あの車両を訪ねて

全国の保存・放置車両を訪ねています。

上田交通クハ5251/上田電鉄下之郷車庫

2019-06-10 | 長野県


久々の更新となってしまい申し訳ありません。

今回は、長野県上田市、真田幸村に縁のある土地で大切に保存されている車両をご紹介します。



北陸新幹線も停車する上田市の玄関口、上田駅。近代的な橋上駅舎の一角にあるのが、上田電鉄別所線上田駅の改札口です。
駅自体も高架上にある上、入ってくる車両はVVVFインバータ制御の元東急1000系と言う事で、なかなかに近代化された雰囲気を感じる別所線。この路線に乗って8つ目の駅が、別所線の中枢となっている下之郷駅です。

同駅には車庫が併設されているのですが、ここに保存されているのが、今回ご紹介するクハ5251と言う訳です。



クハ5251は、見ての通り東急5200系を譲受した形式です。1959年に日本初のステンレス製車体を持つ形式として東急車輛製造(当時)にて竣工し、1986年まで東急線上で活躍しました。その後、両先頭車であるデハ5201-デハ5202が5000系と共に上田交通(当時)に譲渡され、デハ5202を電装解除の上クハ5251とし、2連で運用されました。

1993年に同じく東急から7200系を譲受したため、5000・5200系は全車が運用を離脱。デハ5201(とデハ5001)が保存のため東急に返却されましたが、クハ5251は倉庫代用として下之郷に残りました。
その後は初のステンレス製車両としての価値を認められ、撮影会等が開催される様に。2006年には松本電鉄から譲り受けたパンタグラフが再設置され、東急時代の姿を取り戻しました(車番はそのまま)。

現在も年に数回イベントで公開され、その輝かしい勇姿を見ることができます。今回は2019年6月1日に開催されたイベントに参加してきたので、先ほどから載せている画像は全て同イベントで撮影したものになります。



今回のイベントでは史上初となる車庫内での撮影会も開催されました。クハ5251は下り方を向いているため、車庫の入口側から覗くとこの通り妻面側が顔を見せていました。これはこれで貴重ですね。



庫内での撮影会では、東急東横線時代を再現した装飾が施されました。急行灯も点灯した姿は本当に格好良い…灯火類が点灯すると、現役かと間違えそうになります。

2代後の1000系と肩を並べる大先輩5200系。総合車両製作所横浜事業所にいる相方共々、末永くその姿を見せてもらいたいものですね。

〈物件データ〉
設置場所:長野県上田市 上田電鉄下之郷車庫
公開時間:イベント時以外は原則非公開

撮影データ:2019年6月1日10時半~12時半頃





長野電鉄デハニ201、モハ604/安曇野ちひろ美術館

2017-12-03 | 長野県


北アルプスが車窓から一望できる、JR大糸線。起点である松本駅からこの路線沿いに北上していくと、安曇野と呼ばれる地域に到着します。そんな空気の美味しい山麓地帯の一角に広大な敷地を誇る公園があることは、そこまで知られてはいないかもしれません。「安曇野ちひろ公園」、安曇野ちひろ美術館の周辺約53,500㎡に広がるこの公園の一角に、今回ご紹介する車両たちがいます。



公園の一角に、「トットちゃん広場」なる広場が2016年7月に開設されました。その名の通り、黒柳徹子さんの自伝的小説である「窓ぎわのトットちゃん」の世界観を再現した広場となっており、その中心に設置されたのが、長野電鉄で活躍していたデハニ201、モハ604の2両です。



これらの2両は、同作品に出てくる「電車の教室」(黒柳さんが幼少期に在籍していた学校に実際にあったと言う鉄道車両を用いた教室)を再現するために設置され、デハニ201の車内は図書スペースに、そしてモハ604の車内は当時の教室を再現する形でそれぞれ改装されています。
こちらの車両はデハニ201と呼ばれ、1926年に長野電鉄の前身である長野電気鉄道の手によって製造されました。幾度の改造と番号変更を経ながら1980年に同形の車両としては最後まで活躍し、廃車後は小布施駅構内に設置された「ながでん電車の広場」で保存されました。その後2012年に信濃川田駅跡に移動され、更に2014年には公園内の設置場所へ移動。周辺の整備を完成を待ち、2016年7月に晴れてお披露目となりました。



もう1両のモハ604は、元々デハ350形として落成した車両です。長野電気鉄道と河東鉄道が合併し長野電鉄となってから初めて製造された記念すべき車両であり、最終的にモハ600形へと改番されて1980年まで活躍しました。
引退後、モハ604は他の車両と共に上田交通へと譲渡されます。同社で制御車化改造を行われ、クハ271として竣工し、1986年の昇圧まで活躍しました。その後長野電鉄へ返還され、車体表記をモハ604へと復元、デハニ201と共にながでん電車の広場にて保存されていました。その後の流れはデハニ201と同じで、車内は教室をイメージしたものへと変更されています。



モハ604の車内。

訪問当日は休日だったためか、多くの人が見学に訪れていました。公園は非常に綺麗に整備されており、今後もそんな素敵な環境の中で丁寧に維持されていくことが期待できそうですね。

〈物件データ〉
設置場所:長野県松川村 安曇野ちひろ公園内
公開時間:9時~17時

撮影データ:2016年8月28日12時半頃



JR貨物EF81形EF81 10、ヨ8000形ヨ8591/白馬ミニトレインパーク

2017-08-09 | 長野県


長野県の北部に位置し、スキーリゾートとして有名な白馬村。この村の別荘地の一角に、とてつもなく“濃い”空間があるのをご存知でしょうか?
その名も「白馬ミニトレインパーク」。園内には5インチと7.5インチのデュアルゲージを採用したミニ鉄道の路線やGゲージ、HOゲージ、Nゲージ、さらにはプラレールと言った様々な鉄道模型、玩具のレイアウトが設置されています。
そんな鉄道一色の同園でも一際存在感を発揮しているのが、実物の鉄道車両…EF81 10とヨ8591の保存車両です。



まずはEF81 10から。と言っても、車体は2エンド側の1/3ほどにカットされています。
塗装が表している通り、元々は富山機関区で活躍していた同車。東日本大震災の緊急燃料輸送での活躍を最後に廃車となり、陸送や保存車両の修復・販売等を手がける北陸ロジスティックスを経由して当地へと搬入されました。2012年の伏木ヤードまつりでは残された1エンド側の車体が販売されたこともあり、その片割れの行方を案じた方もいたのではないでしょうか?
同園では敷地内の最も目立つ所に設置され、訪れる方を驚かせています。また入園券を購入、又は併設されているコテージへと宿泊すれば車内にも立ち入ることが出来ます。



切断面は屋上機器も含めて丁寧に処理されていました。また、特に国鉄型は保存時に塗装を原色へと戻されてしまうことが多い中、こちらの車両は白線を巻いた更新色が維持されており、オーナーの方のこだわりを感じました。



EF81 10の後ろに直角に置かれているのは、車掌車ヨ8591です。車掌車の保存車は比較的多いですが、こちらの車両は非常に状態が良く、オーナーさん曰く「JR貨物からイベント展示のために貸してもらえないかとの打診があった」とのこと。
こちらも車内に立ち入ることができ、今となっては貴重な車掌車を隅々まで観察することができました。

先にも触れた通り、こちらの施設はコテージも併設されており、私も友人と共に泊まって来ました。大浴場やオーナーさん自慢の朝食、そして貸切で遊べるHOゲージの巨大レイアウトに自ら運転できる園内のミニ鉄道…と、鉄道好きには夢の様な空間が広がっていました。鉄道ファンだったら一度は行って損はないと思いますので、是非訪れてみてはいかがでしょうか。

〈物件情報〉
設置場所:長野県北安曇郡白馬村 白馬ミニトレインパーク内
公開時間:5月~10月末までの10時~15時半

撮影データ:2016年8月28日10時半頃




上田交通モハ5250形モハ5251/さくら国際高等学校

2017-05-20 | 長野県


北陸新幹線の停車駅である上田を起点として別所温泉までを結ぶ小路線、上田電鉄別所線。
現在は東急から譲り受けたステンレス車がVVVF音を響かせる近代的な路線ですが、約30年前には好ましいデザインの旧型電車が多く走っていました。今回は、その内の一つであるモハ5250形の保存車両をご紹介します。



長野県は上田市、別所線の線路からも近い所にある「さくら国際高等学校」。廃校となった小学校の敷地を利用して2005年に開校した同校では、2011年にモハ5250形のトップナンバーであるモハ5251を譲受し、校庭にて静態保存しています。
搬入後に生徒や教職員、ボランティアの手によって修復作業が行われ、非常に良いコンディションでの保存となっています。



外部との仕切りが無いためか、訪問中も飼い犬と共に校庭を歩く人の姿がちらほら。ですが、見学の際は学校に連絡するのが無難かと思います。

〈物件データ〉
設置場所:長野県上田市 さくら国際高等学校敷地内
公開時間:不明

撮影データ:2016年8月27日14時半頃