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インテリアコーディネーターのブログ。
住まいのこと。インテリアのこと。仕事のこと。子どものこと。。。

1月22日 タイルのはなし

2008-01-22 | イベントレポート
昨年の11月、休日を利用して、愛知県常滑市にあるINAXライブミュージアムへ行ってきました。
INAXライブミュージアムとは、2007年1月9日にこのブログでも紹介した「土・どろんこ館」、「ものづくり工房」、「陶楽工房」、「釜のある広場・資料館」、「世界のタイル博物館」から成る一般にも開放された「観て、触れて、感じて、学び、創りだす-5つの発見館」です。
私はこの日、「土・どろんこ館」で「光るどろだんご」をつくる体験をしました。その施設では、たくさんの子どもたちから大人まで一つのどろだんごを一生懸命磨きます。
その姿は、誰も変わらない子どものよう。楽しくて、自然と笑顔がこぼれます。
館内の説明をしてくださっていたINAXの方の言葉が印象的でした。
「本来、ものづくりは、誰にとっても楽しいものだからね。」

さて、あの日から約2ヶ月が経過してしまいましたが、今日は特にタイルのはなしをしたいと思います。
私がそこを訪れたのは、偶然にも、世界のタイル博物館が11月3日にリニューアルされたばかりの頃のことでした。
施設の敷地内に足を踏み入れ、そのスケールの大きさに十分驚かされていたはずなのに、それにも増して、この世界のタイル博物館には、驚かなければなりませんでした。タイルの奥深い美しさを目の当たりにした瞬間です。
受付を済ませると、説明をしてくださるスタッフの方が出てきて下さいました。
ふと、受付のサイドに立てかけられた案内に目をやります。
・・・撮影禁止・・・
残念・・・。この素晴らしさを、存分にご紹介したかったのに。

ところで、説明のために出てきてくださった方なのですが、お会いした瞬間、なんだか初めてではないような気になりました。ネームプレートを見ます。やっぱり何かが引っかかる・・・。

館内の説明が始まりました。
まずは、装飾壁の原点、「クレイペグ」による壁面を再現した空間です。

(写真は、INAXのホームページより)

色は、ミッドナイトブルー(5PB1.5/2)、マルーン(5R2.5/6)、エクルベージュ(7.5YR8.5/4)

といったところでしょうか。
3色で幾何学に彩られた空間。クレイペグとは、もともと壁補強のために用いられた円錐状の焼き物、粘土くぎのことをいいます。今から5500年も前のこと、当時の人々がより美しくしようと考え付いたのが、この粘土くぎに着色をして装飾することでした。
メソポタミア地域、ウルクの人々はこれを200万本以上積み上げ、空間を作り上げたそうです。INAXはそれを再現すべく、当時とのように一本一本手作りでクレイペグをつくりました。この作業は、スタッフのみならず、たくさんの子どもたちを含むボランティアによって、5万本を超える「クレイペグ」がつくられ、再現されました。

冒頭から、興味深いお話しでした。
スタッフの方は、何かの資料を見るでもなく、歩きながら、そして立ち止まって説明を続けます。その内容の全てが、私にとって、初めて知ることばかり。
鞄から手帳を引っ張り出して、ペンを走らせたのは、ほとんど反射的な行動でした。
こんなに興味深い話を、ただこの瞬間の感動に終わらせたくなかった。そして、その方から出てくるこれほどの知識をその瞬間に記憶することは不可能でした。後からその時の行動に理由をつけるとすれば、おそらくそういったところでしょう。
それから、館内を一周する間、お話し頂いた内容をたっぷり書き止めて帰ってきました。
私自身の頭の中の整理と、手帳に記したことばたちの整理も含めて、以下にご紹介します。

世界最古のタイル

約4,600年前、ピラミッドの地下空間にはめ込まれていたのが世界最古のタイルだと言われています。ここで用いられているブルーの色、エジプトではブルーが「生命の色」と考えられていました。

イスラームのドリーム天井

イスラームのモスク(=イスラム教の礼拝堂)や宮殿を飾るタイル。
当時世界をリードした幾何学に基づいたタイルは、10形状から成り、10形状あればあらゆるデザインが可能だといいます。ここに再現された天井も、その色や配置を変えることで全く異なったデザインに変化します。
デザインは、平面で検討されましたが、実際に天井には360°になる必要があります。その再現に大変苦労されたそうです。

オランダのタイル

17~18世紀に、一般家庭にもタイルが登場します。それはフェルメールの絵画「ミルクを注ぐ女」の中にも、床の巾木にタイルが使われている様子が描かれています。白地にコバルトブルーで花や風景が描かれているのが特徴です。

(フェルメール 「ミルクを注ぐ女」)

イギリスのタイル

1850~1910年 アール・ヌーボー様式のレリーフタイルが特徴。
タイルの利用は、公共施設にはじまり、やがて、一般住宅に普及します。
透明感のある色調に目を奪われますが、これは原料に鉛を使って製作されたために表現することができました。現在では、環境汚染に繋がるため、製作することができないそうです。
機械によるタイルの大量生産が可能となり、1900年前後の建築ブームの中、美しい食器でお馴染みのミントンやウエッジウッドもタイルを生産していました。
(ミントン社製)

一方で、改めて手作りを評価するアーツ・アンド・クラフツ運動がおこり、全て手描きによるタイルが登場します。下のタイルは、タイル界を代表するデザイナー、ウィリアム・ド・モーガンによるもの。この他、数々の傑作を残しています。


イランのタイル

青釉のタイルが特徴。
砂漠の民には貴重な水、空の色である青を用いました。
永遠の生命や天国へのあこがれを表現したと言われています。
13~14世紀には金属の光に似た輝きを焼き物でつくりあげたラスター彩タイルが登場します。

これは、モスクなどの壁面に用いられました。確かに、とても神秘的な雰囲気のあるタイルです。

クエンカタイル<スペイン>

「クエンカ」とは土手をつくり、色を独立化したものを言います。

象嵌(ぞうがん)タイル<イギリス>

金太郎アメのように、切っても切っても色が出てくるものをいいます。

エマイユ・オンブラン手法

釉薬の厚みを変えることで微妙な色調を表現しました。タイルの表面を触ってみるとその凹凸を感じることができました。


これらが、なんとか手帳に書き留めることができたタイルのお話です。文字だけでは表現しきれないので、INAXのホームページに掲載されている画像の中から特徴的なものを利用させて頂きました。更に詳しいタイルのお話しは、http://www.inax.co.jp/museum/でご覧になれます。とても素敵なページです。

さて、やっぱりとても気になっていましたので、翌日会社の引き出しの中の名刺の束を探しました。
そして、見つけた「伊賀工場長」の名刺。
5年以上前、初めて三重県上野にあるユニットバスの工場に訪れた時に、ご説明頂いた方でした。人の顔や名前を覚えることは、あまり得意ではないハズの私。
きっとそのとき、ユニットバスの説明にも、新たな発見や驚きがあったせいなのでしょう。

振り返ってみても、たくさんの驚きに詰まった一日でした。
このブログの中で唯一、私が撮影した写真がトップに利用したタイル博物館の外観です。とてもお天気に恵まれた夕暮れ、施設を後にする時、せめて外観だけでも。と、撮影した一枚です。


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1月17日 畳のはなし

2008-01-17 | イベントレポート
1月8日、町家をトーク運営委員会主催、財団法人 京都市景観・まちづくりセンター共催のセミナー、京町家の職人さんが語る「町家の学校」へ行ってきました。
今回のテーマは「畳」です。

お話しは、その歴史から始まり、2007年を表す漢字にも選ばれた「偽」、つまり偽装問題、それから実際の畳の価格や、品種の違いなど2時間の講義の中で盛りだくさんに語られました。

そもそも、畳が一般家庭に普及し始めたのは100年程前のこと。
昔は、手織りで何日も掛けて生産されていたため、それはそれは高価なものだったそうです。ですから、現在のように部屋一面に敷き詰めるなんて、とんでもありません。
床の間や、今でいうベッドのような感覚で利用されていました。江戸時代に入り、ようやく今のような使われ方をするようになったんですね。

さて、畳と聞いてみなさんが想像される画は、どれもほとんど変わりのないものだと思います。しかし、その材質は様々です。現在では天然の藁床は影を潜め、化学床が主流となりました。これは、1970年に開催された万博の頃から普及し始めます。
この時期、高度経済成長の真只中の日本は、GNPが資本主義国家の中で2位にもなっています。
これまでの、隙間風の耐えない日本の住宅は、機密性の高い住宅に変化します。
機密性の高い住宅の中で天然の藁床は呼吸をすることができません。室内に充満した水蒸気をぐんぐん吸収し、コナダニが大発生する・・・。
年末やお盆の頃には、家中の畳を上げて、日干しをする。といった日本の文化も、経済成長をひた走る日本の企業戦士たちには、そんな余裕もありません。
そこで、虫も寄り付かない化学床が普及し始めたのだそうです。

こうして歴史を振り返ってみれば、私たちは、経済成長と引き換えに本来、受け継がなければならない日本の伝統と文化をすっかりおざなりにしてしまっていたのかも知れません。昨年は、様々なところで、偽装問題が発覚しました。畳も例外ではありません。

「畳って本来はそんなに青くないんだって?!」

ある日、自宅に帰ると夕方のニュースを目にしたばかりの母が興奮して話していたことを思い出しました。その日、ニュースで取り上げられていたものは、発がん性が指摘されている「マラカイトグリーン」という有機色素を用いて着色し、真新しい青々とした美しい姿を表現した畳でした。
お話しによると、畳業界も偽装問題は溢れているのだそうです。
「産地はどこなのか?輸入されたものなのか?とにかく、畳屋さんにアレコレ質問してみてください。」と、本セミナーの講師、磯垣タタミの代表、磯垣昇さんはおっしゃいます。
「たくさん質問して、納得できる答えが返ってこなければ、別の畳屋さんに行ってください。実際に製作者自身も、産地が偽装されていることを知らないままに、畳をつくっている人も居るのが現実です。」と、磯垣さんは続けました。
そんな時に、いつも悪者になるのは中国。特にこのような偽装問題では、必ず中国の国名を耳にします。今回のお話の中でも「中国産」の畳の粗悪さなどについても語られましたが、畳について調べるうちに、なんとなくそれだけの問題ではないことがわかりました。

私たち日本人自身が、経済成長や、利益確保とコスト削減のために、偽装を黙認し、行政が認可をしてきたもの。他国に責任転嫁をしてしまえば、国民感情はおさまるのかも知れないけれど、それは何の解決にもならないような気がしました。

これまでは、「モラル」という不確かなものを信じ、表示や認可を鵜呑みにしてきたけれど、自己責任によって、正しいものを選択する力が必要なのかも知れませんね。それはどこか、寂しいような気もしますが、それも私たち自身が築きあげた日本の歴史に他ありません。そして今、提供する側にある私は、選択を誤らない責任の重さを感じています。

さて、そんな偽装を見破るために、何を見れば良いのか?
簡単な例として、生産者シールが紹介されていました。


最近は、スーパーでも見かけることが増えましたよね。「このお米は鈴木さんの田んぼで収穫されました。」とか「このじゃがいもは佐藤さんの畑で採れました」といった生産者を明確に表示するもの。アレと同じです。生産者の名前が表示されているため、そのものに誇りがある人にしか添付することができないため、かなりの信頼性があるようです。

「偽装」というテーマから、すっかり暗いお話しになってしまいましたが、もう少し明るいテーマに移しましょう。
わたしたちは、リ・ストック京町家を通して、単純に町家を残すだけではなく、町家ならではの暮らし方、要するに文化そのものの継承も視野に入れた提案をしていこうとしています。そんな中でも畳文化は、一役を担う要素であることを確信しました。

現在流行っている縁の無い半畳、これを磯垣さんは、「勿体ない」と言われます。畳は、現在ついている畳表を裏側に返して縫う「裏返し」という方法を用いて、日焼けしていないキレイな面を出し、永く美しさを保つことができます。ところが、縁の無い「半畳」では、これが出来ないだけでなく、一枚の畳をつくる手間や技術が通常の縁がある畳に比べて必要となるため、半畳だからといってその価格が半額になるわけではありません。1帖の価格の70~80%が目安になります。
そこで「裏返し」も可能なのが「琉球畳」です。お客様の中には「縁の無い畳」を「琉球畳」と思われている方も少なくはありませんが、実際には畳表(イグサ)が違います。琉球表は、大分県国東半島で生産された七島イグサで織られた畳表です。普通のイグサは断面が丸い形をしているのに対して三角になっている、琉球で栽培されていた独特なイグサです。普通イグサは泥染めしてから乾燥させますが、七島イグサはそのまま乾燥させて織られます。かなり強い畳表で、半畳でも20,000円前後で販売されている高級品です。

「裏返し」ができるとかできないとか、ここまでのお話しに疑問を抱かれている方もいらっしゃるでしょう。私自身も、自宅に和室はありますが、「裏返し」の経験はありません。実際に、「裏返し(目安は3~5年程度。なるべく裏の状態が良い内に・・・)」→「表替え(裏返しから3~5年後が目安。使用状況や日当たりによって変わりますが)」といったメンテナンスをされているご家庭、半年に一度畳を上げて、干されるご家庭がどれほどあるでしょうか?
畳を汚さないために、上からゴザや、ラグを敷かれているご家庭も多いのでは?

そんな我が家もビッシリとゴザが敷き詰められています。
そういえば私、本物の畳の姿をお目にかかったことが無いような・・・。

「だって汚れるもん!」

と母は言います。はい。確かに汚れます。でも、それならば、本番はいつなのでしょうか?
美しい畳表を見せる発表の機会、お披露目はいつ、訪れるのでしょうか。

本来、畳の上に何かを敷くということは、畳にとってあまり良いものではありません。ダニの温床になることも然り、ゴザと畳の間にはいった細かなチリや埃とがこすられ、畳表が傷んでしまい、裏返しもできなくなってしまいます。

日に当たれば変色します。経年で傷みます。汚れもします。放っておけばダニも発生します。畳だって生きているんだから、人間と同じです。
私たち人間が、盆と正月に休むように、畳も半年に一度は風にあて、太陽にあて、リフレッシュさせてあげる。
汚れた衣服を着替えたり、傷んだ衣服を買い換えるのと同様に、裏返し、表替えをして美しく保つ。手入れを怠らなければ、永く気持ちよく時を重ねることができます。
品質の良い、天然の藁床畳・・・、手入れ次第で100年を共に過ごすことができるのだそうです。

私たちが生活を営む空間。それはただ、寝食を行う場としてだけではなく、その空間そのものに手を加えたり、メンテナンスをすることによって、ますます暮らしやすく、愛着のあるもの。私たちを癒してくれる、包んでくれるものに変化していくのではないでしょうか。その住まい方、手入れの仕方は、日本の伝統の中にヒントが隠されているような気がします。
合理化を追い求め、置き去りにしてきたもの。忘れかけられている日本の文化と心。
昔のヒトはスゴイ。恥ずかしながら、幼稚な表現しか見当たりません。
数々の偽装の発覚で、世間は混乱しました。けれどそれは、ただただアクセルだけを踏み続け、黄色だけでなく、赤信号まで無視して走り続けて躍進してしまったことにも原因があるのかも知れません。

町家を残していくという業務の中で、ただ単なる一つの商品としてだけではない提案に、ますます力を入れていきたいと思う今日このごろです。


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1月7日 2008年は黒いティッシュペーパーで。

2008-01-07 | インテリア/建築
あけましておめでとうございます。
本日より平常営業致します。
2008年も、安全で安心できる住宅づくり、京都の伝統と文化を重んじた上で、より快適な住まいをご提案できるよう、日々勉強し、発信していきたいと思っています。
本年もよろしくお願い致します。

さて、2008年最初のテーマは「黒のティッシュペーパー」。2007年は「黒のトイレットペーパー」が話題になりましたが、今日は、“常識を超えた贅沢な日常をあなたに。”がキャッチフレーズの高級感溢れるティッシュペーパー『CHARCOSSUE Classic チャコッシュ クラシック』をご紹介したいと思います。

2008年2月1日(金)よりインターネットhttp://www.jp-ssol.co.jp/charcossue_classic.htmlにて限定販売。現在、先行予約受付中です。

1セット:ボックスティッシュ1個(予備ティッシュ1個付)
ティッシュ:400枚(200組)
税込販売価格:5,250円(送料別)
サイトによると、ティッシュとはそもそも、フランス語の「織物」が由来とされているのだとか。いつも使うものでありながら、エレガントな室内空間を演出するために生まれた最高級ティッシュ。

(ちょっと高価すぎるんじゃない?)と、思った方にはこちら。

大昭和ファースト株式会社が同時期に全国展開をスタートさせる黒のティッシュ。320枚(160組)で500円(税込)。
京都だとカナート洛北内の「ボザートプリュス」で昨年11月8日より先行発売中です。

今年もまだまだトレンドカラーとして存在感を増す『ブラック』。
色に限らず、知らず知らずの内に世相を反映する様々な流行。
アクセントカラーとして欠かせないビビッドなカラー、華やかな明るいカラー、伝統的な日本の色彩、甘くて柔らかいペールカラーなど、色の持つ力を大切に、明るい2008年を演出したいものです。


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