釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

超高速カメラの開発

2014-08-11 19:22:37 | 文化
今日は曇天で、日中時々雨が降った。最高気温は28度になった。珍しく、職場の裏山でツクツクボウシが鳴くのが聞こえた。あたりにはメジロたちが群れをなして来ていた。昼休みに甲子川へ出てみると、川はかなり増水していた。川の中州からはウグイスの声が聞こえて来た。昨夜は風も強かったが、四国の台風と比べると、ありがたいことにずっと穏やかだ。結局、しかし、台風の影響で、震災後初めての本格的な「釜石よいさ」祭は中止となった。 今日の共同通信によれば、10日付の科学誌ネイチャーフォトニクス電子版に、1兆分の1秒よりも短い時間ごとの連写撮影ができる世界最高速のカメラを東京大学と慶応大学の共同研究チームが開発したと発表された。1兆分の1秒(1ピコ秒)は、1秒で地球を7周半もする光が0.3mmしか進まないほどのわずかな時間だと言う。通常、個人でもよく使われるカメラでは世界最速のものは現在Nikonから出ているカメラで、1秒に20コマ、焦点を固定した場合は60コマ撮影出来る。今回開発されたカメラは1秒間に1兆コマ以上撮影出来る。こうした超高速カメラはこれまで機械または電気式のシャッターを使って画像を読み取っていたため、10億分の1秒(1ナノ秒)の撮影が限度だった。しかし、今回のカメラでは1秒に1兆回以上点滅するフラッシュに相当する光をさらに波長ごとに細かく分けて、次々に被写体に当て、連写画像を得る仕組みだと言う。研究チームは、金属化合物の結晶にレーザーを照射し、熱の伝わり方を世界で初めて連写撮影することに成功した。熱は秒速5万キロで波のように伝わったことが確認された。こうした超高速カメラは人の目では確認出来ない超短時間の変化を可視化出来る。高速に撮影したものをスローモーションで見ることでそれが可能となる。産業分野や医療分野、研究分野でのメリットは多大だ。産業分野では溶接や燃焼、歪みや変位、自動車の衝突安全、気体や液体などの流体の動き、X線を使って製品内部の動きを見るなど応用範囲は広い。研究チームの中心は若干39歳の東京大学 大学院理学系研究科化学専攻物理化学講座合田圭介教授だ。同教授は2年前に教授に就任している。早稲田大学を中退後、素粒子論を学ぶためカリフォルニア大学バークレー校理学部物理学科へ入学し、首席で卒業後マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得し、研究に対して数々の賞を受賞している。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で研究していた2009年にはすでに毎秒610万コマの撮影が可能な当時の世界最速のカメラを開発している。こうした若い優秀な研究者は残念ながら日本の大学では育ちにくい。米国は才能ある研究者にはさすがにいい環境が提供されており、それが米国の魅力となって、現在も世界中から優秀な研究者が集まって来ている。東京大学も出身校を問わずこうした優秀な研究者を招くことで、後継者を育てる道を模索しているようだ。すべての大学が本来こうした体質に変わらなければ、日本の大学の研究も新興国にさえ遅れをとるようになってしまうだろう。
糊空木(のりうつぎ) 紫陽花の仲間で、岩手の山では自生しているものをよく見る