毎日適当

ガンプラを作って保存するためのブログです。映画を見たりアニメをみたりもしてたり。

ツトムの夜の散歩 その5

2013-10-08 19:32:21 | ショートストーリー
「確かに神は人それぞれで形が違うものでしょう。

神は全知全能の存在であり、この世界を作り、人々がこの世界で生きていくことを可能とした方です。

しかし、あなたの神には一番大切なことがない。

それは、人を救うということです。

人はいずれ必ず死を迎えます。

死は全ての終わりだと思いますか?

違います。死は全ての始まりなのです。

神を否定しても、何も得られません。

しかし、神を認めれば全てが得られます。

死に囚われず、世界を一つ上の次元から見ることができるのです。」

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ツトムの夜の散歩 その4

2013-09-30 20:51:41 | ショートストーリー
「いいえ、わたしは神を否定なんてしていません。

わたしは神を深く認識しています。

でも、神の形は人それぞれで異なるのではないですか?

私にとって神とは、宇宙そのものです。

神はこの世界を形作った。

神は私たちのような意識のある存在まで作った。

そして、その意識体に自らの存在を想像させるまでに至った。

神はこの自然界のルールそのものであり、私たち物理学者はその真理を追い求めている。

私たちは、私たちが理解できるのが神のルールのごく表面上の現象だけであることを解っている。

しかし、だからと言って、自分たちのいるこの世界のルール、神を追い求める事をやめることはできないのです。」
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ツトムの夜の散歩 その3

2013-09-27 23:39:11 | ショートストーリー
「あなたはなぜそこまで神を否定するのですか?

あなたのすぐ近くで、神はあなたが目を覚ますのを待っています。

あなたは、いずれ必ず目をさますのです。

あなたは目覚めた後、必ずそれまでの考えを改め、後悔することになる。

あなたは、そのことに気が付いているはずなのに、それでも神を否定する。

なぜなのですか?」
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ツトムの夜の散歩 その2

2013-09-26 06:24:44 | ショートストーリー
目に付いたドリンクがあり、買って飲んでみた。

それは今まで飲んだことのない甘みのあるジュースだった。

ツトムのこれまでの生活から一歩踏み出した先に、これまでにない世界が広がっているように感じた。

押しボタン式信号機の点滅と、自動販売機の光。

自動販売機の光に集まってくる夏の虫たちが時々ツトムの耳元をかすめる。

ふと、遠くから人の話し声が聞こえてきた。

小学校の校庭から聞こえてくるようだ。

ツトムは飲み終わったジュースの缶をゴミ箱に捨てて、声の聞こえてくる方向に進んだ。

どうやら、二人の男性が話しているらしい。

まだ、こちらに気付いた様子はない。

そして、二人の会話の内容が聞き取れるくらいの距離で止まった。

二人ともツトムからみるとおじいさんと言っていい位の年齢に見えた。

話している口調は二人とも穏やかだったが、真剣に話していることは分かった。
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ツトムの夜の散歩 その1

2013-09-25 20:59:00 | ショートストーリー
その夜ツトムは夜の散歩に出かけてみた。

時間は12時を過ぎていた。

ツトムは中学3年生で、その時間まで受験勉強をしていたのだ。

そんな風に夜中に外に一人で出たのは初めてだった。

家の目の前には小さい頃通っていた小学校がある。

すごい田舎なので、周りには明かりがほとんどなかった。

学校の一角を照らす外灯と、月の明かりが全てだった。

田んぼにいるはずのカエルも寝ている時間なのか、音もほとんどない。

さっきまでの自分の部屋での勉強やラジオの音が嘘のように世界から何もなくなったように感じた。

何となく不安を感じながら、小学校の横を抜けて、ナウノという店まで行ってみた。

もちろん、そんな時間には店は閉まっていた。

でも、自動販売機があり、すごく明るかった。
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ミリーの短編小説 その4

2013-09-04 23:38:16 | ショートストーリー
最初サジは少し離れたところからこちらの様子を見ていたが、ぼくとミリーがサジに気付いてから、こちらに近付いてきた。そして、ぼくを少し見た後、離れたところでミリーと二人で話していた。

でも、その後ぼくのところにきた。

「できれば、きみと話がしたい。いいかな?」

サジはルナソルマフィアの幹部らしいが、そんな雰囲気は全くなかった。どちらかというと、気さくな感じだ。でも、サジがぼくにいったいなんの用があるというのか。

「はい。」

ぼくは、こう答えるしかなかった。サジとぼくはミリーから少し離れるため、カフェの方向に足を向けた。そのとき、マリと目があった。マリはすごく心配そうに見ていたが、ぼくは、(心配ない)と伝えるため、軽く笑った。

その様子に気付いたかどうかわからないが、サジはカフェの中に入っていき、なんと、マリが座っている席に相席するように勝手に座った。マリはすごく驚いていたが、サジが話し始めたので、黙って聞くしかなかった。

「すまないが、あまり時間がないんだ。これから、君にある場所に行って欲しい。詳しく説明することはできないが、ぼくは君のことを良く知っている。実は君もぼくのことを良く知っているんだ。だから、ぼくのことを信じて欲しい。」

ぼくも、マリもあっけに取られたように何も話せなかった。するとこんどは、マリの方を向いて話し始めた。

「マリ、私は君のことも知っている。これから彼が行くところに君は一緒には行けない。なぜなら、君にもしてもらいたいことがあるんだ。」

ぼくはこの時のサジの言ったことを理解することができなかった。なぜなら、その後すぐにぼくは意識を失っていた。その時、何かビー玉くらいの大きさの赤い玉を見た。そして、それはミリーの小説内で主人公が持っていたものだと分かった。

この時の感覚はとても奇妙なものだった。自分が気を失っていくところをずっと見ていたのだ。いや、実際には見ていたわけではないのかもしれないが、それが分かったのだ。まるで、自分が主人公の小説でも読んでいるようだった。

===

その後、ずっとそのままで、自分が二人いるような感覚が続いた。マリは気を失ったぼくを心配していた。でも、ぼくの意識は深い井戸の底にでも落ちていくようだった。それは、意識を失っていく自分を見る観察者としてのもう一人の自分がいるからこそ意識できたことだ。観察者のぼくは、最初だけマリの様子を見ることができたが、やがて周りはみえなくなった。

そして、ぼくは目を覚ました。周りにはマリもサジもいなかった。もちろんミリーもいない。目を覚ましたぼくを見ていた観察者のぼくにとって、見知らぬ部屋だった。しかし、目を覚ましたぼくにはその部屋は自分の部屋だった。不思議な感覚だ。どうやら、今ぼくはぼくでない誰かになっているらしい。

観察者は観察するのみのようだ。実際に体を動かすのは、もう一人の行動する自分だ。観察者は行動者を観察し、行動者の考えも分かるが、行動者は観察者を意識できない。

ぼくは普通に生活をしているぼくを観察していた。ぼくはKタウンに住む高校生だった。それは、ミリーが転校した後に住んでいた街だと観察者は気付いた。季節は秋だった。行動者のぼくには何でもないことが、観察者には大問題だった。それは、観察者のぼくが高校2年の文化祭が始まる前だと気づいた。つまり、ミリーの短編小説はまだ誰にも読まれていないはずだ。どうやら、ぼくは過去に来ているようだった。

行動者のぼくは不思議な力があるように思った。どこからか、テレパシーのようなものを受信するのだ。それは眠りについている間など、行動者の意識が薄くなった時に観察者の意識と混信することが原因だった。しかし、行動者にはそんなことは分からないため、テレパシーのように感じるのだった。観察者はこの世界には月面都市など存在しないことに気づいた。そして、そのことは行動者にも伝わった。行動者のぼくは月面都市があるはずだというテレパシーを受信したのをすごく不思議に思った。

しばらくすると、行動者はテレパシーを通じて観察者の考えをある程度共有できるようになった。行動者は未来のことを知り、また、世界がいずれ変わってしまうことに気づいた。

行動者も高校生だった。友達にテレパシーや未来のことを話したが、誰も信用しなかった。しかし、行動者にはテレパシーが止まることはなく、世界の改変は間もなく起こってしまうことを確信していた。

そして、それは突然起こった。ある日目を覚ましたら世界は変わっていた。行動者のぼくには違和感は無かったが、観察者からのテレパシーで異変に気付いた。月面都市のルナルート、ルナコン、ルナソルがその世界には存在していた。そして、自分がルナマフィアのボスの息子になっていた。そう、ぼくはサジになっていたのだ。
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ミリーの短編小説 その3

2013-08-06 07:04:10 | ショートストーリー
ぼくは、ミリーが何を言っているのか分からなかった。ぼくは、その場を離れたくなった。でも、それではこれまでの自分と同じだ。月まで来たのに、それでは意味がない。ぼくは、ミリーが人を殺したということは置いておいて、自分がここにいる理由を話そうと思った。

「そのサジっていう人が来るまで、少しだけ話せるかな?」

ミリーはわずかにうなづいた。

「昨日、君の夢を見たんだ…」

ぼくは、昨日見た夢と今日の朝みたニュースの話をさした。そして、なぜ今日ぼくがここに居合わせたかを説明した。そして、少し間をあけて、一番気になっていることを聞いた。

「君はなぜ転校したの?」

そう、ぼくが気になっているのは、あのときぼくが話しかけた後すぐに転校したということなのだ。

ミリーはしばらくぼくを見つめた後、話し始めた。

「あなたは、わたしの書いた短編小説を覚えてる?」

ぼくがうなづき、ミリーは続ける。

「あの話は、わたしはSFのつもりで書いたの。そのとき、わたしがいた世界より未来の世界を想像して書いたの。」

そうだろうか、ぼくは確かにあの話をSFだとは思ったが、未来の話だったという記憶はない。

「わたしの描いた未来は、月面上に都市があり、地球と月の間を簡単に行き来できるような未来だったのよ。それは、いまの世界ととてもよく似ているわ。でも、わたしがあの話を書いて発表するまでは、月の上に街なんてなかったわ。でも、あの頃あなたと話していた頃を境に、世界が変わってしまったの。わたしの書いた話が現実世界に染み出してくるのよ。」

「自分が考えた話を他の人に聞かせただけで次の日にそれが現実になってしまったことは、それまでも何度かあるわ。でも、そのときのように世界そのものが変わってしまうのは始めてだったわ。」

「わたしは、怖くなったのよ。これまでの経験で、わたしを知っている人が少なくなれば、染み出してきた想像が消えてくることを知っていたの。だから、引っ越した。」

ミリーが話したことは、到底信じられるような内容ではなかった。でも、ぼくはミリーが嘘をついているなんてことは全く考えられなかった。それで、ぼくはとりあえずこう言った。

「よく解ったよ。」

===

「君が転校した理由は解ったけど…」

ぼくはこういいながら、なにひとつ理解していなかった。でもいいんだ。いまは、ミリーが言うことを聞くだけでいい。

「君はその後、どこにいたの?月に来たのはいつからなの?」

「わたしがルナソルに引っ越したのは、かなり最近になってからよ。あの後、わたしはあの街を離れて、それまで行ったこともない適当な街に住んでいたわ。そこで、サジと出会った。サジは、わたしにとっては、わたしが小説に書いた主人公だわ。それが現実の人となって、わたしの前に現れた者よ。サジは、わたしが小説に書いた通りの不思議な力を持ってるの。」

ぼくは、すごく違和感を感じた。あの主人公のモデルはぼくなんじゃないかと思ってる。それより前に部室で二人きりのときにぼくが話したときの言葉がミリーの小説に現れているからだ。でも、ミリーはそんなぼくの気持ちには気づかないで続けた。

「サジは、ルナマフィアの幹部よ。でも、最初にわたしと会ったころはただの学生だった。ただ、人の心が解ってしまったり、未来のことが少し解ってしまうらしいわ。そのことを自分で悲しんでいるし、怖がっているのよ。『人の心が解ってしまったり、未来のことが解るのは、便利かもしれないけど、すごく悲しくて怖いことだ。』って。』

そうだ、その言葉だ。それはぼくが最初に言った言葉だ。ミリーの考えでは、それはミリーの小説から染み出した言葉なのだろう。でも、最初はぼくのはずだ。

「あの、ぼくがその言葉を君に言ったのは覚えている?」

「覚えてるわ。でも、それは、あなたと話す前にわたしが小説に書いていたことなのよ。」

ミリーは少しだけ間をおき、ぼくの目を見つめた後続けた。

「いままで、わたしの小説が外に染み出したのは、その内容を他の人に知られた後だったわ。でも、あなたのあの言葉は、わたしがまだ誰にも見せていないときだったの。これって、どういうこと?」

「わたしは、二つの可能性を考えたわ。一つはあなたがわたしの見つけたルールを超えて、わたしの小説を染み出させることができるということ。二つ目はだれかがあの書きかけの小説を読んで、それが原因で話が染み出したということ。」

ぼくは、こんな途方もないことを論理的に考えていたミリーに驚愕した。しかし、ぼくはミリーの話にほとんどついて行けない。ぼくのあの言葉も、ミリーの小説から染み出したというのか?ぼくはもうわけが解らなくなった。

その時、サジが現れた。

===


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ミリーの短編小説 その2

2013-07-30 06:43:55 | ショートストーリー
ルナソル行きのバスの中で、ぼくは「希望の光」という組織をしらべた。昨日ミリーと一緒に歩いていたあの男もいろいろと調べた。

あの男はサジという名前のようだ。希望の光というのは、ルナマフィアの間で最近注目を集めている若い組織のようで、サジが中心になって活動しているらしい。

それは宗教団体のように、ある種の考えを共有する人達の間で広まったもののようだ。その目的は、はっきりと公表されていないらしい。

でも、あの有名なルナマフィアのボスであるスラ・アジアの息子というのは、確かなようだ。でも、それはあまり公表されていない情報のようだ。少なくとも、ぼくは知らなかった。

でも、ぼくは始め夢の中でそのことを知った。なぜなのか?ぼくは無意識に知っていたのか?それとも、もしかして本当にミリーからのテレパシーなのか?

でも、いまルナソルに向かっていても、ミリーからのテレパシーは届かない。睡眠中にだけ聞こえるのか?

そんなことを考えながら、ウトウトとした。ふと、後ろの方の席に見覚えのある女性が座っていた。なぜいままで気づかなかったのか?それは、マリだった。

マリは申し訳なさそうにこちらを見ていた。席がかなり離れていたし、月の周回軌道にはいるタイミングだったので席を立てなかった。でも、話はできなくても、こちらがマリに気付いたのは分かったようだ。

ルナソルのエアポートに着いてバスを降りる時になって、初めてマリと話した。マリは、今日の朝偶然ぼくをエアポートの近くで見かけ、一昨日から様子がおかしいのが気になっていたこともあり、ぼくの後を付けて同じバスに乗ったのだそうだ。

でも、ずっと隠れているのも変だから声をかけようと近くに来たのに、ぼくが全然気づかないので、困っていたということらしい。

エアポートを出て、都心行きの電車の中でぼくたちは話していた。

「あなた、ルナソルに何しに来たの?」

「…マリには関係ない。」

「関係なくはないよ。私はあなたが心配なの。今日のルナマフィアのニュースと何か関係あるの?」

これはダメだ。ぼくはそう思った。このままごまかし続けることはできない。ミリーのことを話すか?でも、どんな風に話すのか?いま、マリが一緒にいてくれることは本当はうれしかった。ぼくにとって、マリはどういう存在なのか?

もういい…。ぼくはありのままを話した。ミリーのこと、マリのこと、昨日のこと、夢のこと…。マリは、それ程驚いた様子もなく、これまでと同じような心配そうな目でずっとぼくの話を聞いてくれた。

「ぼくがこれから何をしたいのか、自分でもよくわからないんだ。でも、とにかく、ミリーに会わなきゃいけない。」

「わかったよ。でも、私もついて行っていい?話をする時は、二人きりにするから。」

ぼくは、これまでで一番マリのことを真剣に考えた。マリの自分に対する気持ちがどれほど本気であるか、良く分かった。でも、いまのぼくでは答えを出せない。

「いいよ。マリがそうしたいなら。」

ぼくはこう言った後、しばらくしてから、マリにキスした。

「ぼくはマリが好きだよ。そう言っていいのかな?」

「いいんじゃない?」

マリはそう答えた。

===

ファーストパークは、思った以上に広がった。でも、中心に高い鉄塔が立っていて、それが普通待ち合わせ場所として使われることはあきらかだった。ぼくたちは、その鉄塔が見える位置にあるカフェに入り、見張ることにした。待ち合わせ時間は聞こえなかったので、時間がもう過ぎている可能性もある。でも、ぼくたちには他にすることがなかった。

マリとは、これまで通りに他愛のない話をした。マリはぼくと過ごす時の、この他愛のない話が好きなのだそうだ。と言っても、話すのはほとんどがマリの方だが。

そのカフェでぼくは3杯のコーヒーを飲み、マリはケーキやらアイスクリームやらいろんなものを食べていた。夕方になっても、ミリーもあのサジという男も現れなかった。マリは一言も不平を漏らさず、ずっと他愛のない話をしていた。

ぼくが4杯目のコーヒーを注文した時、ミリーが店とは反対側から歩いてくるのがみえた。ぼくは、近くにサジもいるんじゃないかと思って、周りを見渡したがサジはいなかった。それで、マリに軽く目配せした後、店から出てミリーに近づいていった。

ミリーはすぐにこちらに気が付いた。でも、あまり驚いてはいないようだ。なにか、予想していたような様子だ。ミリーの前に立って、ぼくは、なんと言えばいいか言葉を失った。でも、しばらくしてこう話し始めた。

「一昨日、君を見かけてから、ずっと君を探していた。いや、本当は半年前、君が突然いなくなったあの日から、ずっと話したかった。でも、いま、ここで話をするのは危険なのかもしれない。少し場所を変えて話したいのだけど、どうかな?」

「だめ。わたしはここで、人と待ち合わせしているの。」

「それは知ってるよ。サジという人だよね?ニュースで見たよ。殺人事件の犯人かもしれない男だ。だから、場所を変えたいんだ。」

でもミリーはすごくはっきりと言った。

「サジは人殺しじゃないよ。」

妙にさめた声だった。そして、こう付け加えた。

「殺したのは私よ。」

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ミリーの短編小説 その1

2013-07-30 06:42:11 | ショートストーリー
なんとなく不安な感じがした。

ぼくは、その日ミリーを街で見かけた。その時ぼくはマリと一緒に歩いていたので、声をかけることはしなかった。ミリーは一人で歩いていた。すれちがう時、こちらを見ていた。その目がなんとなく不安そうにしているように思った。声をかければ良かったと後になってから思った。でもぼくはいつもとっさに行動がでてきない。それは、よく考えてから行動するのがくせになっているからだ。でも、そんな自分が憂鬱で不安になる。

ミリーを見たのは半年ぶりくらいだった。高校で同じ部活にいた。ぼくとミリーがいたのは文芸部だった。ぼくたちのいた文芸部では、文化祭の時に部員全員で雑誌を出版していた。2年の時、ミリーは短編小説を書いた。それは、一部の生徒の間で話題になった。その内容は、ぼくたちの高校を舞台にしたSFだった。登場人物も名前は変えてあるけど、実際の生徒や先生がモデルであることがなんとなくわかる。意図してわかるようにしているのかもしれない。でも、主人公は誰がモデルか分からなかった。少なくとも、ぼく以外の人には分からなかったと思う。でも、ぼくにはわかった。以前一度だけ部室でミリーと二人で話した会話の内容がほとんどそのまま使われていたからだ。

ぼくはなんとなくうれしかった。ミリーはあまり人と話したりはしないが、前からぼくは気になっていた。それで、部室で二人だけになったとき聞いてみた。
「ミリーの話の主人公って、ぼくをモデルにしてる?」
ミリーは少し驚いたようだった。突然ぼくが話しかけたことに驚いたのかもしれない。ミリーは何と言ったらいいのか考えているようだった。でもその後すぐに他の部員が部室に来たので、その日はミリーとはそれ以上何も話さなかった。
次の日の放課後、ぼくはいつもより早めに部室に行ってみた。そこには、ミリーがいた。他には誰もいなかった。ミリーは少し緊張した感じで、ゆっくりと言った。
「この話の主人公にモデルはいない。主人公だけじゃない。他の登場人物も、誰か特定の人をモデルにした覚えはない。似てるとしたら、それは偶然。」

ミリーはあきらかにウソをついていると思った。こんなに淡々とした話し方でなければ、冗談だと思っただろう。でも、その時のぼくはミリーに言われたこの言葉が、すごく距離を置かれているように感じ、それ以上何も言い返せなかった。
次の日、ミリーは休みだった。そして、その次の日ミリーは転校したと聞いた。

===

3年生になって、ぼくは部活を辞めた。大学入試のために、塾に行くようになっていた。マリとは、その塾で知り会った。別の高校だった。ぼくと違い、人付き合いの良い、明るい感じの子だ。その日、マリに誘われて王立図書館に行く途中だった。マリは、ぼくに好意を持っているようだった。でも、ぼくはそれに気付かない振りをしていた。ぼくは、あの日からずっとミリーのことが気になっていた。ミリーはなぜ急に転校したのか?どこに行ったのか?それなのに、その日ミリーに声をかけることができなかった。そんな自分がいやになる。
図書館からの帰り道で、ミリーを見かけた辺りを通ったとき、そこに、ミリーがいればいいと思った。しかし、もちろん、ミリーはいなかった。マリと別れ際に、マリは明日も図書館に行こうとぼくを誘った。ぼくは、用事があると言って断わった。

次の日、ぼくは一人でミリーを見かけた辺りに行ってみた。そして、その場所にしばらく立っていた。前の日ミリーを見かけたのと同じ時間になったとき、遠くをミリーが歩いて来るのが見えた。ミリーはまだ気付いていないようだ。ミリーは前の日と同じように不安そうな表情をしていた。しかし、昨日と違い、ミリーは他の男と一緒に歩いていた。ぼくは、とっさに隠れた。一緒に歩いているのは、ぼくの知らない男だった。同じ歳くらいだろう。二人が近くを通ったとき、男の言葉が少し聞こえた。明日、ルナソルのファーストパークで待ち合わせしようというような内容だった。ルナソルとは、月の3番目の都市だ。ぼくは、ミリーがどこか遠い存在になってしまったように感じた。結局、また声をかけることはできず、家に帰った。

その日の夜、ぼくは夢を見た。なぜだか、ぼくには超能力が備わっていて、ミリーからのテレパシーが聞こえるのだ。ミリーはテレパシーで、ぼくに助けを呼んでいた。あの男は、ルナソルのマフィアのドンの息子で、ミリーの不思議な力を狙っているというのだ。なんだか、すごくリアルな夢だった。

目が覚めても夢の内容は、はっきりと覚えていた。この夢はもしかしたら、本当のことなのか、そんなことをぼんやりと考えていたら、テレビにあの男の写真が出ていたのを見た。ルナの「希望の光」という組織の幹部であり、ある暴力事件の重要参考人として捜索中ということだった。ぼくは何がなんだか分からなくなった。

ぼくは携帯端末だけ持って家を飛び出した。そして、エアポートまで行き、月行きのバスに乗った。

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