日本が世界に誇る電気機器メーカー、日立製作所。その中でも、鉄道関連事業と昇降機(エレベーターやエスカレーター等)を開発・製造しているのが、ひたちなか市にある水戸事業所です。
そんな水戸事業所の中には、日立製作所で製造された3両の電気機関車が保存されています。今回は、日立に縁の深いこれらの車両をご紹介します。
日立製作所水戸事業所は、当然ながら企業敷地となっており、普段は一般人が立ち入れる所ではありません。しかしながら、毎年6月の第一土曜日に「さつきまつり」と称した一般公開イベントが行われており、私も今年のさつきまつりに参加した上で撮影を行いました。
勝田駅前からシャトルバスに乗り込み、専用線の廃線跡を横目に揺られること10分程。広大な事業所の北東にある門からバスで乗り入れると、機関車たちは分かりやすい所に設置されていました。
まず手前に見えてくるのは、赤い車体が印象的なED78 1。交流専用機として1968年から製造された同形式は、新製された14両(901号機も含む)全てが日立製作所製です。
2015年までは利府駅近くに有る新幹線総合車両センター内に保存(放置の様なものですが)されていましたが、その後当地に移設、修復が行われて綺麗な姿を取り戻しました。
2016年は「あけぼの」、2017年は「かもしか」のHMを掲げて公開された同車、今年は「つがる」のHMを掲げての展示となりました。
ED78 1の後ろには、不遇な運命を辿った形式、EF200形の試作機、901号機が保存されています。
EF200形は、1990年に製造が開始された直流電気機関車です。JR貨物が民営化後に初めて開発・製造した形式であり、東海道・山陽本線の輸送力増強に大きく貢献しました。
ですが、その有り余るパワーは次第に過剰性能として認識される様になり、主要部品の確保も難しくなって来たことから2008年頃から廃車となる車両が出始め、現在は全車が定期運用から外れています。
そんな悲運なハイパワーロコ、EF200形ですが、901号機は2016年に製造元である当事業所へと移送され、旧塗装に戻された上で保存されています。この色、本当に格好良いですね。
事業所内に安住の地を得たこれら2両のカマたち。末永い保存を期待したいですね。
敷地内にはこれら2両とは別の場所に、もう1両、古典機が保存されています。
ED15 1。さすがに古すぎて、私自身も知識がないので受け売り程度に。
ED15形は、国鉄の前身である鉄道省が1924年に登場させた形式です。とは言っても、製造を担当した日立製作所は鉄道省からの注文が無い状態で製造を開始したとか。
何が凄いかと言えば、この形式は日本で初めて民間が設計から製造までを行ったものであること。鉄道省自体はED40形を大宮工場で製造していましたが(これは国産初の電気機関車)、民間が全て行ったのは当形式が初めてだったそうです。日本の鉄道史に残る偉業を、今からおよそ90年も前に成し遂げたメーカー、それが日立製作所なのです。
そんな記念すべき1号機は、水戸事業所の緑多き敷地内の一角に鎮座しています。今までも、そしてこれからも、日本のトップメーカーを見守ってくれることでしょう。
〈物件データ〉
設置場所:茨城県ひたちなか市 日立製作所水戸事業所内
公開時間:毎年6月第一土曜日(公開内容は要確認)
撮影データ:2016年6月2日10時半頃