今日は、社内向けにレポートした「塗料」の話を少しアレンジしたテーマでお届けしたいと思います。結構なボリュームになってしまいますので、とりあえずVol.1として昔ながらの自然塗料を取り上げます。
京町家と付き合っていくには、欠かせない塗料。どんな塗料を使うか?何度塗るのか?何に塗るのか?同じ塗料を利用しても、着色する材(樹種)が違えば全く違う表情が生まれます。だからとっても繊細です。私自身も勉強しながら、それぞれの家に合う塗料(色)を見つけたいと思っています。
まずは、染料と顔料の違い。特徴をまとめました。
【染料】
・ 化学染料がない時代は植物の根や花からつくった
・ 水や油に溶ける
・ 繊維を染めた場合、繊維の内部までしみ込んで色がつく
・ インクジェットプリンタの場合、発色が良いがにじみやすい
【顔料】
・ 化学顔料がない時代は岩や土を微細に砕いてつくった
・ 水や油に溶けない微細粉末(溶けているように見えても、実は混ざっているだけ)
・ 繊維を染めた場合、繊維の表面に色が付いている
・ インクジェットプリンタの場合、耐水・耐光性に優れていて、にじみにくい
次に日本古来から伝わる日本の伝統的な塗料の特徴をまとめました。
■漆(うるし)
天然樹脂塗料で漆の木の樹液が主成分
常温多湿で乾燥させるので時間が掛かる
硬くて、熱や湿気、酸、アルカリや油に強く、光沢があり美しいが、耐候性が悪く、紫外線を受けると劣化することが知られている。極度の乾燥状態に長期間曝すと、ひび割れたり、剥れたり、崩れたりする。
漆は粘着性の強い塗料で、その粘着性に負けないよう、女性の髪の毛をひのきの板ではさんで作られた丈夫な刷毛が使われる。
タモ 漆仕上げの施工例
ベイヒバ(透け漆5回塗り)
ホワイトアッシュ(透け漆2度塗り)
ホワイトアッシュ(濃暗色漆厚塗り)
※漆塗りは日本の伝統的な塗装方法ですが、輸入材や和風以外の空間に使用しても独特の趣が得られます。例えば、広葉樹の環孔材であるホワイトアッシュに塗装すると、光沢のある部分と光沢のない木目部分との差が明瞭になり、深く立体的な表情を楽しむことができます。
■カシュー
塗膜外観や性能が漆によく似ている
カシューナッツシェルオイルと言う、インドやブラジル産カシュー樹の実を包む殻に含まれるフェノール性油を材料とする。
塗膜や性能も漆とほとんど変わらず、光沢があり、高樹脂分のためふっくらとした肉持ち感がある。
塗料の乾燥は空気中の酸素を取り込む酸化重合であるので、漆のように湿度を必要としない為、自然乾燥または加熱乾燥が行われる。また漆と違う点としては、漆かぶれがなく、刷毛塗りの他、吹き付け塗装も可能である。
■柿渋
柿渋の主成分は高分子のタンニンで、まだ小さな青柿が原料。
未熟な渋柿の果実を粉砕、圧搾して得られた汁液を発酵させたもので、臭気を有する赤褐色半透明の液。
最近では臭気を取り除いた無臭タイプ(無臭柿渋カキタフ)も誕生している。
柿渋の色は基本的に茶系色で、他の色はない。そこで昔からべんがら、松煙などの顔料を混ぜて着色して使用された。顔料も鉱物系など天然のものでないと離反して使用できない。柿渋は天然素材でないと受け付けない性格がある。
タモ(柿渋+亜麻仁オイル仕上げ)
※塗装直後にはあまり色が出ませんが、2~3ヶ月後から色合いの変化が顕著になるという特徴があります。木自体の経年変化との相乗効果で、趣のある風合いが楽しめます。
なお、自然塗料を上塗りすることで、柿渋自体の定着と防水効果がより高まります。
■弁柄(紅殻 べんがら)
赤色顔料の一つ。酸化第二鉄を主要発色成分とする。産地であるインド北東部の地名ベンガルに因んでいる。着色力・隠蔽力が大きく、耐熱性・耐水性・耐光性・耐酸性・耐アルカリ性のいずれにも優れており、安価な上、無毒で人体にも安全なため非常に用途は多い。木材に塗る場合は、柿渋やエゴマ油に混ぜて塗る。
ナラ材
※ベンガラというと鮮やかな朱色(写真右)イメージが強いと思われますが、茶色(同中)や褐色(同左)などの種類があります。
※ベンガラの歴史は古く飛鳥時代にまで遡ります。その艶やかで美しい赤色に加えて、天然の防腐・防錆効果が得られることから、床や造作材、カウンターといった内装材の仕上げだけでなく、構造材に使用すれば耐久性を高めることもできます。
※尚、塗料自体は耐摩耗性が低いため、床や手に触れる場所に用いる際は、「拭き漆」やオイルフィニッシュを上塗りすることでベンガラの塗装面を保護、塗装の剥がれを防ぐことができます。
■松煙
樹脂含量の多い松(特に根元の部分)を不完全燃焼させてつくった煤(すす)を集めた炭素黒色顔料のことで、和墨の原料として知られている。
ベンガラや柿渋と混合して使用することで、色合いに奥行きを与えるとともに、防腐・防虫効果を高める役割も果たす。
松煙仕上げの施工例
※松煙は水に溶けにくいため、アルコール類に溶かしてから水で希釈して濃度を調整します。濃度を濃くすると、重厚感のある「古色」に仕上がり、薄くすると透明感のある黒色になって、木目を活かした仕上がりになります。仕上げにオイルフィニッシュを使用すると表面を保護し、色落ちを防ぐことができます。また、フローリングなど磨耗する可能性のある場所に使用する場合は、塗料の定着と表面保護のためウレタンコーティングを施すと良いでしょう。松煙仕上げには杉・ヒノキといった針葉樹や、広葉樹でもナラ・タモといった木目のはっきりしている環孔材が適しています。
※本日の内容は、株式会社マルホン ホームページに掲載されている写真や説明を参考に作成させていただきました。
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京町家と付き合っていくには、欠かせない塗料。どんな塗料を使うか?何度塗るのか?何に塗るのか?同じ塗料を利用しても、着色する材(樹種)が違えば全く違う表情が生まれます。だからとっても繊細です。私自身も勉強しながら、それぞれの家に合う塗料(色)を見つけたいと思っています。
まずは、染料と顔料の違い。特徴をまとめました。
【染料】
・ 化学染料がない時代は植物の根や花からつくった
・ 水や油に溶ける
・ 繊維を染めた場合、繊維の内部までしみ込んで色がつく
・ インクジェットプリンタの場合、発色が良いがにじみやすい
【顔料】
・ 化学顔料がない時代は岩や土を微細に砕いてつくった
・ 水や油に溶けない微細粉末(溶けているように見えても、実は混ざっているだけ)
・ 繊維を染めた場合、繊維の表面に色が付いている
・ インクジェットプリンタの場合、耐水・耐光性に優れていて、にじみにくい
次に日本古来から伝わる日本の伝統的な塗料の特徴をまとめました。
■漆(うるし)
天然樹脂塗料で漆の木の樹液が主成分
常温多湿で乾燥させるので時間が掛かる
硬くて、熱や湿気、酸、アルカリや油に強く、光沢があり美しいが、耐候性が悪く、紫外線を受けると劣化することが知られている。極度の乾燥状態に長期間曝すと、ひび割れたり、剥れたり、崩れたりする。
漆は粘着性の強い塗料で、その粘着性に負けないよう、女性の髪の毛をひのきの板ではさんで作られた丈夫な刷毛が使われる。
タモ 漆仕上げの施工例
ベイヒバ(透け漆5回塗り)
ホワイトアッシュ(透け漆2度塗り)
ホワイトアッシュ(濃暗色漆厚塗り)
※漆塗りは日本の伝統的な塗装方法ですが、輸入材や和風以外の空間に使用しても独特の趣が得られます。例えば、広葉樹の環孔材であるホワイトアッシュに塗装すると、光沢のある部分と光沢のない木目部分との差が明瞭になり、深く立体的な表情を楽しむことができます。
■カシュー
塗膜外観や性能が漆によく似ている
カシューナッツシェルオイルと言う、インドやブラジル産カシュー樹の実を包む殻に含まれるフェノール性油を材料とする。
塗膜や性能も漆とほとんど変わらず、光沢があり、高樹脂分のためふっくらとした肉持ち感がある。
塗料の乾燥は空気中の酸素を取り込む酸化重合であるので、漆のように湿度を必要としない為、自然乾燥または加熱乾燥が行われる。また漆と違う点としては、漆かぶれがなく、刷毛塗りの他、吹き付け塗装も可能である。
■柿渋
柿渋の主成分は高分子のタンニンで、まだ小さな青柿が原料。
未熟な渋柿の果実を粉砕、圧搾して得られた汁液を発酵させたもので、臭気を有する赤褐色半透明の液。
最近では臭気を取り除いた無臭タイプ(無臭柿渋カキタフ)も誕生している。
柿渋の色は基本的に茶系色で、他の色はない。そこで昔からべんがら、松煙などの顔料を混ぜて着色して使用された。顔料も鉱物系など天然のものでないと離反して使用できない。柿渋は天然素材でないと受け付けない性格がある。
タモ(柿渋+亜麻仁オイル仕上げ)
※塗装直後にはあまり色が出ませんが、2~3ヶ月後から色合いの変化が顕著になるという特徴があります。木自体の経年変化との相乗効果で、趣のある風合いが楽しめます。
なお、自然塗料を上塗りすることで、柿渋自体の定着と防水効果がより高まります。
■弁柄(紅殻 べんがら)
赤色顔料の一つ。酸化第二鉄を主要発色成分とする。産地であるインド北東部の地名ベンガルに因んでいる。着色力・隠蔽力が大きく、耐熱性・耐水性・耐光性・耐酸性・耐アルカリ性のいずれにも優れており、安価な上、無毒で人体にも安全なため非常に用途は多い。木材に塗る場合は、柿渋やエゴマ油に混ぜて塗る。
ナラ材
※ベンガラというと鮮やかな朱色(写真右)イメージが強いと思われますが、茶色(同中)や褐色(同左)などの種類があります。
※ベンガラの歴史は古く飛鳥時代にまで遡ります。その艶やかで美しい赤色に加えて、天然の防腐・防錆効果が得られることから、床や造作材、カウンターといった内装材の仕上げだけでなく、構造材に使用すれば耐久性を高めることもできます。
※尚、塗料自体は耐摩耗性が低いため、床や手に触れる場所に用いる際は、「拭き漆」やオイルフィニッシュを上塗りすることでベンガラの塗装面を保護、塗装の剥がれを防ぐことができます。
■松煙
樹脂含量の多い松(特に根元の部分)を不完全燃焼させてつくった煤(すす)を集めた炭素黒色顔料のことで、和墨の原料として知られている。
ベンガラや柿渋と混合して使用することで、色合いに奥行きを与えるとともに、防腐・防虫効果を高める役割も果たす。
松煙仕上げの施工例
※松煙は水に溶けにくいため、アルコール類に溶かしてから水で希釈して濃度を調整します。濃度を濃くすると、重厚感のある「古色」に仕上がり、薄くすると透明感のある黒色になって、木目を活かした仕上がりになります。仕上げにオイルフィニッシュを使用すると表面を保護し、色落ちを防ぐことができます。また、フローリングなど磨耗する可能性のある場所に使用する場合は、塗料の定着と表面保護のためウレタンコーティングを施すと良いでしょう。松煙仕上げには杉・ヒノキといった針葉樹や、広葉樹でもナラ・タモといった木目のはっきりしている環孔材が適しています。
※本日の内容は、株式会社マルホン ホームページに掲載されている写真や説明を参考に作成させていただきました。
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