人はエネルギーを消費して生命を保っている。体内ではATPと呼ばれるエネルギーが作られている。ATPの作られ方には二通りあり、無酸素状態と有酸素状態での産生がある。前者は解糖系と呼ばれ、後者はミトコンドリア系と呼ばれる。解糖系は字のごとく、糖=グルコースが使われる。ミトコンドリア系はグルコースの代謝産物であるピルビン酸や脂質が分解された脂肪酸を使ってATPと言うエネルギーを作り出す。三大栄養素であるタンパク質・脂質・炭水化物で言えば、タンパク質は分解されてアミノ酸になった後に、糖新生と呼ばれる変化でグルコースに変換されて、解糖系で利用され、脂質はミトコンドリア系で利用される。炭水化物は解糖系、ミトコンドリア系でともに利用され得る。解糖系で作り出されたエネルギーは細胞分裂や筋肉の瞬発力に使われ、低体温下でも機能する。一方、有酸素の下でのミトコンドリア系で作られたエネルギーは効率が良く、持続的な仕事に使われ、体温が高いとよく機能する。もともと生物の進化の過程では、地球上に酸素がまだ十分発生していない時に、無酸素下でも生きられる核のない原核細胞と呼ばれる細菌が誕生した。この細菌たちは解糖系でエネルギーを作り出した。その後、地球で多くの酸素が発生するようになり、有酸素下で生きられる細菌が生まれ、原核細胞から核を持つ真核細胞への進化が起き、この真核細胞に有酸素下で生きられる細菌が寄生しはじめたことから、ミトコンドリアが出来たと考えられている。人の筋肉には瞬発力のある白筋と持久力のある赤筋がある前者は解糖系からエネルギーを得て、後者はミトコンドリア系からエネルギーを得る。皮膚、腸の粘膜のように細胞分裂をするものは解糖系であり、細胞分裂をしない心筋や脳細胞などはミトコンドリア系になる。癌も細胞分裂が盛んであり、やはり解糖系からエネルギーを得ており、グルコースは癌の成長を促進するわけだ。昨年末亡くなった新潟大学安保徹名誉教授によれば、子供は解糖系優位で、成長とともにミトコンドリア系も発達し、成人では両者が均衡し、加齢とともにミトコンドリア系が優位になって行くと言う。だとすると、若い時には炭水化物を多くとり、加齢とともにむしろ良質な脂質が必要だと言うことになる。タンパクは全年齢を通じて適量に摂ることが大事なのだろう。
花水木に似た山法師