あの車両を訪ねて

全国の保存・放置車両を訪ねています。

国鉄48647、高千穂鉄道TR301、302/トンネルの駅

2019-01-06 | 宮崎県


前回に引き続き、高千穂線沿線の保存車をご紹介します。もっとも、今回の物件は、沿線…では無いのですが。。。



高千穂駅から車で更に10分程進んだ場所に、「トンネルの駅」と名付けられた施設が存在します。こちら、何の施設かと言うと、焼酎を製造している酒造会社の貯蓄庫を見学できると言うものなんですが、その貯蓄庫に使われているのがズバリ、高千穂線の「未成線」の跡地なんですね。



TR-302とトンネルを活用した貯蓄庫の入口。

実は高千穂線、高千穂より先へ延ばす計画が存在していました。これは高千穂からさらに熊本方に路線を伸ばし、高森線(現在の南阿蘇鉄道)高森駅までを繋ぐと言う計画で、間には4つの駅が設置される予定でした。
1973年に着工し、1977年の完成を目指して作られたこの路線でしたが、高森駅付近で掘削中だった高森トンネルにて異常出水が発生し、事業は中断。その影響で計画は宙に浮き、そのまま国鉄再建法(全国の赤字83線を特定地方交通線に指定し、国鉄としては廃止する等が定められた法律)が施行され、この路線の建設予算も凍結されました。その後、高千穂、高森両線が三セク化され、計画は完全に頓挫、幻の路線と成ったのです。



トンネルの駅に隣接する夢見路公園に転用されている、未成線の路盤(手前)と塞がれたトンネル(奥)。

その後、完成していた区間は所在していた自治体へと譲渡されました。その内、高千穂町内で完成していた葛原トンネルが神楽酒造㈱の貯蔵庫として使われており、トンネルより先の未成線跡を含めて「トンネルの駅」として焼酎の販売等を行っています。

さて、こちらのトンネルの駅及び隣接する夢見路公園では、3両の車両が保存されています。前置きが長くなりましたが、ここからはそれら3両のご紹介です。



まずは、国鉄8620形48647です。この48647は1921年に落成し、出水機関区に配属された後、1973年に人吉機関区で廃車となった車両であり、お召し列車を牽引した輝かしい過去を持つ車両でもあります。
現在はトンネルの駅に隣接している夢見路公園の未成線上で保存されています。高架橋の上に保存されている車両と言うのもなかなか珍しいものがありますね。

48647と向かい合う様に、高千穂鉄道TR-300形301、302が保存されています。



TR-300形は、開業時に観光客向けに導入したTR-200形よりも更に観光輸送に特化した車両として1991年に登場しました。新潟鐵工所製で、秋田内陸縦貫鉄道のAN-8900形をベースとした片運転台車です。
高千穂方からTR-301-TR-302が導入され、座席指定制の快速「たかちほ」に充当されました。もっとも、列車は普通列車用のTR-100形と2連を組んで運行された様です。

その後、2003年にTR-400形「トロッコ神楽」が運行を開始し、入れ替わる形でTR-300形は廃車となりました。廃車後は当地に移動し、保存されています。



車両は、先述した未成線の跡地とは若干ズレた位置に設置されています。2両で編成を組み、その内延岡方のTR-302は車内が休憩所として開放されています。



開放されているTR-302の車内。転換クロスシートを基本としていますが、中央にはサロンが設けられています。



現役当時には無かったであろう机が設置されており、その関係で転換クロスシートは固定されています。



全室構造となっている運転台も見ることができます。綺麗な状態を保っているのが嬉しいですね。ちなみに、出入り口となっている客用扉はセンサー感知式の自動ドアへ改造されており、勢いよく開閉する姿が印象的でした。

なお、TR-300形の塗装はここ1年の間に修繕・変更された様で、よく画像で見かける赤ベースのものじゃなくなっていたのは現地で見て初めて把握した次第です。何事も実際に足を運んでみないと分からないものですね。

九州横断鉄道としての夢を託されたものの、多くの困難の中で計画が潰えてしまった路線、高千穂線。そんな夢の痕跡を現代に伝えるこれらの車両に、是非会いに行ってみては。

〈物件データ〉
設置場所:宮崎県高千穂町 トンネルの駅内
公開時間:48647の外観は随時。TR-302形の外観は随時、車内は9時~18時(12月~2月は~17時半)

撮影データ:2018年12月16日14時半頃

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