釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

蒸し暑い日

2014-08-20 19:38:44 | 文化
今日は青空も見えたが、雲も多く、気温は33度まで上がり、湿度が高く、蒸し暑い日になった。風も少なく、空気にも蒸し暑さが漂っていた。今日の釜石は内陸より気温が高くなった。夕方になっても蒸し暑さは残り、あちこちで虫が鳴き始めても、あまり清々しさは感じられない。この時期は庭の花も咲いているのが少なく、ちょっと寂しいが、蓮華升麻(れんげしょうま)の白い花だけはたくさん咲いている。今日も甲子川では鮎釣りの人たちがたくさん釣りに興じていた。清流を眺めているだけでも、少しは涼しさを味合うことが出来る。
鬼灯(ほおずき)

交渉の苦手な日本人

2014-08-19 19:21:41 | 社会
今朝はやや雲が多かったが、その後は青空が大きく広がり、久しぶりのいい天気になった。昼には28度まで上がったが、風があり、熱気はないので、とても気持ちのいい風だった。昼休みに甲子川へ出てみたが、日射しの中でも風を受けて、さほど暑いとは思わなかった。連日の雨で川は水かさが増していたが、何人か鮎釣りの人の姿を見かけた。職場の裏山では晴れたせいか、ミンミンゼミがひっきりなしに鳴いていた。百日紅の花も久しぶりの日射しを受けて少しさらに開き始めて来た。帰宅時に車の窓を開けるといい風が入って来て、とても気持ちよく車を走らせることが出来た。 国の平和・安全を維持する基盤は外交にある。しかし、日本は島国であることから、他国と国境を直接接していないため、他国との交渉を怠りがちであった。日露戦争で勝利して以来、かえって驕りが生まれ、ますます外交交渉が杜撰となり、安易に軍事力に頼ることになった。江戸以来の集団主義もまたその交渉を育てることには繋がらなかった。他人と意見を異にすることが避けられる社会では交渉技術は育たない。昨年12月13日に公布された特定秘密保護法、今年7月1日に閣議決定された集団的自衛権行使によって政府は日本を戦争の出来る国にしようとしている。アジアの近隣諸国と領土問題を抱える中で、日本の安全をむしろ危うくするような緊張を高めている。相変わらず、外交交渉の道を捨て、軍事力に頼る旧来の道を歩もうとしている。先日、内戦中のシリアで日本人男性が拉致された。東京新聞によれば、2003年のイラク戦争を契機にイスラム武装勢力が抱く日本の印象が変化してきたと言う。武装勢力の間で、自分たちと敵対する米国の同盟国である日本も、自分たちの敵だ、との認識が強まっているのだと言う。2004年には24歳の日本人男性がイラクで拉致死亡しており、2005年には同じくイラクで英国系警備会社の日本人男性が銃撃を受け死亡している。昨年1月にはアルジェリアのガス田でイスラム武装勢力に拘束された後、治安当局との銃撃戦で10人の日本人が犠牲になっている。現政権の集団的自衛権の短期的な狙いは米国との共同歩調をとった軍事行動だ。イスラム圏との外交交渉を十分果たすことなく、こうした軍事行動を優先することでイスラム圏で活動する日本人の安全はますます危機的になって行くだろう。さらには、実際に軍事行動に出動させられる自衛隊員自体にも自衛隊の役割の変容が違和感をもたらすだろう。戦争シミュレーションの世界的なエキスパートであり、軍事及び戦史研究者で、米国国防総省、防衛分析研究所、大学などで教鞭をとっているジェイムズ・F・ダニガンJames F. Dunniganはその著書『新・戦争のテクノロジー』で「戦争では勝利者などいない。この事実が往々にして忘れられる。戦争を始めるのは簡単だが、続けるには金がかかり、終わらせるのは難しい。」と述べている。現代の戦争は犠牲者を増やすだけの泥沼であり、明確な終わりがない。それをもたらすのは唯一外交交渉しかない。であれば、始めから外交交渉で臨めばいいのだ。まして、今の日本に軍事費を増大させる余裕などないはずだ。
藪蘭 山菅とも呼ばれる

前時代の教育が続けられている

2014-08-18 19:12:44 | 社会
朝は小雨が降っていたが、その後少し青空が広がった。今日も最高気温は22度ほどだった。どうやらもう30度を超す夏の気温は戻っては来ないようだ。職場に隣接する醤油工場の裏山の百日紅はしばらく前に開き始めたままお盆が過ぎてもそのままさらには開いては来ていない。やはり、気温や日射しのせいなのだろうか。薬師公園からは今日もウグイスの声が聞こえて来た。日中はミンミンゼミが鳴き、夕方からはヒグラシと草むらの虫たちの音が聞こえて来た。 1985年には雇用の16.4%でしかなかった非正規雇用はその後のバブル崩壊で、企業が容易に雇用調整できずに苦しんだことから、1990年代後半から増え始め、2005年には1985年のちょうど倍になる32.6%にも拡大した。そして、2013年には36.7%まで増えている。労働者の3分の1を超えている。25歳から34歳の年代別で見ると、1993年に12.0%であった非正規雇用の割合が2013年には27.4%となっている。さらに15歳から24歳では1993年の11.5%から2013年の32.3%と約3倍になっている。年代別ではこの若年層での拡大率が高く、これが10年先、20年先の日本の労働の質に大きく影響して来る可能性がある。一方、高等教育面で見ると、日本の人口1000人当たりの大学院学生数は2人に対して、韓国6人、英国とフランスは8人、米国は9人である。米国国際教育研究所 「Open Doors」によると、2009年度のハーバード大学の学部学生数は日本は29264人しかおらず、韓国は75065人、中国98235人、インド103260人となっており、日本は15年間減り続けており、2009年秋の学部入学者はわずか1人であった。2008年の大学進学率も日本は49%であるのに対して、英国56%、米国63%、韓国は71%である。また25歳以上の大学入学者は2008年のOECDのデータでは各国平均が21.4%にもなるのに対して、日本はわずかに1.7%でしかない。韓国17.9%、英国19.2%、米国20.9%である。大量生産・大量消費の時代の物造りで企業が整備した社内教育制度は集団に溶け込む非個性的な人材を養成することに注がれた。しかし、今やその物造りの産業は保護産業に衰微して来ている。エコカー、太陽電池・蓄電池などの新産業、新分野を開拓して行くためには、個性のある人材の育成が必須である。産業構造の転換にはそこに働く人々もこれまでの集団主義的な教育ではなく、豊かな発想を持った人材の育成に転換して行かなければならない。それはまた現在の日本の教育の在り方にも変革を求めるだろう。少子化と言う絶対数の激減を控える上に、その教育の質の低下にも歯止めがかけられていない。
今もなお咲いて来ている薬師公園の紫陽花

盆踊りの音が聴こえて来た

2014-08-17 19:28:33 | 文化
今日も昨日と同じく前線の停滞で、一日小雨が続いた。最高気温はやはり22度で、夜中は20度を切っている。庭の花たちもしばらく日射しを受けていないせいか、花の開きが良くない。近所の木槿(むくげ)の花も同じようだ。小鳥たちの声も少なく、セミもわずかにミンミンゼミの声が聞こえて来ただけだ。今日でお盆で里帰りした人たちもほとんど去って行っただろう。夕方にはどこか近くで催されている盆踊りの囃子の音が聴こえて来た。連日の雨のお盆であったが、そんな雨の中でも盆踊りをするところがあるのだろう。
雨露のついた朝顔

送り火の日

2014-08-16 20:08:19 | 文化
今日も朝から曇天で時折小雨の降る一日だった。最高気温は昨日と同じく22度で、朝は半袖だとやや肌寒くさえ感じた。庭では蓮華升麻(れんげしょうま)の愛らしい白い花がたくさん咲き、額紫陽花もまだ1輪だけ咲いている。雑草の中で水引の花があちこちで咲いている。今日はさすがに野鳥たちもほとんど姿を見せない。セミの声も午前中にわずかに聴こえて来ただけだ。早いものでお盆もあっという間に過ぎて、午後の国道には他府県ナンバーの車がたくさん遠野方向へ走っていた。暗くなると近所の玄関先で送り火のほのかな灯りが揺らめくのが見られた。
水引の花

敗戦の日が今年も訪れた

2014-08-15 19:23:09 | 社会
今日は朝は曇っていたが、昼前から雨が降り出し、雨が続いた。最高気温は22度で暑さはなく、もうこのままあの夏の暑さは戻って来ないのかも知れない。往来する車はほんとうに他府県ナンバーが多くなった。今日は太平洋戦争の敗戦の日なので正午には黙祷のサイレンが響き渡った。悲惨な戦争の終結の日が毎年繰り返しているが、その記憶は年毎に忘れられ、また今その同じ道の方向に進み出している。国を支えるのは人であり、その人が豊かさを失いつつあり、さらには今後急速に数を減らして行く。にもかかわらず、日本は「戦争の出来る国」になろうとしている。現在の若い世代の未来はとても暗いものになりそうだ。
庭の蓮華升麻(れんげしょうま) 日本の固有種の山野草

放置される少子化対策

2014-08-14 19:20:31 | 社会
今日も高い雲が多く流れる日となり、午後に少し日が射す程度であった。最高気温は25度で、吹く風がもう秋を思わせた。職場の裏山からはウグイスとメジロの声が聞こえて来た。昨夜も外へ出てみると、秋の気配をもう感じられた。虫たちが鳴き、風も熱さを失っていた。職場に隣接する醤油工場の裏山の桜は釜石では最も早く咲くが、その桜の木の隣りの百日紅(さるすべり)の花は今ようやく開き始め、百日紅では釜石で最も遅く咲いて来ている。 今年6月、厚生労働省は2013年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に生むとされる子供の人数)を発表した。合計特殊出生率は、2005年に最低の1.26を記録したが、その後は横ばいから若干上向きとなった。2013年の合計特殊出生率は前年より0.02高い1.43となった。2年連続微増している。30歳代の女性を中心に第2子、第3子も含めた出生率が高まったのが要因だ。しかし、出生数は前年より7400人減り、過去最少の102万9800人となっている。死亡数は1万2000人増の126万8400人であるため、相変わらず人口減少は続いている。諸外国の2013年の合計特殊出生率を見てみると、フランスの2.01(但し、出産の55%は非嫡出子)、英国の1.92、スウェーデンの1.91、米国1.88、イタリアは日本と同じ1.43、ドイツは1.42、お隣の韓国は日本よりさらに低く、1.19となっている。世界の主要国(米国、フランス、スウェーデ ン、英国、イタリア、ドイツ)では1960年代までは、すべての国で2.0以上の水準であった 。その後、1970年から1980年頃にかけて、全体として低下傾向となった。その主な要因は子どもの養育コストの増大、結 婚・出産に対する価値観の変化、避妊の普及等があったと言われている。日本が人口を維持するために必要な数値は2.07だと言われている。米国文明の転換、アラブの春など、いくつかの出来事を予見したフランス国立人口統計学研究所(INED)の歴史人口学のエマニュエル・トッド Emmanuel Todd氏は、本年4月に来日した際、「東京に来るたびに、日本人は完璧なまでに見事に少子高齢化という「衰退」を楽しんでいるかのように感じる。過去10年、少子化問題が騒がれている割に、少しも変わっていない。」と述べている。そして「フランスや北欧だけでなく、ロシアだって少子化対策の行動をとっている。その結果、出生率は1.3から1.7へと上昇している。日本でも明治維新と同じくらいの革命的な政策をとるべきだろう。」と付け加えている。フランスは主要国の中で最初に少子化問題に手を付け、成功している。同氏によれば、少子化の解決策は、国による家族支援が最も効果を発揮し、フランスでは政府の教育費補助によって、幼稚園から大学までほとんど無料になっており、特に中流階級の女性が国から手厚い援助を受けていることが出生率上昇の背景にあると言う。しかし、格差の広がりにより日本では中流階級が減少しており、購買力平価で見た実質最低賃金は2013年のデータでは日本は6.61米ドルで11位となっている。フランスは10.63米ドルでルクセンブルグに次ぐ2位である。英国8位、米国は日本よりわずかに多い7.11米ドルで10位となっている。国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集(2013年)」によると、2010年の生涯未婚率は男性が20.14%、女性は10.61%であった。生涯未婚率とは「45~49歳」と「50~54歳」未婚率の平均値から、「50歳時」の未婚率(結婚したことがない人の割合)を算出したものだ。今後も晩婚化(結婚の遅れ)や非婚化(生涯結婚しない人)の増加により、この数値がさらに高くなることが予想されている。これらのことを考慮すると、現在の日本の少子化対策は、トッド氏の言うように単に子供の教育費の無償化に留まらず、実質賃金の上昇が必須条件となる。結婚に関しては確かに価値観の大きな変化は影響していると思われるが、何より、結婚しようにも生活が成り立たないことの方が今の日本では生涯未婚率の上昇の大きな要因となっている。国立社会保障・人口問題研究所の人口推計では2060年には日本の総人口は8674万人になってしまう。統計学の土居英二静岡大学名誉教授によれば、2000年と2050年の各都道府県の人口を推計・比較すると、秋田、和歌山、青森の3県については、それぞれ人口が2000年比42.7%、47%、49.3%と、半分以下となり、その他、岩手、山口、長崎、島根、山形、高知、新潟、愛媛、奈良、徳島、福島、宮崎、鹿児島までが、2000年比で50%台になり、地方では社会的インフラの維持も困難となり、地方の荒廃が極端に進んで行くとされる。政府に何をさておいても最優先されるべきは国の盛衰を左右するこの少子化対策なのだ。
庭の露草

迎え火

2014-08-13 20:17:15 | 文化
朝から青空が見えたが、西の愛染山の山頂付近には雲がかかっていた。晴れてはいたが雲の多く流れる日となった。日中の最高気温は31度まで上がった。しかし、日射しが雲で遮られたせいか、動かないでいるとさほど暑くはなかった。市街地の国道を走る乗用車にも他府県ナンバー多くなり、釜石へ帰省して来た人たちを思わせた。甲子川ではお盆休みに入った人たちがいるせいか、鮎釣りの人たちをいつも以上に多く見かけた。夕方、西の山影に日が沈む頃、犬を連れて、甲子川の堤に出ると、薄い夕焼けが西の空に見えた。今日はヒグラシの声を聞かない。日が落ちて暗くなって来ると、家の近所の玄関先では次々に迎え火が炊かれていた。亡くなった記憶に残る人々を各戸で迎え入れるのだ。東北ではこうした古くからの仏教の風習が今も生きている。仏教とは離れても、亡くなった人たちをこうして偲んでいるのだろう。
女郎花(おみなえし) 秋の七草の一つ、万葉集の大伴家持の歌に詠われている

最古の土器と稲作

2014-08-12 19:18:49 | 歴史
午前中たまに日が射したが、今日も曇天で、午後には少し雨も降った。気温は27度まで上がったが、あまり暑さは感じなかった。朝や夜は20度近くに下がってくれるので、とても凌ぎやすい。もうお盆が近づいているので、釜石の夏はこれで終わってしまうのかも知れない。職場の裏山には今日もメジロの群れが来ていた。午前中にはミンミンゼミが鳴いていた。昼休みに忘れ物をしたため、一度家に帰ったが、途中の国道沿いの山裾からは久しぶりにアブラゼミの声が聞こえて来た。何匹もいるようだった。 かっては日本の縄文土器が世界最古の土器とされていたが、近年、中国で新たな遺跡から発掘された土器の年代測定により、中国長江中流域の南部で最初に土器が作られたと考えられるようになって来た。広西省チュワン族自治区桂林廟岩遺跡や同柳州大龍潭遺跡からは2万年前にまでさかのぼる土器が発掘され、江西省万年県仙人洞遺跡・吊桶環遺跡、湖南省道県玉蟾岩遺跡からは1万8000~1万7000年前にさかのぼる土器が発掘されている。日本では青森県外ヶ浜町の大平山元I遺跡から発掘された1万6500年前の縄文時代草創期のものが最も古い土器になる。同遺跡から発掘された石鏃も同じく日本では最も古いもので、最古の弓矢の使用となる。この土器は茨城県ひたちなか市の後野遺跡から発掘された土器と同じく文様のない無文土器である。ロシアのアムール川流域グロマトウハ遺跡からは1万5000年前の土器が発掘されている。これら中国やロシア、日本列島の古い土器の作られた時期は最終氷期にあたり、いずれの土器も出土地点が森林地帯に近接して分布することから、これらの土器は港川人やワジャク人のような小柄な森の民によって最初に作られたと考えられている。最古級の土器が発掘された中国の玉蟾岩遺跡では4粒の稲籾も発見されており、稲籾そのものの年代ではなく、稲籾を含む地層中の炭片の測定値が1万5300~1万4800年前とされているところから、今のところ、稲作はその頃始まったとされているが、稲籾そのものの測定により、稲作が1万8000~1万7000年前に始まった可能性が出て来る。これまで中国最古の稲作遺跡とされていた長江下流域の浙江省河姆渡遺跡の7600~7030年前よりも、長江中流域の稲作の起源は古いと考えられるようになっている。確実に稲作が行われていたとみなされる湖南省常徳市澧県の澧陽平原の八十遺跡や彭頭山遺跡からはそれぞれ、7800~7600年前の籾殻、8650~7900年前の炭化米が出土している。土器製作も稲作も中国長江中流域で開始されたようだ。
甲子川沿いにはもうススキの穂が見られるようになった

超高速カメラの開発

2014-08-11 19:22:37 | 文化
今日は曇天で、日中時々雨が降った。最高気温は28度になった。珍しく、職場の裏山でツクツクボウシが鳴くのが聞こえた。あたりにはメジロたちが群れをなして来ていた。昼休みに甲子川へ出てみると、川はかなり増水していた。川の中州からはウグイスの声が聞こえて来た。昨夜は風も強かったが、四国の台風と比べると、ありがたいことにずっと穏やかだ。結局、しかし、台風の影響で、震災後初めての本格的な「釜石よいさ」祭は中止となった。 今日の共同通信によれば、10日付の科学誌ネイチャーフォトニクス電子版に、1兆分の1秒よりも短い時間ごとの連写撮影ができる世界最高速のカメラを東京大学と慶応大学の共同研究チームが開発したと発表された。1兆分の1秒(1ピコ秒)は、1秒で地球を7周半もする光が0.3mmしか進まないほどのわずかな時間だと言う。通常、個人でもよく使われるカメラでは世界最速のものは現在Nikonから出ているカメラで、1秒に20コマ、焦点を固定した場合は60コマ撮影出来る。今回開発されたカメラは1秒間に1兆コマ以上撮影出来る。こうした超高速カメラはこれまで機械または電気式のシャッターを使って画像を読み取っていたため、10億分の1秒(1ナノ秒)の撮影が限度だった。しかし、今回のカメラでは1秒に1兆回以上点滅するフラッシュに相当する光をさらに波長ごとに細かく分けて、次々に被写体に当て、連写画像を得る仕組みだと言う。研究チームは、金属化合物の結晶にレーザーを照射し、熱の伝わり方を世界で初めて連写撮影することに成功した。熱は秒速5万キロで波のように伝わったことが確認された。こうした超高速カメラは人の目では確認出来ない超短時間の変化を可視化出来る。高速に撮影したものをスローモーションで見ることでそれが可能となる。産業分野や医療分野、研究分野でのメリットは多大だ。産業分野では溶接や燃焼、歪みや変位、自動車の衝突安全、気体や液体などの流体の動き、X線を使って製品内部の動きを見るなど応用範囲は広い。研究チームの中心は若干39歳の東京大学 大学院理学系研究科化学専攻物理化学講座合田圭介教授だ。同教授は2年前に教授に就任している。早稲田大学を中退後、素粒子論を学ぶためカリフォルニア大学バークレー校理学部物理学科へ入学し、首席で卒業後マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得し、研究に対して数々の賞を受賞している。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で研究していた2009年にはすでに毎秒610万コマの撮影が可能な当時の世界最速のカメラを開発している。こうした若い優秀な研究者は残念ながら日本の大学では育ちにくい。米国は才能ある研究者にはさすがにいい環境が提供されており、それが米国の魅力となって、現在も世界中から優秀な研究者が集まって来ている。東京大学も出身校を問わずこうした優秀な研究者を招くことで、後継者を育てる道を模索しているようだ。すべての大学が本来こうした体質に変わらなければ、日本の大学の研究も新興国にさえ遅れをとるようになってしまうだろう。
糊空木(のりうつぎ) 紫陽花の仲間で、岩手の山では自生しているものをよく見る