釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

人のエネルギー

2017-07-06 19:13:12 | 科学
人はエネルギーを消費して生命を保っている。体内ではATPと呼ばれるエネルギーが作られている。ATPの作られ方には二通りあり、無酸素状態と有酸素状態での産生がある。前者は解糖系と呼ばれ、後者はミトコンドリア系と呼ばれる。解糖系は字のごとく、糖=グルコースが使われる。ミトコンドリア系はグルコースの代謝産物であるピルビン酸や脂質が分解された脂肪酸を使ってATPと言うエネルギーを作り出す。三大栄養素であるタンパク質・脂質・炭水化物で言えば、タンパク質は分解されてアミノ酸になった後に、糖新生と呼ばれる変化でグルコースに変換されて、解糖系で利用され、脂質はミトコンドリア系で利用される。炭水化物は解糖系、ミトコンドリア系でともに利用され得る。解糖系で作り出されたエネルギーは細胞分裂や筋肉の瞬発力に使われ、低体温下でも機能する。一方、有酸素の下でのミトコンドリア系で作られたエネルギーは効率が良く、持続的な仕事に使われ、体温が高いとよく機能する。もともと生物の進化の過程では、地球上に酸素がまだ十分発生していない時に、無酸素下でも生きられる核のない原核細胞と呼ばれる細菌が誕生した。この細菌たちは解糖系でエネルギーを作り出した。その後、地球で多くの酸素が発生するようになり、有酸素下で生きられる細菌が生まれ、原核細胞から核を持つ真核細胞への進化が起き、この真核細胞に有酸素下で生きられる細菌が寄生しはじめたことから、ミトコンドリアが出来たと考えられている。人の筋肉には瞬発力のある白筋と持久力のある赤筋がある前者は解糖系からエネルギーを得て、後者はミトコンドリア系からエネルギーを得る。皮膚、腸の粘膜のように細胞分裂をするものは解糖系であり、細胞分裂をしない心筋や脳細胞などはミトコンドリア系になる。癌も細胞分裂が盛んであり、やはり解糖系からエネルギーを得ており、グルコースは癌の成長を促進するわけだ。昨年末亡くなった新潟大学安保徹名誉教授によれば、子供は解糖系優位で、成長とともにミトコンドリア系も発達し、成人では両者が均衡し、加齢とともにミトコンドリア系が優位になって行くと言う。だとすると、若い時には炭水化物を多くとり、加齢とともにむしろ良質な脂質が必要だと言うことになる。タンパクは全年齢を通じて適量に摂ることが大事なのだろう。
花水木に似た山法師

中央銀行の異常

2017-07-05 19:19:41 | 経済
1971年に米国が金本位制を放棄してから、各国中央銀行は金の裏付けなく紙幣を印刷出来るようになった。EUでは欧州中央銀行(ECB)が2004年頃から増刷が強まり、米国では2008年のリーマンショック後に、日本は第二次安倍政権になった2013年から急速な増刷が始まった。世界の先進国の中央銀行が紙幣の増刷に走った。ちょうど中国の経済成長の時期に、実体経済である製造業が先進国ではフルはわず、金融経済に活路を見出した米国は、資産バブルを生み出し、それをリーマンショックで、巨大な損失をもたらした。損失を受けた投資銀行をはじめとする金融機関を救済するために、中央銀行であるFRBは金融機関から不良債権を買い取り、肩代わりした。そのために巨額のドルを増刷せざるを得なくなる。しかし、それは再び株や債券などの資産バブルを生み出している。資産バブルは先進国の中央銀行の途方も無い紙幣の増刷により、EUや日本でも同様になっている。
中央銀行の増刷紙幣量
先月2日付けの日本経済新聞は「世界の株、時価総額最高 」と題する記事を載せた。5月末の世界の株の時価総額は76兆6000億ドルとなり、リーマンショック前のピークである2007年10月の64兆ドルをはるかに超えている。世界の株の時価総額はすでに2015年4月末で世界のGDP総額に匹敵するまでになっていた。その国の株の過熱状態は株の時価総額と名目GDPとの対比で示される。「バフェットの指標」とも呼ばれる。株の時価総額がGDPと等しいと100%と表現される。GDPはその国の所得であり、指数が100%を超えると言うことは、所得以上の株価になっていることを示す。すなわち、株の過熱状態、バブルである。今年4月の米国のそれは130.6%であり、日本は139.0%とさらに高い。日本のGDPはおおよそ米国のGDPの3分の1であるが、印刷した紙幣の量はほぼ米国と同じである。いかに日本が行き過ぎているか。しかも、米国はすでに増刷をやめ、その紙幣の回収を始めようとしており、EUもその検討を始めているが、日本のみはさらに増刷を続けようとしている。日本の異常さの原因は、政府債務の突出した大きさにある。超低金利の国債発行は政府の利払いを助ける。日本銀行が国債を買い取ることで、低金利が維持され、買取で印刷された紙幣が売り手の金融機関に渡るが、その多くは日本銀行の準備預金として預けられ、残りが金融機関を通じて、債券や株、ローンへ流れる。一般企業の利益も日米ともに内部留保に積み上げられ、自社株買いに回されており、ここでも株価を吊り上げている。手持ち資金の何倍もの投資が可能なデリバティブと言う金融商品などは世界のGDPの100倍近い額になっている。これらのバブルが弾ければ、投資家、金融機関、中央銀行いずれも計り知れない損失を受けるだろう。国債の暴落も誘発されて行く。
家の近所で見かけた菊

責任感なく推進される原発

2017-07-04 19:14:37 | 社会
二度の核兵器による被曝を受けた日本も、太平洋戦争中に核兵器を研究していた。敗戦後も核兵器の保有はある種の人たちには夢であった。1952年のサンフランシスコ講和条約は日本の原子力研究を解禁した。さらに翌年1953年には国連で、米国大統領アイゼンハワーが原子力の平和利用「Atoms for Peace」を訴え、これに便乗して、1954年には中曽根康弘らにより2億3500万円の原子力研究開発予算が国会に提出される。これを見た米国は1955年に日本政府に対し、実用原子炉建造に向けた技術援助を提案し、産業としての売り込みをかける。同じ年、「原子力三原則」を方針とする原子力基本法が成立し、翌年1956年元旦をもって読売新聞社社主正力松太郎を初代委員長とする原子力委員会が設置され、産業界でも同年、600社を超えて参加した財団法人日本原子力産業会議が設立される。さらにその3ヶ月後には茨城県東海村に 特殊法人日本原子力研究所(現・国立研究開発法人日本原子力研究開発機構)が設立された。1957年には正力は原子力平和利用懇談会を立ち上げ、その上、発足された科学技術庁の初代長官となるに及んで、原子力委員であった湯川秀樹が辞任した。1963年東海村で日本で最初の原子力発電が行われた後、1970年に関西電力美浜原子力発電所1号機が本格的商業用原発として始動した。1974年には電力会社が原発を建設しやすくするために、原発を造るごとに交付金が出る仕組を盛り込んだ電源三法が成立し、以後、全国に原発が設立されて行く。政治家の核保有願望を潜在的に満たし、電力企業には助成金と電力料金への費用の上乗せを許し、官僚には20を超える原発関連「公益法人」の維持を可能とする原発は、この政官財のトライアングルにとって、何としても維持しなければならないものだ。そのためには「安全」は犠牲にすべきもので、犠牲への自分たちの責任も不問にされるべきものと捉えている。福島第一原発事故の翌年、福島原発告訴団は東京電力勝俣元会長らを告訴・告発したが、東京地検は二度に渡って不起訴処分とした。検察として本来の使命を果たさなかった。しかし、検察審査会は起訴すべきだと議決し、昨年、検察役の指定弁護士が強制起訴した。先月30日、東京地裁(永渕健一裁判長)で初公判が始まった。そこでは指定弁護士が2008年段階で、すでに東京電力は国の地震調査研究推進本部による福島第一原発への最大で高さ15.7mの津波が押し寄せるとの試算結果を知り、敷地東側全面を囲う海抜20mの防潮堤や、沖合の防潮堤の建設を検討していたことを明らかにしている。東京電力は「想定外」ではなく、「想定内」であったが、費用と労力を惜しんで、さらには責任まで逃れようとした。実際には、こうした東京電力のあり方を許した経済産業省や政治家にも責任がある。しかし、現在の日本には指導的立場の人たちに無責任さが蔓延しており、検察も動かない。
シラサギカヤツリソウ

我が家のベルギー・シェパード(ベルジアン・タービュレン)が逝った

2017-07-03 19:10:15 | 文化
昨日の朝、飼っていたベルギー・シェパード(ベルジアン・タービュレン)が息を引き取った。朝、6時半には穏やかな呼吸をしていた。1時間後も変わりなかったが、8時前に呼吸が止まっていた。昨年秋に旧居から新居に引っ越す頃には元気にしていて、手伝いに来ていた娘とも遊んでいた。しかし、年末頃から後ろ足の動きが悪くなった。今年に入り、その傾向が強まり、2月にはもう歩けなくなってしまった。この犬種はとても繊細で、綺麗好きなため、シート上の排泄にとてもためらい、思うように動けない自分に苛立ちを感じていたようだ。そんな毎日に結局は胃潰瘍を発病させた。空腹となる夜間に痛みが強かったようだ。便色が黒くなって初めて気付かされた。薬を飲ませたが、気付くのに遅れてしまった。先週金曜の夜は哀れな声で鳴き続け、こちらも2時間しか眠れなかった。声が大きいので、玄関の中に入れてやった。しかし、朝になるとその痛みも消失したのか、悲痛な声で泣くことはなくなった。前日の夕方は少量しか食べなかったが、土曜の朝は全く食欲が失せてしまった。さらに午後には口に含んでやった水分さえも飲み込まなくなった。老衰に潰瘍が拍車をかけて衰弱させたようだ。それでも意識だけはしっかりしていて、そばに寄ると、目でこちらを追って来る。排泄をしたくなると、声は出ないが、吠えるような仕草をする。腰と肩の2箇所に歩行補助ハーネスを付けているので、それで体を持ち上げてやると、排泄をする。すぐに下のシートを取り替え、体の位置を変えてやる。土曜の夜にはもう泣くことはなく、荒い呼吸だけが目立った。時折、吠える仕草をした時に、体を持ち上げてやったが、わずかしか排泄出来なくなった。日曜の朝の7時半にはまだ目だけはこちらに向けていた。午後1時に、4年ほど前に亡くなったドイツ・シェパードと同じお寺に運び、和尚の読経とともに火葬された。読経が始まると、何故か自然に涙が流れ始めた。繊細な性格故に人に近い存在だったのかも知れない。一人取り残されたような気持ちになってしまった。人の死と同じく、その不在の感覚にはまだ慣れていないことに気付かされる。
道端に咲いていた桜草

記録を更新し続ける世界の債務

2017-07-01 19:16:22 | 経済
国際金融協会The Institute of International Financeが2017年の最初の4半期の世界債務を報告している。全世界の債務は271兆ドルとなり、記録を更新し続けている。世界のGDPの327%にもなった。15年前の2002年には86兆ドルでGDPの246%であった。2007年は149兆ドル、276%、2012年は205兆ドルで305%となっている。GDPはいわば所得であり、世界は所得の伸びを超えて債務を増やし続けている。2013年頃までは金融部門の債務が非金融部門の債務を上回っていたが、以後、非金融部門の債務が増加し続けており、金融部門の債務は中央銀行の金融緩和により、中央銀行が債務を肩代わりしている。GDP=所得を超える債務の増加スピードはいずれ限界を迎える。政府債務では日本の債務が対GDP比で突出している。先日明らかとなったように昨年の税収が1兆円前年度より減少しており、当初の予算と比べれば2兆円の減収となる。昨日には総務省が一世帯当たりの消費支出を発表し、5月までで15カ月連続減少している。政府債務は年々膨らんでいるが、税収は減少している。各国政府は失業率などを引き合いに出して、景気は上向いているとするが、その失業率の中身を見ると、単に低所得者が増えているだけである。中央銀行が超低金利や株と債券を支えることで、政府債務を助け、見かけ上の景気を演出しているに過ぎない。その演出もいつまでも続けられるわけではない。むしろ中央銀行の異常な金融緩和がなければ維持出来ない現在の世界経済こそ問題を抱えている。蟻の一穴と言うが、世界のどこかで破綻が起きれば、ドミノ倒しで、瞬く間に世界に破綻が波及して行くだろう。第二次世界大戦終了時、米国は世界の富の半分を所有していた。この時が米国のピークであり、以後、大国の斜陽化が進み、基軸通貨としてのドルはついに1971年に金本位制を維持出来なくなり、以後は印刷されたただの紙でしかないドルを印刷し続け、何度かの経済危機をもたらして来た。その危機にも何ら反省を見せず、今また中央銀行が揃って膨大な紙幣を印刷することで、実体経済を離れたバブルを生み出している。バブルが弾ければ、史上最高の世界の債務はたちまち破綻する。著名投資家の何人かが、歴史始まって以来の世界恐慌の到来を警告しているのも頷ける。
職場の裏山に咲くバラ