釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

放置される少子化対策

2014-08-14 19:20:31 | 社会
今日も高い雲が多く流れる日となり、午後に少し日が射す程度であった。最高気温は25度で、吹く風がもう秋を思わせた。職場の裏山からはウグイスとメジロの声が聞こえて来た。昨夜も外へ出てみると、秋の気配をもう感じられた。虫たちが鳴き、風も熱さを失っていた。職場に隣接する醤油工場の裏山の桜は釜石では最も早く咲くが、その桜の木の隣りの百日紅(さるすべり)の花は今ようやく開き始め、百日紅では釜石で最も遅く咲いて来ている。 今年6月、厚生労働省は2013年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に生むとされる子供の人数)を発表した。合計特殊出生率は、2005年に最低の1.26を記録したが、その後は横ばいから若干上向きとなった。2013年の合計特殊出生率は前年より0.02高い1.43となった。2年連続微増している。30歳代の女性を中心に第2子、第3子も含めた出生率が高まったのが要因だ。しかし、出生数は前年より7400人減り、過去最少の102万9800人となっている。死亡数は1万2000人増の126万8400人であるため、相変わらず人口減少は続いている。諸外国の2013年の合計特殊出生率を見てみると、フランスの2.01(但し、出産の55%は非嫡出子)、英国の1.92、スウェーデンの1.91、米国1.88、イタリアは日本と同じ1.43、ドイツは1.42、お隣の韓国は日本よりさらに低く、1.19となっている。世界の主要国(米国、フランス、スウェーデ ン、英国、イタリア、ドイツ)では1960年代までは、すべての国で2.0以上の水準であった 。その後、1970年から1980年頃にかけて、全体として低下傾向となった。その主な要因は子どもの養育コストの増大、結 婚・出産に対する価値観の変化、避妊の普及等があったと言われている。日本が人口を維持するために必要な数値は2.07だと言われている。米国文明の転換、アラブの春など、いくつかの出来事を予見したフランス国立人口統計学研究所(INED)の歴史人口学のエマニュエル・トッド Emmanuel Todd氏は、本年4月に来日した際、「東京に来るたびに、日本人は完璧なまでに見事に少子高齢化という「衰退」を楽しんでいるかのように感じる。過去10年、少子化問題が騒がれている割に、少しも変わっていない。」と述べている。そして「フランスや北欧だけでなく、ロシアだって少子化対策の行動をとっている。その結果、出生率は1.3から1.7へと上昇している。日本でも明治維新と同じくらいの革命的な政策をとるべきだろう。」と付け加えている。フランスは主要国の中で最初に少子化問題に手を付け、成功している。同氏によれば、少子化の解決策は、国による家族支援が最も効果を発揮し、フランスでは政府の教育費補助によって、幼稚園から大学までほとんど無料になっており、特に中流階級の女性が国から手厚い援助を受けていることが出生率上昇の背景にあると言う。しかし、格差の広がりにより日本では中流階級が減少しており、購買力平価で見た実質最低賃金は2013年のデータでは日本は6.61米ドルで11位となっている。フランスは10.63米ドルでルクセンブルグに次ぐ2位である。英国8位、米国は日本よりわずかに多い7.11米ドルで10位となっている。国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集(2013年)」によると、2010年の生涯未婚率は男性が20.14%、女性は10.61%であった。生涯未婚率とは「45~49歳」と「50~54歳」未婚率の平均値から、「50歳時」の未婚率(結婚したことがない人の割合)を算出したものだ。今後も晩婚化(結婚の遅れ)や非婚化(生涯結婚しない人)の増加により、この数値がさらに高くなることが予想されている。これらのことを考慮すると、現在の日本の少子化対策は、トッド氏の言うように単に子供の教育費の無償化に留まらず、実質賃金の上昇が必須条件となる。結婚に関しては確かに価値観の大きな変化は影響していると思われるが、何より、結婚しようにも生活が成り立たないことの方が今の日本では生涯未婚率の上昇の大きな要因となっている。国立社会保障・人口問題研究所の人口推計では2060年には日本の総人口は8674万人になってしまう。統計学の土居英二静岡大学名誉教授によれば、2000年と2050年の各都道府県の人口を推計・比較すると、秋田、和歌山、青森の3県については、それぞれ人口が2000年比42.7%、47%、49.3%と、半分以下となり、その他、岩手、山口、長崎、島根、山形、高知、新潟、愛媛、奈良、徳島、福島、宮崎、鹿児島までが、2000年比で50%台になり、地方では社会的インフラの維持も困難となり、地方の荒廃が極端に進んで行くとされる。政府に何をさておいても最優先されるべきは国の盛衰を左右するこの少子化対策なのだ。
庭の露草