釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

中央銀行の資産購入

2017-07-26 19:10:22 | 経済
日本は1990年代初頭のバブル崩壊後から、欧米は2008年のリーマンショック後から中央銀行が債券や株式を購入するようになった。今年に入って5月までだけでも世界の主要中央銀行、スイス国立銀行、イングランド銀行、日本銀国、中国人民銀行、欧州中央銀国、米国連邦準備銀行(FRB)の債券や株式などの金融資産は1兆5000億ドルにもなる。2011年から2016年の5年間に総額7兆ドルの金融資産を購入している。2008年のリーマンショック以前には中央銀行の資産は3兆5000億ドルであったが、今や15兆ドルに拡大している。世界の国内総生産GDPの38%になる。米国ではGDPは過去10年間平均年率でわずか1.33%しか増えていないのに、株価は空前の急上昇で、企業は収益の100倍以上の株価で取引を行っており、収益の200倍以上の株価で取引を行っている企業まである。日本では日経平均株価を構成する225銘柄のうち200社で、日本銀行が保有率上位10位内の大株主となっている。世界の主要中央銀行が揃って、巨大な金融資産を買い入れる状態は歴史上初めてのことである。金融資産を買い入れると言うことは、中央銀行が買い入れ時に、その分の紙幣を増刷していることになる。中央銀行がゼロ金利と金融資産買い入れを続けなければ、金融経済が維持出来ない状態になっている。米国は中央銀行が印刷した紙幣により、株式が史上最高値を更新し続けている。一見すると金融経済は盛況のようだが、一方で、各種債務も膨大になっている。昨年10月、国際通貨基金IMFは財政モニター報告を公表し、政府や非金融会社、家計が抱える2015年の総債務残高が名目ベースで152兆ドル(約1京5640兆円)と今世紀初めの2倍余りに達し、まだ増え続けていると指摘した。世界のGDPの225%に相当する過去最大の水準で、約3分の2が民間部門の債務で、残りは公的債務で世界のGDPの85%と、今世紀初めの70%未満から増加している。IMFは経済成長の鈍化が債務圧縮を妨げ、過剰債務が景気減速を悪化させるという悪循環に陥っていると分析している。米国では2008年9月の金融崩壊から現在までに家計の負債は米国GDPのほぼ80%にもなっている。特に大学教育の為に4400万人以上の米国人が学費ローン負債を1.3兆ドル以上抱えている。20年前には学生の負債総額は、300億ドル以下でしかなかった。学生の負債の増加の原因は州立大学の学費の急増にある。米国の家計の負債は学費ローンに止まらず、住宅ローン、自動車ローン、クレジットカード債務を合わせて、12兆ドルを超えている。米国国債も20兆ドルをわずかに下回るだけの巨額に達している。日米ともに大都市の中心地の地価や住宅価格が過去最高となってもいる。中央銀行の金融資産買取りは、資産価格の途方もないバブルを生み出した。政府や家計の負債が増加している中で。先陣を切って、米国FRBは保有する金融資産を縮小しようとしている。ゼロ金利政策もすでに抜け出して、何度かわずかずつ金利を上げ始めてもいる。しかし、判断を誤れば、歴史上かってない凄まじい金融崩壊へと至り、悲劇的な終焉を迎えることになる。その崩壊のきっかけは単に中央銀行の操作にあるだけではないところが怖いところだ。
時計草