いいえありません…そう答えてしまう表題作は、梶井基次郎の「桜の下には〜」の想起シーンから始まる。病弱な同僚に苦しむ若い女性が主人公。特徴的なSNS書込みと最後のオチが面白かった。「あたしの幸せな生活」は、派遣社員とプロのコスプレをしている鬱々とした女性と、その仕事先の女性2人の視点の話。続く「夢」は「あたしの〜」に登場した鬱々女性と思える視点で、なんか拷問を続ける夢の話。最後の「とある縁切り神社にて」は縁切り神社でバイトするの女性の祖父の戦時中の話。因果応報って感じの作品たちですが、すっきりはしません。
ピラミッドキャップ後編の本作は、前編の後バラバラになった面々がそれぞれの理由で今度はエジプトに向かう感じで始まる。登場人物は基本的に前編と同様だが、なんだか分からないうちに月が地球に近づいて、いずれ地球にぶつかってしまうことが判明する。いうまでもなく大変なことだ。どうやらそれを引き起こしているのはピラミッドキャップみたいで、その持ち主であるジーモン辺境伯と対決する感じで、ICPOもホテルベルリンも皇帝も怪盗も考古学者も手を結んでいくのです。ああ、思いもかけないSFチックな展開がとんでもなく面白かったです。
午前中の派遣とムーバーイートを続けるあすみ。次の派遣先は望み薄い感じ。友達のミルキーの壮絶な過去。豊加と最後に大爆発の喧嘩。気晴らしに出かけた先で連絡を受けるのです。日々がんばるあすみとテンポよいストーリーがとても面白いと思います。続きが楽しみです。
シリーズ第2弾。タイトルからしてもしかして衣相が主人公なのかとも思ったが、別にそういうわけでもなく、普通に相衣と輔が主人公でした。舞台は九州の壱岐、対馬。なんだかよく分からない不可能事件の捜査を依頼されるのです。前回に比べて、AIならではのトリック(というか、ひどい設定)もあったりします。盛り上がりはやはり相衣の推理のシーン。普通解けるはずのない謎だが、AIならまあ可能なのかもと思ってしまう。まだ続きがあるので、読み進めていきます。
シリーズ第5弾。ケイは片桐穂乃歌という眠り続ける女性の夢の世界にいく。今回は春埼だけでなく野ノ尾も一緒に行くのだが、野ノ尾には別の目的がある。そこではチルチルという神様がいて、なんでも願いを叶えてくれる。片手の楽園(ワンハンドエデン)というわけだ。相麻が裏にいて、なんだか分からないがシナリオを見ろという。謎の管理局員である浦地や、あの非通知くん、キットカット好きな宇川沙々音も登場。なんだか穂乃歌のミチルやチルチルそっちのけで盛り上がっていくのです。さあいよいよクライマックスが近い感じで続きが楽しみです。
なんとも黒く濁ったような雰囲気の作品が3つ。「うさぎと蜘蛛」は結婚相談所で働く毒吐きサエちゃんの話で150ページくらい。一番面白かったが最後はちょっと意味がよく分からなかった。2つ目の「コールセンター」はコールセンターでクレーマーに対していつのまにか逆に脅迫をしていく様子を描いた20ページくらいの作品。最後の表題作は70ページくらいで、コンビニで働く女性が嫌な客に消えて欲しい一心で縁切り神社でしにがみさんに願い事をする話。ブラックでファンタジーな結末が印象に残るのでした。
森若さんのようなしっかりものの派遣社員なのだろうと思って読み始めたが全然違ってて、彼氏に騙されたり、周りに流されてしまったりする弱々しい女性が主人公。結婚するつもりで退職したら彼氏に逃げられて、いろいろ買い物したり引っ越したりしてお金がなくなって貧困生活。なんか、読んでてハラハラするのです。でも、家計簿をつけながら、紆余曲折しながらも少しずつ前に進んでいく感じです。最後の章でやっと元彼と縁が切れたのか、それとも今後も続くのか。ともかく、続きが楽しみです。
太平洋戦争末期の日本が舞台。なんだか分からないが、瑞宝(みずのたから)という神宝の探索をする話。神事本紀という古書が見つかり、その内容が紹介される章が4つあるのだが、その内容が人の心情などが含まれた普通の文章で、なんだか雰囲気が壊れる。特に最後のはおばあちゃんの記憶を語ったにしては細かすぎて、違和感大でした。ぐいぐい引く感じのストーリーはいつもの機本伸司さんらしいが、主題もなんかよく分からないし、いまいちだと感じた。
なんとも切ない物語と、わりと先の読めない展開に、ぐいぐい引き込まれていきました。これがこの著者の最初の作品らしいですね。シンプルに面白かったです。こういうピュアな少女の物語は好きだが、いったいどのような結末となるのか心配でした。比較的無難なまとめられ方だったかなと思うのです。はてさて、この後真咲はどのように成長していくのか。見てみたいような、そうでもないような心境です。まあ、読者が見ていなくても、行成がきっと月の向こうから見ていることでしょう。叔父の話の方もいい感じにまとめられていてホッとしました。
クイーンの師匠、皇帝(アンプルール)登場。かつて皇帝も盗み出せなかったピラミッドキャップという秘宝を求めてドイツの古城「あべこべ城」で行われる仮面舞踏会に魅力的な登場人物たちが勢揃いする。ICPOの探偵卿ヴォルフと上司ルイーゼ。もう一人の探偵卿は花菱仙太郎。ホテルベルリンという謎組織の総帥エレオノーラという少女と付き人のシュテラ、幹部組織ドライドラッヘンのシュバルツ、ローテ、ゲルブ。秘宝を求めるモーリッツ教授と助手のレナーテ。さらにはヤオズ。最初の方にチラッと岩清水、上越、黒田の登場もうれしい。