あの車両を訪ねて

全国の保存・放置車両を訪ねています。

豊橋鉄道モハ14/道の駅したら

2021-05-30 | 愛知県
2020年11月末、1両の古豪電車がそれまでの保存場所を離れ新天地へと移動しました。「豊橋鉄道モハ14」、豊橋鉄道田口線で活躍していた歴史ある電車です。
同車が保存された「道の駅したら」がようやく今月開駅となりましたので、先日早速見学へ行ってきました。その様子をお伝えします。



モハ14が保存されたのは、5月13日の満を持して開業した道の駅したらの中です。「田口線電車展示場」と銘打たれた専用の展示場が作られ、接している国道257号からもよく見えます。



綺麗に整備されていますが、製造はなんと1925年!あと4年で製造100周年という訳です。約100年前の電車が今も綺麗に保存されている、素晴らしい事だと思いますね。



展示場にはプラットホームも設置され、そこから車両に乗り込むことが出来ます。
車内も非常に綺麗に保たれており、シートが取り外された側には田口線の様々な資料が展示されていました。



ガラス越しにはなりますが、運転台も見学できます。速度計が無い古典的な造りですね。

ここでモハ14と田口線の来歴について少し触れておきます。
豊橋鉄道田口線は、1925年、飯田線の本長篠駅(当時は鳳来寺鉄道鳳来寺口駅)から設楽町田口方面へと線路を伸ばした路線です。開業時は田口鉄道という会社が所有し、沿線の森林資源の輸送を主としていました。その為、途中駅や終点の三河田口駅では森林鉄道と接続し、一部の駅は木材を置く広大なスペースを有していました。
モハ10形は元々田口鉄道が所有していた車両では無く、豊川鉄道(現在の飯田線豊橋~大海間の前進)及び鳳来寺鉄道(現在の大海~三河川合間)が電化された際に導入した車両でした。その後、両鉄道の国鉄買収の際に同時に国鉄へと籍を移します。田口鉄道は買収の対象となりませんでしたが、所有していたモハ30形電車が飯田線運行用に借り出され、その代わりに田口鉄道の運行用に回ってきたのがモハ10形でした。
その後、国鉄から廃車になった際に田口鉄道が2両購入し、田口鉄道モハ14・15となります。1956年の豊橋鉄道への合併時し、その後モ14・15へと番号を変え、1968年の路線廃止まで活躍しました。
モハ14は一部の部品の復元などを行った上設楽町に譲渡され、田峯駅跡での保管を経て1977年から奥三河郷土館へと保存されました。郷土館で大切にされていた同車でしたが、道の駅したらへ郷土館が移転新築される事から展示が休止となり、2020年11月末に現在地に移転。整備を行った後、この度のお披露目となりました。



右後ろに見える建物が新築された奥三河郷土館です。中も見てみましたが、田口線の資料なども展示されていましたので、訪れた際はこちらも合わせて見学する事をオススメします。



縦画像で1枚。ちなみに、道の駅したらは途中駅の清崎駅跡地から目と鼻の先にある他、そもそも隣接している国道257号は田口線の廃線跡を転用した道路であり、非常に縁の深い土地に保存される事となりました。

非常に美しい状態で田口線の歴史を伝えているモハ14。廃線跡巡りも兼ねて、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

〈物件データ〉
設置場所:愛知県設楽町 道の駅したら(奥三河郷土館)
公開時間:9時-17時

撮影データ:2021年5月24日11時頃


小田急ロマンスカー各形式等/ロマンスカーミュージアム

2021-05-07 | 神奈川県
4月19日、関東に新たな鉄道テーマパークが誕生しました。
小田急電鉄が、看板特急である「ロマンスカー」の歴代形式を保存・展示する為に建設した、「ロマンスカーミュージアム」です。

タイミングを合わせて訪問することが叶いましたので、画像多めでご紹介したいと思います。



小田急電鉄では、初代ロマンスカー3000形「SE」から引退時期が一番最近である7000形「LSE」までの各ロマンスカーを保存していました。
しかし、複々線完成に伴うダイヤ改正に向けて車両数を増加させる上で、従来各形式を保存していた喜多見検車区が手狭になって来たことから、2017年に保存車両の整理を行いました。
そして、この動きの中でそれらの保存車両の一部を展示する施設が建設される事になり、保存してきた歴代ロマンスカー(と1形電車)を保存するべく完成したのがこちらの施設です。

館内には実に11両の車両が展示され、その名の通り歴代ロマンスカーが勢揃いしています。

入館しエスカレーターを降りると、早速こんなの車両が。



こちらは、小田原急行鉄道(現在の小田急電鉄の前身)が開業時に用意した1形電車の内、熊本電鉄に譲渡され1981年まで活躍していたモハ301を買い戻し、モハ10として復元したものです。
前回の記事で紹介した日立電鉄モハ1006(←モハ18)も元は同じ形式であり、かたや綺麗に屋内保存、かたや解体と、それぞれ引退から時が経った今年が転機となりました。

さて、歩を進めると、そこにはファン垂涎な光景が広がっていました。



歴代ロマンスカーがズラリ。

「ロマンスカーギャラリー」へと一歩足を踏み入れると、精悍な顔つきの歴代ロマンスカー達が非常に美しい状態で展示されていました。



早速個々の車両達を撮影。

最も手前に展示されているのは、2018年10月まで本線で活躍していた、7000形「LSE」です。ミュージアム内では最も最近まで活躍していた形式で、展示されているデハ7003は最後まで残った7003Fの新宿方先頭車でした。さよならツアーに抜擢された姿は記憶に新しいところです。



続いて隣に並ぶのは、3100形「NSE」。1996年に引退し、6両編成で残されていた3221Fの内両先頭車であるデハ3221、デハ3231、及び中間車で喫茶室付きであるデハ3223が無事保存されました。こちらは新宿方先頭車であったデハ3221で、ミュージアムに収蔵される為の整備が行われた際に愛称表示器が原型に復元されました。



反対側の先頭車であるデハ3231はさよなら運転の装飾のまま展示されています。この姿で何度もファミ鉄展に展示されましたので、見た事がある方も多いのでは。

3100形は車内に入れますので、忘れずに記録してきました。



特徴的な赤いモケット、展望車へと続く座席は、全鉄道ファンの憧れですね。

一番左に展示されているのは、不朽の名車、3000形「SE」です。



国鉄線上での狭軌最高速度(当時)達成、第一回ブルーリボン賞の受賞等、数々の偉業を成し遂げてきた、ロマンスカーの歴史を語る上で欠かすことのできない形式、それが3000形です。
小田急では輝かしい功績を持つこの形式を永久保存する事を決定し、3021Fの内新宿方先頭車であるデハ3021の先頭部を原型に復元し、5両編成のまま海老名検車区内の専用庫にて長年保存していました。
ロマンスカーミュージアム建設に際し、編成の内両先頭車であるデハ3021、デハ3025、及び中間電動車であるデハ3022がお色直しを受け、当館へと搬入されました。



反対側の先頭車は後年SSE車として改造されたままの姿となっており、編成内で2つの前面形状を楽しむことができます。



NSE車より暗めの色合いとなっているSE(画像はSSE車)の車内。天井が非常に低く、普通に立っても頭が当たりそうになったのが印象的でした。

さて、これら3形式が展示されているゾーンを抜けると、後年登場したロマンスカーが保存されているゾーンに入ります。



こちらは、1987年にLSE車の後継形式として、小田急電鉄開業60周年の記念に製造された10000形「HiSE」です。
HiSE車は2012年まで活躍していましたので、こちらも現役時をご存知の方も多いのではないでしょうか。長野電鉄に譲渡された編成は現在も特急「ゆけむり」として活躍していますので、現役の車両に実際に乗車することも可能です。
3両で保存されていた内、新宿方先頭車であるデハ10001のみが選定され、当館に落ち着きました。今まで紹介した形式は一部だけ立ち入り可能だった車内も、HiSE車では全体に立ち入ることができます。



カラフルな座席が並ぶ展望席にも実際に座ることができ、子供達に大人気の様でした。

HiSE車から見て窓側には、展示されているロマンスカーでは唯一ボギー車であるこちらの形式が展示されています。



20000形「RSE」。先ほど紹介したSSE車が最末期に運用されていた、JR御殿場線直通特急「あさぎり」の後継形式であり、HiSE車と同じく2012年まで活躍していました。
20001Fは3両で保存されていましたが、ミュージアムへの展示に際し新宿方先頭車であるデハ20001と中間ダブルデッカー車であるサハ20151のみが残され、保存されました。
なお、RSE車は2編成いた内の1編成(20002F)が富士急行電鉄へ譲渡され、「フジサン特急」として現在も活躍しています。



デハ20001の車内が公開されていますので、こちらも記録してきました。



運転台付近。



車番プレート及びブルーリボン賞受賞を表す記念プレート。

実を言うと、RSE車の周りだけは何故か人が多く、人を写さずに撮影するのに苦労しました…待った甲斐があり、どの車両も大方満足の行く記録が出来ましたが。。。

ミュージアム内にはもう一つ目玉として「ジオラマパーク」がありますので、そちらも見学してきました。



箱根湯本駅を突き抜けて出発していく(笑)、50000形「VSE」。

起点である新宿駅から箱根湯本駅、更にその先の箱根登山鉄道線区間までを再現したこちらのジオラマでは、ミュージアムで展示されている歴代ロマンスカーに現役のロマンスカー、通勤型車両に江ノ電新500形、箱根登山鉄道の各形式等が走り回っており、非常に見応え十分でした。なお、線路自体はエンドレスとなっている様で、新宿駅と箱根湯本駅はそれぞれ“その先”がある様でした。

そのままミュージアムショップでお土産を購入し、今回の訪問は終了となりました。

平日と言うこともあってか、そこまで多くの方が来ていた訳ではなかったので、各車をゆったりと記録することができました。
現在は事前予約制となっていますが、土日のチケットは完売している事が多いようなので、週末は多くの家族連れとファンが訪れそうですね。

最寄駅は海老名と、若干都心からは離れた所ではありますが、これは行く価値が大いに有ると感じました。こちらの記事を見て気になった方は、是非とも足を運んでみては。

〈物件データ〉
設置場所:神奈川県海老名市 ロマンスカーミュージアム内
開館時間:10時~18時

撮影データ:2021年5月7日15時半頃