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インテリアコーディネーターのブログ。
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11月25日 空間を演出する照明手法

2006-11-25 | インテリア/建築
照明プランの手法については、資料が揃い次第・・・。というご紹介をしてから、早1ヶ月半が過ぎ・・・。頭の片隅には、早くUPさせなければ。と、決して忘れているわけではないものの、インテリア計画の中でも、「照明」と「色」を重要視している私は、かえっていい加減なお話をするわけにもいかず、相当悩みました。

私自身の考え方も、行ったり来たりの繰り返しで、私が行うプランニングも年々変化しているのも事実です。
しかし、おおよその基本ライン、基本のコンセプトはブレていないつもりですので、今日は、私目線のお話しをしたいと思います。

先日、何かのテレビ番組で「照明」について取り上げられていました。
その中で、その照明デザイナーの方は、今が「転換期」だというような話されていました。
確かに、ここのところ、「照明」(=光)に対する世間の考え方が大きく変わってきているように思います。
これまで、空間の背景としてしか存在しなかった照明が、脇役に、或いは主役にだってなり得る時代。その流れを受けて、ハチセのリ・ストック住宅も新築住宅も、照明の占めるコストが上昇してきました。

また、経済の成長とともに、明るくなった日本の住宅は、今や飽和状態となり、照明に明るさ以外の効果を求めるようになりました。

そこで、あちらこちらで、照明デザイナーに建築家、設計士、インテリアコーディネーターなど、「建築」に携わる、「建築」を生業としている人たちが、こぞって持論を声高に唱えるわけですが、その正否は微妙です。

私も、ある意味書きながら、自分に言い聞かせている部分があるのですが、専門分野を深く勉強し、海外のトレンドを学び、たくさんのものを見ることで、かえって見えなくなってしまうもの。ぼやけてしまうものがあります。
私たちが、絶対に履き違えてはならないこと。それは、利用者のライフスタイルを忘れて、設計者のデザインを主張する場にしてはいけないことです。

私が、専門学校の卒業を迎えた日、いろいろな先生からたくさんの言葉を頂きました。しかし、その中で特に印象的で、今でも心に残っている言葉は一つだけです。それは、「設計が、設計者の自己満足になってはならない。デザインを発表する場になってはならない。」というもの。
これは、日本にたくさん存在する有名建築家たちがつくった建物の例を挙げて、その利用者を無視して作られた部分を指摘した内容の後で、私たち卒業生にあててくれた言葉です。

「当たり前」のことだと思われるかも知れませんが、これがことのほか難しいのです。

だいぶ話が照明からズレてきましたが、ご自宅の照明計画を検討される際には、この「当たり前」のことを頭の片隅に置いて、検討してみてください。

今、世間で訴えられている照明手法は、少し偏りがあるように感じます。「1+1=2」というような図式は、建築の分野には当てはまりません。答えは1つではない上に、正解もありません。Aさんにとって正解でもBさんにとっては不正解なこともある。

有名な誰かが言っていた話を鵜呑みにするのではなく、「自分にとって心地良いと感じるもの」を基準に、選ばれることが、ご自身にとっての唯一の正解のかたちではないでしょうか。

例えば、こんな話です。
食事スペースは、蛍光灯ではなく、電球を使うことで、食べ物に立体感が出ると同時に色鮮やかに美味しそうに見えます。


蛍光灯の下では、上のように見える野菜が、


電球の下では、これ程鮮やかに見えます。
写真からも良くわかるように、照明一つで、同じものでも全く変化した色味を持って私たちの目に認識されることに、改めて気付かれると思います。

こういった面からも、私のようなコーディネーターたちは、電球を推し進める傾向があるのですが、ここで一旦、立ち止まらなければなりません。
私が、以前に投稿した内容をよ~く読んで見てください。電球「色」のススメとしていますが、「電球」のススメとはしていません。

確かに、可能であれば、(一部の例外を除き)電球でプランニングすることで、住宅として(=リラックススペースとして)心地よい空間を提案できると思います。特に食事スペース(=ダイニングテーブルの上部の照明)については、白熱球のペンダント灯が最適だと思います。

しかし、この効果だけを期待して、家中の明かりを電球でプランニングすると、どうなるでしょうか。

途端に電気代が上昇することに気付かれると思います。
例えば、照明メーカーのカタログに6~10帖用と記載のある90wの蛍光灯を毎日6時間点灯し、1ヶ月利用します。その電気代は、約356円。

同様に、6~10帖用と記載のある360wのシャンデリアを6時間点灯、1ヶ月間利用します。
その電気代は、約1,426円。

その差額は約1,000円。1部屋の照明を変えるだけで、年間12,000円もの差が出てしまうのです。

また、こんな例もあります。
照明は、光だけでなく陰も楽しむものです。

これも、コーディネーター間では常識のように考えられる手法の一つですが、決してどの住宅にも当てはまるものではありません。

ダウンライトや、ブラケット(=壁付け照明)を多様して、空間にコントラストを付ける。或いは、全体的な照度を押さえつつも必要な、部分にだけ明かりを溜め、光で空間を演出する手法。
完成した住宅は、もちろんめちゃくちゃ格好良くて、コーディネーターの腕の見せ所なわけですが、その住宅を利用する方が高齢の方だった場合はどうでしょうか。

若い人の2~3倍の照度が必要となるだけでなく、グレア(=不快な明るさ、まぶしさ感)を感じやすい高齢者にとっては、その空間がたちまち危険な暮らしにくい空間となってしまいます。やはり、そういった場合には、陰影を抑えたフラットで、悪く言うとのっぺりした照明計画が必要となってくるわけです。

このように、自分にとって必要な明かり、又は家族にとって必要な明かりとはどういったものなのか?そして、「飽きたから取り替える」ということが難しい住宅においては、現在だけでなく、数年後の家族のライフスタイルを想像して、計画することも必要でしょう。

それらを踏まえて、次に照明計画の基礎をご紹介します。
私たちが、物を認識する時、物の色を感じる時、必ず3つの関係が成立します。


まず、目がなければ物を認識することはできません。
光がなければ、物を認識することができません。色を感じることができません。
物が存在しなければ、光を感じることができません。
つまり、私たちは、光が物体に当ることによって、その明るさを感じることができるのです。
それを照明計画に当てはめると、光が、物に当るような配灯計画をすることで、私たちは明るさを感じることができます。

テーブルやローボードなどの対象の家具を狙うことも一つの方法ですし、オーソドックスには、壁面を明るくすることで、部屋全体を明るいと感じることができます。

具体的に、ダウンライトの配灯と照度の関係について以下に示します。


これは、約8帖の空間をダウンライトでプランニングした時の配灯の例です。
50wのダウンライトが5灯ないし4灯配置されています。
照度は、左から4,151ルクス / 3,721ルクス / 2,891ルクスです。

さて、どれが、一番明るく感じる空間になると思いますか?

実はこの場合、一番照度の高い 真中に5灯集められた一番左の空間が、最も暗いと感じてしまう計画なのです。これは、前述に延べた「壁を明るくする」ということができていないため、つまり、光が照らす対象を失ってしまっているために、私たちはその明るさを認識することができないのです。

正解は、真中の計画になりますが、右の4灯の計画が、左の計画に比べ、かなりの明るさ感を感じて頂けると思います。
本当は、この差を示す写真が用意できれば、ご理解が早いと思われますが、残念ながら、その資料を集めることができませんでした。これらは、照明メーカーのショールームへ足をお運び頂ければ、その差を体感できる様々な体験スペースが用意されています。照明計画の際には、ショールームを訪問されることも、イメージを助ける手段の1つだと思いますよ。