釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

少子化の真の問題

2017-07-14 19:13:25 | 社会
先月、内閣府は2017年版にあたる「少子化社会対策白書」を公表した。1947年から1949年までの第1次ベビー ブーム期には出生数が270万人であったが、1971年から1974年までの第2次ベビー ブーム期には210 万人となり、1975年に 200 万人を割り込み、それ以降、毎年減少し続けている。一人の女性が一生のうちに出産する子供の平均数を「合計特殊出生率」と言い、単純計算でこの値が2.0であれば、その世代の人口は維持される。実際には、人口維持のための合計特殊出生率は2.07~2.08と言われる。1974年にこの合計特殊出生率が2.05となり、人口維持水準を割り込み、以後、低下し続け、2015年には1.45までになってしまった。統計の確認出来る主要国の2015年の合計特殊出生率を見ると、高い順からフランス1.92、スウェーデン1.85、米国1.84、英国1.80、ドイツ1.50、次いで日本の1.45となり、イタリアがさらに低く1.35となっている。これらの国々も1960年代までは人口維持水準を超えていたが、その後の経済成長の鈍化や子供の養育コストの増大、結婚や出産に対する価値観の変化などで、軒並み低下した。それでもいずれの国も少子化対策を行い、1990年代後半から回復傾向にある。日本も2005年に1.26と最低となってからはごくわずかに改善して来てはいるが、他の主要国ほどの効果は見られていない。1947年の4.54から見ると、3分の1以下になっている。国の未来はまさに子供にかかっている。子供の数だけではなく、ある意味の質である教育も問題だ。近年、貧困の連鎖と言う言葉をよく目にするが、貧困家庭ほど子供の学力が低下している。東洋経済によれば、日本の中学3年生で塾に通う割合は1970年代では4割程度だったものが、現在では6割以上にもなっている。京都大学の橘木俊詔名誉教授によれば、有名私立校の灘高校では入学前に全員が塾通いしているだけでなく、入学後も78%が塾に通っている。2014年3月にお茶の水女子大学が発表した小学校6年生の全国学力テスト結果を親の年収と比較した調査によると、見事に国語も算数も年収が多いほど学力も高い結果となっている。親の収入は階層別に200万以下が最低で、最高を1500万以上とし、その間を100万単位で区切っている。収入が増えるに従い、学力も伸びていて、1500万以上の親の収入の子供の学力と200万以下の親の収入の子供では100点満点で20点の差が両教科で見られる。一方、東京大学が実施している学生生活実態調査は学部学生と大学院生をそれぞれ2年ごとに交互に調査しており、昨年は大学院生が対象で、一昨年発表された学部学生対象の調査では2014年度の親の収入は950万以上が54.8%となっている。同じ年の国税庁の民間給与実態統計調査では年収の平均が415万円であり、東京大学の調査では450万以下の収入の親は13.6%しかいない。どんな子供も環境次第で持てる能力を伸ばすことが出来る。全ての子供が同じ教育を受けられる環境を作らなければ、日本に未来はないだろう。
金糸梅によく似た未央柳 (びょうやなぎ)