらに拡大させれば、ドルへの信認を失う可能性が高い。米国の国債の半分近くは日本と異なり海外が保有している。日本の国債以上に不安定な基盤に乗っている。他国より金利を少しでも高く保つことで、世界から資金を集め、世界が米国へ投資するためにドル買いが行われる環境を維持して来た。ドルが買われれば、ドル高を維持出来る。高いドルは消費大国でもある米国には有利である。多くのものを海外から買えることを意味する。今、そのドルが下がりつつあり、10年米国国債の金利もじわじわと上昇して来ている。コロナ禍は日米政府に大量通貨発行の口実を与えてくれた。将来の「返済」など眼中にはない。それで本当に大丈夫なのか。
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