釜石の日々

検査体制の充実だけが抑え込みを実現出来る

英国BBCは昨日「Coronavirus: UK variant 'may be more deadly'」なる記事で、英国首相が記者会見で、感染力が強いとされた英国型の変異種は、致死率も高い可能性があると述べたことを伝えた。英国では今月5日からロックダウンに入っており、そのため、8日をピークに毎日の感染者は減少傾向にあるが、それでもなお1日に4万人を超える新規感染者が出ている。しかも死者数は時差もあり増え続けており、昨日は1日で1401人となっている。英国首相は、変異種による感染後の死亡率が通常のウイルスと比較して30%高いとしたが、これに対して、WHOの疫学者、マリア・バンケルコフMaria Van Kerkhove氏は、ウイルスの感染速度が上昇し、感染が増えれば、入院も増え、医療体制が崩壊する。そうなれば死亡率も上昇するとして、変異ウイルスが致死率が高いとする首相の見解を否定している。もっとも、同氏は昨年6月、無症状感染者による新型コロナウイルス感染が「非常にまれ」だと発言して、英国ロンドン大学大学院の臨床疫学のリアム・スミースLiam Smeeth教授など、科学者から批判され、、「誤解」があったと釈明している人でもある。英国と同じく8日にピークを迎え、その後は新規感染者が減少傾向を示す米国も昨日は1日で19万2065人の新規感染者数で、昨日1日の死者数は3886人である。今月20日の米国NATIONAL GEOGRAPHIC誌はオンラインで「How good is COVID-19 testing in the U.S. right now?」なる記事を公開している。記事よれば、米国では昨年1月19日に、ワシントン州シアトル地域の救急クリニックを訪れた、中国武漢市から米国へ戻って来た男性が米国の最初の感染者であった。以来、米国ではこれまでに新型コロナ検査が3億件近く実施された。「Testing is a key component of an effective response to a respiratory disease such as COVID-19.(検査は、新型コロナウイルス感染症のような呼吸器感染症に対する効果的な反応の重要な要素である)」。これだけの件数の検査をおこなっていても、米国での検査は十分ではないようだ。当初は検査結果が出るまでに4日もかかり、圧倒的に検査数が制限されたため、日本同様に有症者に限定して検査をせざるを得なかった。検査が増えてはいるが、アリゾナ州立大学の生物医学的診断学マーラ・アスピノール教授は、なんとか間に合っている程度だと言い、現在は1カ月に約2億5000万件の新型コロナ検査が実施可能な体制だが、4月には検査能力が3倍以上に拡大し、1カ月に7億5000万件以上の検査が出来る可能性があると言う。1月7日に米国の医学雑誌に感染例の59%は無症状の感染者からのものとの発表があり、一般市民を対象にもっと幅広く検査を行うことで感染防止効果を高められるとある。新しい米国の政権では検査の拡大のために500億ドル(約5兆2000億円)の予算が準備された。米国の新大統領は、就任早々戦争時に制定された国防生産法を発令したが、何故、その中に検査キットの増産なども入れなかったのだろう。川崎重工業が検査機器大手のシスメックスなどとともに開発したロボットPCR検査装置は80分で結果が判明し、空港検疫に利用されるようだが、2018年にノーベル賞を受賞した京都大学本庶佑名誉教授は、TV番組で、「神戸の会社で開発されている自動PCR検査システムを搭載したトレーラーなら、12時間で2,500件、1,000台用意すれば1日250万件の検査が可能だ。1台1億円ほどなので、1,000億円で実現できる。無症状感染者の隔離によって、宿泊先のホテルや、食事を届ける飲食業界、生産者にもプラスになる」と述べている。日本で早々と全自動PCR検査装置を開発した千葉県のベンチャー企業プレシジョン・システム・サイエンスの装置は、当初、欧州中心に使われたが、昨年8月からは日本でも設置されるようになり、昨年末の段階で国内の受注残が100台以上だと言う。本当にオリンピックがやりたいのであれば、早くこうした検査機器を全国に導入すべきであった。早期発見・早期隔離・早期治療を達成するための最初の要がPCR検査しかないのだから。検査体制の充実が遅れれば遅れるほど、重症者を増やし、医療崩壊も招き、無駄な死者を出すことになる。「上級国民」は別なのだろうが。
内陸の冬景色
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