釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

狼と犬

2017-07-24 19:09:01 | 科学
人の遺伝子異常の病気の一つにウィリアムズ症候群と言われる病気がある。以前は2万人に一人とされたが、近年の研究では7500人に一人と言われる。ウィリアムズ症候群では軽度ないし中度の精神遅滞が見られることが多いが、一方で、いくつかの分野で非凡な才能を発揮し、豊かな情感をもち,多弁で社交性が高い傾向がある。ところで、犬は1万年以上前に狼から進化したが、そうした進化を米国のプリンストン大学のブリジット・フォン ホルトBridgett vonHoldt助教が研究している。3年前からイヌとオオカミの社会的行動の遺伝的基盤を調べている。同じような環境で育てられても、犬と狼では人に対する「社交性」が異なっている。犬は人をよく見ていて、その指示や命令によく従う。実験で、工夫しないと開けられない箱の中にソーセージのかけらを入れ、この箱を開けられるように犬と狼を訓練した。よく知る人がいる場合、知らない人がいる場合、人がいない場合という3つの状況で犬と狼それぞれに箱を開けさせた。その結果、いずれの場合も狼が犬よりもずっと良い成績を収めた。これは狼が人への関心を犬ほど持たないことによって、箱を開けることに専念したからであった。犬は箱を開ける能力で狼に劣るわけではなかったが、人に関心を持つため、制限時間内に箱を開けられなかった。7年ほど前に同助教は米国オレゴン州立大学のモニク・ユーデルMonique Udell氏との共同研究で、犬と狼の遺伝子を調べ、犬が家畜化される過程である遺伝子に変化が生じたことを発見した。この遺伝子は人でもウィリアムズ症候群の関連遺伝子であった。犬ではこの遺伝子の近くにある他の2つの遺伝子にも変異があった。これらの遺伝子の変異が狼から犬への進化をもたらせた。歴史的にはおそらく、突然変異により、ある狼が人に対して、社交的になり、人に懐いて、人とともに生活するようになって行ったのだろう。ちょうど1年ほど前に、北上市で行われた有機栽培のイベントで、100%純粋の狼を3頭見たが、確かにのんびりとしていたが、犬のように自分から人によって来るようなところはなかった。子供が体を撫でててもされるがままで、まるで無関心であった。これまで何頭か大型犬を飼って来たが、ともかく狼の大きさには驚かされた。特に頭は巨大と言っていい。遺伝子の解析が容易になって来ると、動物や人の進化や病気もより明らかになって来る。
八重咲きになる明日香百合